ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

社内資格制度・社内検定制度の導入について

2024-04-23 08:59:05 | 労務情報

 業務の標準化・可視化(みえる化)のためにマニュアルを整備している会社は多いが、その歩をさらに進めて、「社内資格制度」や「社内検定制度」(後述する厚生労働大臣による認定制度を踏まえて、本稿では「社内検定制度」の用語で統一することとする)の導入を、(制度未導入の会社は)検討してみてはいかがだろうか。

 社内検定制度を設けることには、次のようなメリットがあるとされる。
  1.知識・技能・ノウハウの蓄積や横展開に効果がある
  2.従業員の能力開発が促進される
  3.目標設定に活用すること等によりモチベーションアップにつながる
  4.有資格者を優遇することで能力の高い従業員の定着が図れる
  5.“会社が求める人材像”を示せる
 そして、業務の標準化・可視化や新人教育に用いることで生産性の向上に寄与することは、そもそもマニュアル整備の目的であったが、それが一層高まることが期待できる。

 さらには、策定した社内検定制度について、厚生労働大臣の認定を受けることも視野に入れておくのもよいだろう。
 これは、「社内検定認定制度」と称され、職業能力開発促進法施行規則第71条の2第1項に基づき、「事業主等がその雇用する労働者等の技能と地位の向上に資することを目的に労働者が有する職業に必要な知識・技能についてその程度を自ら検定する事業のうち、一定の基準に適合し技能振興上奨励すべきもの」を、厚生労働大臣が認定するものだ。
 この認定を受けると、厚生労働省のホームページに公示され、会社は所定のロゴマークを用いてその旨を社内外に公表することができる。それによって、上述諸点に加えて次のようなメリットも生じる。
  6.社内の技能評価への権威づけができる
  7.他社との差別化が図れ、顧客からの評価が上がる
  8.広報効果・企業ブランドが向上する

 ちなみに、社内検定認定制度は昭和60年に創設され(旧労働省職業能力開発局長通達昭和59年12月24日能発第112号)、令和6年1月23日現在、45事業主(114業種)が認定されている。

 もっとも、会社が社内検定制度を設けるのは「人材への投資」のためであって、厚生労働大臣の認定は“副産物”であるはずだ。 その点、本末転倒の無いように気を付けたい。


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「マミートラック」は本来ネガティブな用語ではない

2024-04-13 12:47:53 | 労務情報

 育児と仕事とを両立させることは、個々の労働者はもとより社会全体にとっても重要であって、企業もそれに協力するべきであることは誰しも理解できているだろう。
 しかし、それが理解できている会社(経営者・人事担当者)であっても、ともすれば、会社が両立のための人事制度を用意して出産(または妊娠)した女性従業員をその路線に載せればそれで満足してしまいがちだ。

 ところで、「マミートラック」という言葉がある。
 アメリカのNPOが1988年に子育て中の女性のため労働時間や業務量に配慮した人事制度(育児休業やワークシェアリング等)の整備を提唱し、これを取り上げたジャーナリストが「マミートラック(mommy track)」と称したのが発端とされている。
 すなわち、マミートラックとは、「キャリアトラック(career track)」あるいは「ファストトラック(fast track)」と呼ばれるものとは異なる“別路線”を意味し、言わば「単線型人事から複線型人事への移行」であって、元来は歓迎されるべきものであった。

 ところが、今日の日本において「マミートラック」は、ネガティブな文脈で使われることが多くなっている。 育児と仕事とを両立させるための人事制度を選択すると、「責任ある職務に就けない」・「仕事にやりがいが持てなくなる」・「給与が下がる」といったデメリットがあり、それら弊害のことを「マミートラック」と呼ぶ風潮がある。 中には「マミートラックが生じてしまう」という誤用すら見受けられる。
 まして、会社が出産(または妊娠)した女性従業員に対し当然のように両立制度の利用を勧める(マミートラックに載せようとする)のは、男女雇用機会均等法第11条の3や育児介護休業法第25条に違反する行為(一般的には「マタニティハラスメント」と呼ぶのが通じやすいかもしれない)となる。 これでは、せっかく導入した両立制度が台無しだ。

 本来のマミートラックには、「自身への負担が減る」だけでなく「同僚への負担も減る」ことから「罪悪感なく職場にいられる」というメリットがある。 会社はそれをきちんと説明して、あくまで本人の意思でどうするかを選択させるべきだ。 さらに言えば、女性従業員だけでなく、配偶者の出産を控えた男性従業員にも同様に説明して希望を尋ねるべきだろう。

 多様な働き方が求められる今こそ、「マミートラック」について、用語本来の意味とそのメリット・デメリットを正しく理解し、労働者それぞれの生活に合わせて両立制度が選択できるよう、経営者の意識改革を進めたい。


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労働保険料算定の基礎となる賃金は“締め日ベース”

2024-04-03 08:59:57 | 労務情報

 労働保険(労災保険と雇用保険の総称)の保険料は、保険年度(4月1日から3月31日)が終了したら年度内に支払われた賃金総額にそれぞれの料率を乗じて算出し、前年度に納付された概算保険料との差額を精算するとともに新年度の概算保険料を納付する。
 この手続きを「年度更新」と呼び、原則として7月10日までに都道府県労働局(直接的な窓口は金融機関や労働基準監督署等)に申告書を提出しなければならない。 ただし、労働保険事務組合に事務委託している会社は、労働保険料を事務組合が代行徴収する関係で、事務組合が指定した期日までに『算定基礎賃金等の報告』を提出することになる。

 ところで、労働保険料算出の基礎となる「賃金」は、期間中に支払いが確定した賃金を用いることとされている。
 例えば、給与が「末日締め翌月15日払い」の会社では、4月15日に支払われた給与は3月分、すなわち前年度分に含める。 もし「基本給のみ当月に支払い、残業代は翌月に支払う」といったケースであれば、4月15日に支払われた給与のうち、基本給は4月分(=新年度分)、残業代は3月分(=前年度分)として計算しなければならない。
 これは、賞与に関しても同様で、3月中に支払い額が確定した賞与は前年度分に含めることになる。
 ちなみに、令和4年度は上半期と下半期とで雇用保険料率が変わったが、令和5年度(今回の年度更新)は期中での料率変更は無い。

 以上のとおり、労働保険の年度更新において賃金は“締め日ベース”で計算する。
 この点、社会保険料の定時決定・随時改定では賃金額を“支払い日ベース”で『算定基礎届』・『月額変更届』に記入するのとは異なるので、誤解やミスの無いようにしたい。


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