現行制度においては、同種の労働者の「4分の3」以上を労働しているものは、社会保険(健康保険・介護保険・厚生年金保険)の強制適用となる。
これは、昭和55年6月6日に「厚生省(当時)保険局保険課長」・「社会保険庁(当時)医療保険部健康保険課長」・「社会保険庁(当時)年金保険部厚生年金保険課長」三者連名で発せられた「内翰(ないかん)」に示された基準だ。本来「内翰」は単なる部局内の指導文書にすぎないはずだが、社会保険審査会における審査でもこの基準で判断されており、事実上の「行政通達」と化していた。
今般、健康保険法・厚生年金保険法等の改正により、この「4分の3ルール」が法文中に明記され、平成28年10月1日から厳格に適用されることとされた。
なお、同じタイミングで、従業員501人以上の企業における「週20時間以上、月収8万8千円以上」で社会保険適用となることも法定化されたが、その件に関する考察は別稿に譲ることとする。
さて、この「4分の3ルール」は、いわゆる「パート」だけでなく「アルバイト」に対しても適用される。すなわち、概ね週30時間以上働いている者(一部例外あり)は、社会保険への加入義務があるのだ。学生も例外ではない。
そもそも「アルバイト」という法令上の用語は無いのだが、日本語で「アルバイト」と言うと、本業(別の職業に就いていたり学生だったり)を持っている者の「副業」というニュアンスを含むものと解されるのが一般的だ。而して、週30時間というのは、「副業」と主張するには多すぎる労働時間ということになる。
これに違反して強制適用なのに資格取得しなかった事業主に対しては、罰則も用意されている。健康保険法第208条には「6月以下の懲役または50万円以下の罰金」、厚生年金保険法第102条には「6月以下の懲役または20万円以下の罰金」、と一応定められている。もっとも、現実には、罰則適用の前に行政指導がなされるので、通常は、罰金や懲役まで処せられるのは極めて特殊(悪質)なケースに限られると言っても良いだろう。
ちなみに、“雇用保険”の取扱いに関しては、昼間部の学生は被保険者とならないことになっている。もしかしたら、これと混同して社会保険でも学生を加入させないと誤解している人がいるかも知れないが、雇用保険制度では「学業に専念する者は離職しても失業給付が受けられない」ことの裏返しでそう定めているので、むしろ、雇用保険の方が例外と考えるべきだろう。
蛇足だが、“労災保険”では、学生だろうがパートだろうが“すべての労働者”が対象となる。
制度を正しく理解しておきたい。
※この記事はお役に立ちましたでしょうか。
よろしかったら「人気ブログランキング」への投票をお願いいたします。
(クリックしていただくと、当ブログにポイントが入り、ランキングページが開きます。)
↓