ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

健康情報の取り扱いに関する社内体制の整備は進んでいますか

2019-01-23 09:59:40 | 労務情報

 働き方改革の一環として改正された労働安全衛生法第104条第3項に基づき、厚生労働省から「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」が公表されている。(以下、本稿では、「労働者の心身の状態に関する情報」を「健康情報」と言い換える)

 この改正法第104条には、事業者は、健康情報を労働者の健康確保に必要な範囲内で収集し、その目的の範囲内で保管・使用しなければならず(第1項)、健康情報を適正に管理するために必要な措置を講じなければならない(第2項)と定められている。
 これを受けて、各企業は、改正法施行日の平成31年4月1日までに、社内体制を整備しておくことが求められている。
 冒頭に紹介した『指針』は、その方向性を示したものと言える。

 さて、『指針』の内容は、健康情報のほとんどが個人情報保護法のいう「要配慮個人情報」に該当する機微な情報であることから、各企業が『健康情報取扱規程』を策定し、取り扱いを明確化することが必要であるとし、取扱規程の内容・策定方法・運用等にまで踏み込んでいる。
 また、労働者が健康情報の収集・使用等に同意しないことや健康情報の内容を理由として不利益に取り扱うこと(解雇、雇い止め、退職勧奨、配置転換、職位変更等)を禁じてもいる。

 そして、具体的な健康情報の取り扱いについては、以下のような3分類に整理している。

A:法令に基づき事業者が直接取り扱えるもの(本人の同意は不要)
  その目的の達成に必要な範囲を踏まえて取り扱う
  例)健康診断の受診・未受診の情報、面接指導の申し出の有無等

B:本人の同意は不要だが取扱規程により適正に運用することが適当であるもの
  事業場の状況に応じて、情報を取り扱う者を制限する、情報を加工する等の措置を定め、また、本人に対し丁寧な説明を行う等、納得性を高める措置を講じるのが望ましい。
  例)健康診断の結果(法定項目)、再検査の結果(法定項目と同一のもの)等

C:予め本人の同意を得ることが必要であるもの
  事業場ごとの取扱規程に則った対応を講じる必要がある
  例)健康診断(法定外の項目)・保健指導・精密検査・がん検診の結果、医師の意見書等

 この『指針』は、“おせっかい”と言えるほどに懇切丁寧に書かれている。改正法の施行まで期日が迫っていることを考えれば、企業経営者としては、さしあたり指針に従って社内体制を整備しておき、運用面で支障があれば臨機応変に対応していくこととしても良いのではないだろうか。


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短時間労働者の社会保険加入、“契約と実態との乖離”の判断基準は?

2019-01-13 09:59:17 | 労務情報

 健康保険法・厚生年金保険法が改正され、いわゆる「社会保険の適用拡大」が実施されて久しい。
 それまで、短時間労働者の社会保険適用に関しては、労働時間・労働日数が通常の就労者の概ね4分の3以上であるかどうかを1つの基準として判断されていた(昭和55年6月6日付けの厚生省内翰(ないかん)による)。それが、改正法(平成28年10月1日施行)では、この「4分の3基準」が法律に明記され、加えて、被保険者総数が常時500人を超える事業所における「週所定労働時間が20時間以上」その他の要件を満たした短時間労働者についても適用対象とすることとなった(健康保険法第3条第1項第9号、厚生年金保険法第12条第5号)。

 さて、この「4分の3」および「週20時間」は、“所定”労働時間数や“所定”労働日数、すなわちパートタイマー向け就業規則や個別の労働契約書等で定められた契約上の労働時間数や労働日数により判断するのを基本とする。
 しかし、恒常的に所定外労働があって実際の労働時間数・労働日数と乖離している場合は、次のように取り扱うこととされている。
  ①所定労働時間又は所定労働日数は4分の3基準を満たさないものの‥、実際の労働時間又は労働日数が直近2月において4分の3基準を満たしている場合で、今後も同様の状態が続くことが見込まれるときは、当該所定労働時間又は当該所定労働日数は4分の3基準を満たしているものとして取り扱うこととする。
  ②所定労働時間は週20時間未満であるものの‥、実際の労働時間が直近2月において週20時間以上である場合で、今後も同様の状態が続くことが見込まれるときは、当該所定労働時間は週20時間以上であることとして取り扱うこととする。
(厚生労働省通達:平成28年5月13日 保保発0513第1号 年管管発0513第1号、平成29年3月17日 保保発0317第2号 年管管発0317第5号により一部改正)
  分かりやすく言い換えれば、4分の3以上または週20時間以上であるのが“2か月連続”までなら社会保険の被保険者とならないが、“3か月連続”になるなら、3か月目の初日に被保険者資格を取得する、ということだ。

 日本年金機構の総合調査(健康保険法第204条第1項第19号・厚生年金保険法第100条の4第1項第36号により厚生労働大臣の権限を委任されている)では、このような観点で従業員の出退勤記録をチェックされる。そして、社会保険料の納付(徴収)の時効が2年間であるので、昨年10月以降は、調査対象となるすべての期間において新基準が適用されていることも、承知しておきたい。


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『やさしい労務管理の手引き』の一読を

2019-01-03 19:00:50 | 労務情報

 厚生労働省は、経営者向けに労働基準法を中心とする関連法令を平易な表現でまとめた『やさしい労務管理の手引き』を作成し、厚労省サイトに公開している。
 これは、就職を控えた学生や若者向けに作成したハンドブック『知って役立つ労働法~働くときに必要な基礎知識~』を、企業側の立場で再編集したものだ。

 タイトルでは「労務管理」と称しているが、内容を見ると、労働法の概略から始まり、労働契約や労働条件の話、退職・解雇について等、むしろ「"労働契約"に関する基礎知識」と言った方が近い。
 また、もともと学生向けに書かれたものであるためか、人事労務担当者にとっては常識的な事項がほとんどであり、少し物足りなさを感じるかも知れない。

 しかし、人を雇ううえで知っておくべき労働法関連の基本事項が一通り網羅されているので、“基礎知識の復習”として目を通しておくのも無駄にはなるまい。全部読んでも、25ページほどなので、それほど負担になる分量でもない。
 また、経営者も(特に雇われた経験の無い経営者は)、意図せずに法令違反を犯していることがあるので、最低限の法知識を頭に入れておく意味で、ぜひ一読しておかれたい。

 【厚生労働省】『やさしい労務管理の手引き』(PDF:3.92MB)
 https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/dl/roumukanri.pdf


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