女性従業員が妊娠した場合、その担当業務を変更すべきかどうか思案することがあるかも知れない。
この場合、まず考えなければならないのは、法令により配置転換が義務付けられているものがあるということだ。
例えば、女性労働基準規則第2条は、妊娠出産に有害であるものとして「ボイラーの取扱い」など24項目を指定し、妊婦の就業を禁じている。 これらの業務に就いている者については、妊娠が判明した時点で他の業務に変更させなければならない。
また、妊婦本人が求めてきた場合は、他の軽易な業務へ転換しなければならない(労働基準法第66条第3項)。
この場合、本人が希望する業務に就かせることを原則とするが、新たに軽易な業務を創設してまで与える義務を課したものではないとされている。
さて、法令の定めも本人の請求も無い場合に、会社が妊婦の配置転換を命じられるかというと、それは注意を要する。
と言うのも、特にそれが本人の希望しない配置転換であった場合には「妊娠したことを理由とする不利益取扱い」(男女雇用機会均等法第9条第3項に違反)となり、不当と断じられるリスクがあるからだ。
そういったトラブルを予防するためには、会社が本心から本人を気遣い特段の他意が無いのなら、やはり、配転発令前に本人に打診してみるべきであろう。
その手間を惜しまなければ、違法な配置転換をしなくて済み、また、その折に、就労時間や育児休業等に関する本人の希望も聞いておけるので要員計画の参考にもできる。
さらには、そういう会社の姿勢は、他の面においても、従業員からの信頼を得ることに寄与するに違いない。
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わが国における男性の育児休業取得率は、年々増えてきたとは言え、令和2年度で12.65%(厚生労働省「令和2年度雇用均等基本調査」(令和3年7月30日公表)より)と、未だ伸び悩んでいる。
さて、そう聞いたところで、これの何が問題なのか、疑問に思う人は、男性ばかりでなく女性にも少なくないようだ。
では、そのような疑問を持つ人に問いたい。
なぜ日本の男性は育児休業を取らないのか。
その理由としては、「人が足りなくなる」、「出世に響く」、「上司が認めない」等が挙げられる。
しかし、考えてみれば、これらは、女性が育児休業を取るに際しての障害にもなるはずだ。 それなのに、男性に限って育児休業を取れない理由となるのだとしたら、その根底に“男女差別”が存在していると言わざるを得まい。
育児に係る負担は、本来、夫婦で分かち合うべきものだ。 さらに言えば、次世代を担う子どもらを育てるのは“社会全体”に課せられた使命とすら言えよう。
それが、現状は、その負担が“妻”に偏っていることが問題なのだ。
これを解決することで、女性の出産意欲や継続就業意欲が、ひいては社会全体の活性化が期待できる。 国は、男性の育児休業取得率向上を、その“第一歩”と位置づけているのだ。
男性の育児休業取得を増やすためには、まずは男女差別の意識を払拭することが肝要だ。
特に年配の経営者は、(内心までは簡単に変えられないとしても)少なくとも公の場でそれを口に出すのは控えなければならない。
社内の意識を変えるために、厚生労働省の「イクメン企業アワード」「イクボスアワード」へのエントリーを検討するのも一策だろう。
また、そもそも現行の育児休業について、きちんと理解できていない向きもあるようだ。
「育児休業は必要とする労働者が申し出るだけで取れるもので、会社(上司)が認めるものではない」という基本事項から始まり、「雇用保険制度から育児休業給付金(一定の支給要件あり)を受け取れる」、「月末時点で育児休業中であればその月の社会保険料が免除となる」など、育児休業取得促進に資する制度が既に設けられている。
加えて、令和4年10月1日からは、「産後パパ育休(出生時育児休業)」も新設される。
まずは、これらの制度をその趣旨とともに正しく理解し、活用するところから始めたい。
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