「パートタイム・有期雇用労働法」第8条には「非正規労働者の待遇について不合理と認められる相違を設けてはならない」と定められ(「同一労働同一賃金」を求める法規定の一つ)、これが2020年4月(中小事業者は2021年4月)から適用されるのは周知の通りだ。
これに先立ち、厚生労働省は、2018年12月『同一労働同一賃金ガイドライン』により、正社員にのみ支給される各種手当についてその待遇差が問題となるか否か、具体例を挙げて解説している。 ところが、この指針では、「住宅手当」等いくつかの手当については、具体例が示されず、「労使で議論していくことが望まれる」とされた。 言ってみれば、各企業がそれぞれの業態や労使慣行等を踏まえて考えなければならない“宿題”を負わされた格好だ。
そこで今回は、「住宅手当」に的を絞って、その存廃を含めた対応策を検討してみたい。
なお、この考え方は、他の手当(「家族手当」等)の存廃に関しても準用できるので、参考にしてもらえれば幸いである。
【選択肢A】 廃止する
そもそも住宅手当は従業員間に不公平感を与えやすい制度であるので、これを機に、廃止してしまうのも一案だ。
とは言え、これは明らかな「労働条件の不利益変更」にあたるので、労働契約法に則った手順で条件変更しなければならず、また、不支給となる者には当面「調整手当」等の名目で一定額を支給するなど、激変緩和措置を講じる必要もあるだろう。
【選択肢B】 非正規労働者にも支給する
住宅手当に年齢や出勤日数などの支給要件を設けているなら、これらの要件に合致する非正規労働者には支給しなければならない(高松高判R1.7.8)。
支給要件を設けていない、いわゆる「第2基本給」的な意味合いなら、なおさらである。
もちろん、支給対象が拡大するので、必然的にコストアップとなる。
【選択肢C】 正社員にのみ支給する(従来通り)
住宅手当が正社員(転居を伴う配転が予定されている)に対して住宅費用を補助する趣旨で支給されるものであるなら、非正規労働者には支給しない、という運用が可能な場合もある(最二判H30.6.1「ハマキョウレックス事件」)。
ただ、こうした趣旨であっても、転居を伴う配転が予定されていない社員にも支給しているならその前提が崩れることになるし、他の労働条件や背景事情等が異なれば裁判所の判断も異なるであろう点は承知しておかなければならない。
非正規労働者への手当支給を見直す視点は2面ある。
1つは「手当とは何か(支給目的や支給基準等)」、もう1つは「非正規労働者とは何か(雇用形態や業務内容等)」だ。
まずこれらを明確化する作業から着手したい。 それを進めるうちに、「会社は(労務の提供以外の)何に対して賃金を支払うのか」が整理でき、手当の存廃を含めた在り方も自ずと見えてこよう。
逆に、これらが明確になっていないなら、会社にはリスクしか無いので、整備を急ぎたい。
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