ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

契約更新希望の有無を確認していますか

2016-05-23 14:39:03 | 労務情報

 雇用保険の被保険者資格を喪失した人(離職した人)のうち、倒産や解雇等により離職を余儀なくされた人は「特定受給資格者」と呼ばれ、いわゆる“自己都合”で離職した人よりも失業給付受給の条件が緩和されている。

 ところで、混同されやすいのだが、この「特定受給資格者」とは別に、「特定理由離職者」という区分もある。
 「特定理由離職者」とは、「正当な理由のある自己都合により離職した者」と「有期雇用契約の更新を希望したにもかかわらず更新されずに契約満了となり離職した者」とを総称したもの。あくまで“自己都合”による離職には違いないが、当面は「特定受給資格者」と同様の扱いをするものとし、失業給付の所定給付日数面で手厚くしている。(この扱いがまた、混同されやすさに拍車を掛けているのだが…)

 この特定理由離職者になるケースのうち、前者(例えば「配偶者の転勤により通勤困難になったための離職」等)は、従来から、給付制限(失業給付が受けられない期間;最大3か月間)の対象としない措置が講じられてきたものであって、離職者には有利に働くものの、会社が特段の影響を受ける話ではない。

 さて、問題は後者だ。とりわけ「更新を希望したにもかかわらず」の部分は、人事担当者の実務に大きく影響する。と言うのも、これは、有期雇用契約者の契約満了に際しては、「契約更新を希望するか否か」を尋ねなければならないことを意味しているからだ。
 もっとも、希望を聞けば良いだけであって、会社が更新に同意するかどうかは別問題であるし、契約書に「次回更新はしない」と明記してある場合にまで改めて希望を聞かなければならないわけではない。

 契約更新について本人の希望を確認していない(あるいは確認したことが無い)という会社は、そんなことが思わぬトラブルの火種ともなりかねないので、雇用管理の在りかたを考え直してみておくべきだろう。


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歩合給に基づく時間外手当の計算方法

2016-05-13 10:59:40 | 労務情報

 法定労働時間を超える労働には割増賃金を支払わなければならない(労働基準法第37条)ことは今さら言うまでもないだろうが、歩合給制の場合、割増賃金の算定基礎たる「通常の労働時間の賃金」の算出にあたっては、月給制の場合とは計算方法が異なるので、気を付けなければならない。

 具体的には、基本給や各種手当といった月額一定の賃金なら「1か月あたりの所定労働時間」で割って単価を求める(労働基準法施行規則第19条第1項第4号)のだが、歩合給については「賃金計算期間中の総労働時間」で割って算出する(同条同項第6号)。
 5月のように休みが多い期間は“総労働時間”は少なくなるため、単価は高くなりがちだが、法令上そういう計算ルールになっているので、仕方が無いだろう。

 これは、賃金の一部に歩合給を含む場合も考え方は同じだ。その場合は、“定額部分”と“歩合給部分”とをそれぞれ別々に算出して後で合算することになる(同条同項第7号)。うっかり失念しやすい点でもあるので、要注意だ。

 なお、「成績に応じて賞与を支給する」、すなわち「歩合給相当部分を賞与として支給する」というシステムであれば、割増賃金の算定基礎に含めなくて良い。
 しかし、これでは、インセンティブとしての歩合給の効果は薄れてしまうので、「時間外手当の削減」という目先のメリットだけのために安易に導入すべき方策ではないだろう。


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限定正社員は解雇しやすいのか?

2016-05-03 11:59:29 | 労務情報

 今年(平成28年)年頭、安部首相が施政方針演説において「多様な働き方が可能な社会への変革が必要」と表明して話題になった。この発言の背景には、平成24年3月に厚生労働省の主宰する有識者懇談会が提唱し、その後も毎年のように厚生労働白書に登場している「多様な正社員」の存在がある。

 「多様な正社員」は、用語的には従来型の「いわゆる正社員」も含まれるはずであるが、一般的には「限定正社員」(「勤務地」や「勤務時間」や「職種」等を限定して雇用される者)を指すことが多い。
 この「限定正社員」は、非正規雇用者を正規雇用化するに際しての受け皿として活用でき、逆に、いわゆる正社員にとっては育児や家族の介護等による離職を避けるための選択肢として機能することも期待されている。

 経営者の中には、「限定正社員」は整理解雇の場面において要件が緩やか(解雇しやすい)と考えている向きも見られるが、必ずしもそれは正しいと言えない。
 確かに、「整理解雇の4要素 」と呼ばれる判例法理の1つ「被解雇者選定の合理性」においては、一般論として「正規雇用者の解雇よりも先に非正規雇用者を解雇すべし」とされているが、そもそも限定正社員は「非正規雇用」ではなく「正規雇用」であり、これに該当しない。
 また、裁判例を見ても、当該限定された「勤務地」や「勤務時間」や「職種」が無くなる場合であっても、解雇回避努力義務を尽くさない安易な解雇は認められていない。その点、いわゆる正社員と何ら変わるものではないのだ。
 ただ、特に「勤務地」や「勤務時間」については労働者側の都合で限定を付しているケースが多いため、(労働者本人の側が勤務地や勤務時間の変更に対応できず)結果として整理解雇が肯定された例も少なくない。しかし、これも、会社から本人に対して勤務地や勤務時間を変更しての雇用継続を打診する等の解雇回避努力義務を果たしたことが前提だ。

 さて、これが整理解雇ではなく、「職種限定正社員」の「能力不足による解雇」の話になると、少し様相が変わってくる。
 職種限定正社員の場合は、採用の経緯や成績評価の妥当性等を鑑みたうえで、会社の期待に応えられなかった者の解雇が許されると解されている。予定されていた職務によっては「職務の変更や降格等の解雇回避措置すら要しない」と判示した裁判例(東京高裁S63.2.22、札幌高裁H11.7.9等)もあるほどだ。
 無論、解雇は「客観的に合理的な理由を有し、社会通念上相当であること」(労働契約法第16条)が大前提であることを忘れてならないが。

 そう考えれば、「限定正社員なら解雇しやすい」というのは、ごく限られたケースの、言わば“例外”と認識しておかなければならないだろう。


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