労働基準法違反の事案は、勤務する労働者の通報によって摘発されるケースがほとんどであるが、まれに、労働基準監督署の巡回指導で発覚することもある。労働者側が違法と認識していなければ民事上の争いにはなりにくいとは言え、事実、労働基準法に違反している状態であるなら、労働基準監督官の指導には従うしかない。
今回は、そういったケースの一つを取り上げてみたい。
労働基準法第35条違反を問われた会社があった。この会社は飲食店であり、就業規則で「所定労働時間は1日あたり6時間30分、休日は毎週水曜日(週1回)」と定めていたが、火曜日の店じまいが遅くなると、しばしば日付が変わってから退勤させていたことについて、労働基準監督署の巡回指導において、労働基準法違反を指摘された。
労働基準法に言う「休日」は「午前零時から午後十二時まで」の暦日で見ることとされている(昭和23.4.5基発535号)ため、深夜残業が終了した水曜日は「休日」とは認められないとの由であった。
このケースでは、会社は代休を与えるか、もしくは(店の混雑が事前に分かっていたなら)休日を振り替えておけば問題なかった。あるいは、休日前の残業は日付が変わる前に終わらせるよう、労使とも意識しておくべきだったのかも知れない。
無論、適切な三六協定(時間外労働・休日労働に関する労使協定)を締結していれば良い話だが、協定内容のうち「時間外労働(=残業)」に関してはシビアに検討しても、「休日労働」の欄は適当に書いてしまったり、あるいは無記入のままであったりすることもありがちなので、協定締結の時点でも細心の注意が必要だ。
ちなみに、労働基準法第35条第2項では「4週間を通じて4日以上の休日」でも可とされているが、これを適用するには、予め就業規則等において起算日を明らかにしておかなければならない(労働基準法施行規則第12条の2第2項)ので、この事例のような突発的な残業や休日労働の折に使える規定ではない。
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