消費税率が上がってからまもなく6か月、運賃改定前に駆け込みで通勤定期券を購入した人も、新運賃での定期券に切り替える時期となった。これに伴い、通勤手当を見直した会社も多いことだろう。ちなみに、通勤手当の支給額は、従業員が会社に届け出た通勤経路で計算するのが一般的だが、より安価な手段・経路がある場合に、会社がそれを指定することは差し支えないものとされる。
ところで、労災保険法においては、「通勤」は「就業に関し、住居と就業の場所との間の移動を、合理的な経路及び方法により行うこと」(同法第7条第2項より)とされている。これに則れば、会社が(通勤手当計算のために)認めた通勤経路とは異なる経路上の事故であっても「通勤災害」として補償されることがあることは、承知しておきたい。
中でも注意を要するのは、育児や介護に関するものだ。
まず、育児に関するものでは、「他に子供を監護する者がいない共稼労働者が託児所、親せき宅等に子どもをあずけるためにとる経路などは、そのような立場にある労働者であれば、当然、就業のためにとらざるを得ない経路であるので、合理的な経路となる」という行政通達(S48.11.22基発644号、H3.2.1基発75号、H18.3.31基発0331042号)が出されている。つまり、例えば、従業員が保育所へ立ち寄ってから出勤する道中で事故に遭ったとしたら、仮にそれが会社と反対方向に向かっていたとしても、通勤災害となるということだ。
介護に関しては少々複雑になる。
要介護者の居宅に寝泊まりしているケースでは、その居宅と勤務地との往復は「通勤」としてその道中の事故は通勤災害とされる。その一方で、寝泊まりするわけでないが介護のために通勤経路を逸脱するのは、「日常生活上必要な行為」(同法施行規則第8条第5号)とされ、本来の通勤経路に戻った所からが、通勤災害の対象となる。
なお、これらの用務のために会社へ届け出たものと異なる通勤手段(例えば自動車や自転車など)を用いていた場合も、合理的と言える範囲内での利用方法であれば、通勤災害として認められる。無論、酒酔い運転のような行為は、“合理的な通勤方法”になりえないが。
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