ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

「年度更新申告書計算支援ツール」の上手な活用を

2016-06-23 16:39:08 | 労務情報

 厚生労働省のサイトに「年度更新申告書計算支援ツール」(H27確定/H28概算用)が掲載されている。
 厚生労働省 > 労働保険関係各種様式

 このツールは、労働保険の年度更新に際して、『算定基礎賃金集計表』のページに「労働者数」や「賃金額」等の必要事項を入力していけば、集計表はもちろんのこと、「申告書イメージ」まで出来上がるというもの。
 特に今回の年度更新では、二元事業(建設業等)における消費税の扱いがややこしいので、工事実績を記入すれば自動的に計算してくれるのは便利だし、間違いが無いので安心できる。

 しかし、難点もいくつかあるので、指摘しておきたい。
  1.出来上がった申告書イメージはそれをプリントアウトしても申告書にならない。労働局から郵送された『申告書』(複写紙)に書き写さなければならないのだ。
  2.給与計算ソフトを利用していれば『算定基礎賃金集計表』は作成できてしまうので、人数や金額を各月ごとに再度入力(もしくはエクスポート)するのが面倒。「申告書イメージ」のページにいきなり入力できると便利なのだが。
  3.「保険料率」や「納付済保険料」は、利用者が自分で手入力するようになっているので、ここで間違える可能性が高い。「労働保険番号」の入力欄があるのだからオンライン照会するシステムは構築できそうだが、それをやるにはパスワードの設定も必要だし、そこまで作り込むメリット(利用者からの要望)が無いのだろう。
  4.「excel97-2003」では機能の大幅な損失や再現性の低下が見られるらしい。ただ掛け算と割り算をさせるだけの単純なツールなのだから、できるだけ多くの人に使ってもらえるようにすれば良かったのに、勿体ない。
  etc.etc.…

 と、不満を述べてはみたものの、概ね満足度は高い。会社の人事労務を担当されている方は、上記のことを承知したうえで、使ってみてはどうだろうか。
 ちなみに、今年の年度更新受付は「7月11日(曜日の関係)まで」となっている。


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団体交渉には誰が出席するべきか

2016-06-13 11:28:36 | 労務情報

 「団体交渉」と聞いて、「わが社には労働組合が無いから関係ない」と考える経営者も少なくないが、今や労働委員会が扱う集団的労使紛争のうち7割がたは合同労組(※)が関与しているので、企業内組合の有無に関わらず、また、企業規模の大小にも関わらず、すべての企業において、団体交渉を申し入れられる可能性があるとの認識を持っておく必要がある。

 (※)「合同労組」とは、企業の枠を超えて地域単位で労働者を組織する労働組合を言う。「一般労組」・「地域ユニオン」などと呼ばれることもある。

 さて、では、団体交渉にあたって、会社側からは誰を出席させるのが良いだろうか。

 まず、「社長」の出席について考えることとする。
 社長が直接交渉に応じれば「話が早い」ので、労働組合側からは社長の出席を求めてくる例が多い。しかし、即断できない(あるいは即断すべきでない)事案もあるし、うっかり口を滑らせたことで言質を取られる危険性もあるので、できれば最終責任者は(少なくとも初回の交渉には)出席しない方が無難と言える。
 とは言っても、社長が団体交渉に出席することは、会社側にとってデメリットばかりではない。その場で結論を出して問題を後送りしなければ余計な時間や労力を費やさずに済み、また、トップが腹を割って話し合う姿勢を示すことで丸く収まるケースもあるだろう。ただ、その場合は、感情にまかせた不用意な発言の無いよう、くれぐれも気を付けなければならない。

 では、「人事部長」や「弁護士」が出席するのはどうか。
 法律上は、使用人であれ外部の者であれ、交渉権限を委任するのは自由である。また、「言って良いこと」と「言ってはいけないこと」の分別が付く専門家に任せておけば会社としては安心できるといった側面がある。
 ただし、単に会社側の回答を伝えるだけに終始したり、すべての案件を持ち帰って経営者の判断を仰ぐこととしたりするのでは、「権限を委任されている」とは言いがたく、「団交拒否」(不当労働行為の一つ)とも取られかねないので、それはそれで要注意だ。

 最後に、「社労士」(社会保険労務士)の出席について考えてみたい。
 法改正により社労士が労働紛争に関与することも可能となったが、依然として「法律行為を代理すること」は弁護士の独占業務である(弁護士法第72条)ので、社労士が単独で団体交渉に臨むことは許されないと解される。社労士が団体交渉の場に出席するのは、あくまで「経営者の補佐という立場で“同席”する」という認識を持っておかなければならない。
 なお、まれに社労士の同席を拒む労働組合もあるが、それは図らずも「経営者の法的無知に乗じて過剰な要求をしている」と認めたに等しい。“まとも”な労働組合であれば、むしろ労働者の正当な権利を理解する専門家として社労士の同席を歓迎するはずである。
 「社労士の団交臨席にどう反応するか」によって、労働組合の“程度”が量れそうだ(とは言い過ぎだろうか)。


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被扶養者資格の再確認(検認)における注意点

2016-06-03 07:19:08 | 労務情報

 協会けんぽ(旧・政府管掌健保)では、今年も被扶養者の再確認(検認)を実施するとのことで、そろそろ事業所あてに調書が届くころだ。

 ところで、社会保険における「扶養」と税務上の「扶養」とは、収入要件等の違いもあるが、それ以上に、性格面で大きく異なる点がある。
 それは、社会保険(中でも健康保険制度)における「被扶養者」は、保険料を全く負担せずに給付を受けられるということだ。また、厚生年金保険加入者の被扶養配偶者は、国民年金制度の「第3号被保険者」として、これも国民年金保険料を負担することなく、老齢その他の基礎年金を受ける権利を有することになる。
 このため、社会保険では被扶養者の認定に関して杜撰な事をすると制度自体を揺るがしかねない事態にもなりうるので、健康保険協会や健康保険組合等は、資格取得時や被扶養者が増えた時に確認するほか、その後も定期的に、被扶養者の再確認(検認)を実施することになっている。

 協会けんぽはあまりうるさくないが、多くの健康保険組合では、ここ2年ほど、特に「仕送り額」に重点を置いて調査しているとのことだ。
 被扶養者とすることができるのは、基本的には「3親等内の親族」とされているが、そのうち、配偶者・子・孫・弟・妹・直系尊属(父母・祖父母など)については、同居していなくても認められる。ただし、別居している者には、その者の収入を上回る金額を被保険者から仕送りしていなければならない。
 しかし、現実には、被扶養者が仕送り額を上回る収入を得ていたり、ひどいケースは全く仕送りをしていなかったり、という事例が目立つようになってきたので、それを厳しくチェックするようになったようだ。

 仕送り額の調査に際しては、銀行の出入金明細や現金書留の控等、客観的に確認できる資料があればベストなのだが、『仕送り状況申立書』(組合によって名称が異なる)をもってこれに代えることを可能としている組合もある。ただし、その場合でも、次回検認時には客観的資料の提出を求めることとしているのが一般的だ。

 健康保険組合でこういう動きになっていることを考えれば、現在はこれほどまで厳しい調査を実施していない健康保険協会(協会けんぽ)の加入者も、別居している被扶養者があるなら、被扶養者名義の銀行口座へ毎月一定額を振り込むようにしておくのが良いだろう。
 そうするのが、一見面倒そうに思えても、結果的に手間の掛からない方法と言え、また、間違いも起こりにくいので、ぜひ推奨したい。


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