労働組合(※)から、「懲戒委員会を設置し、その構成メンバーに組合選出委員を加えよ」と求められることがある。事実そのような運用をしている会社もある(特に歴史の長い会社に多い)が、すべての会社がこれを受け容れなければならないのだろうか。
※ 昨今は、企業の枠を超えて地域単位で労働者を組織する「合同労組」(「一般労組」・「地域ユニオン」等とも呼ばれる)が関与するケースが多くなっている。
さて、こうした要求に対する回答としては、「どちらにも応じられない」でまったく問題ない。
どちらも法令で義務づけられているものでなく、(それまでに当該労働組合と交わした労働協約に含まれていない事項なら)会社側が同意できなければ断ることができるものだからだ。
とは言うものの、要求の後段(構成メンバーの件)はともかく、懲戒委員会を設置すること自体は、会社にとってデメリットばかりでないことも理解しておきたい。
懲戒委員会を設置することの主なメリットとしては次のような点が挙げられる。
(1) 複数の目で事実を確認できる(再発防止にも寄与)
(2) 被懲戒者に弁明の機会を与えられる
(3) 結果として、懲戒処分の合理性が高まる
これらについて、「委員会を招集するための時間を要する」「定められたとおりに開催しないと『手続き面での瑕疵がある』とされる」などのデメリットを踏まえたうえでも、「迅速さを犠牲にしてでも丁寧な議論が必要」と考えられるならば、懲戒委員会を設置する意味は大いにあると言える。
ところで、「懲戒事案が生じる都度に懲戒委員会を招集するからデメリットが目立つのであって、定期的に開催することとしておけばメリットのほうが断然勝る」と考える向きもあるにはある。
しかし、懲戒事案がそう頻繁に生じるとは考えにくいし、それを前提にした組織を作るべきでもなかろう。
もしその論に倣うとしたら、“懲戒”だけでなく“表彰”も議題とする(むしろ“表彰”を中心的な議題とする)「賞罰委員会」として設置することを検討したい。 そうすれば、従業員や労働組合の納得を得られやすくもなるからだ。
もっとも、懲戒委員会にせよ、賞罰委員会にせよ、(目に見える)価値を(短期的には)産み出さず、それどころか、運用していくための費用と労力を費やすのは明らかだ。
結論として、それらを割くのが難しい会社は、検討するまでもなく「設置不要」と即答してよいだろう。
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