厚生労働省では、裁量労働制の対象拡大に向けての検討を進めている。
具体的には、裁量労働制には「専門業務型」(労働基準法第38条の3)と「企画業務型」(同法第38条の4)があるところ、後者に関し、その適用対象職種を、
①課題解決型提案営業(例えば「顧客ニーズに応じた新商品の開発・販売」等)、
②事業運営に関する事項の実施管理とその実施状況の検証結果に基づく企画立案等を一体的に行う業務(例えば「全社レベルの品質管理計画の立案」等)
にも拡大しようとするものだ。
この案は、実は、平成30年の働き方改革関連法案に含まれていたのだが、検討に用いた調査データが不適切なものであったことから、この部分のみ法案から削除されたという経緯がある。
厚生労働省は、これを“真摯に反省”し、改めて適切な手法で実施した統計調査のデータを今般の検討会の資料として提示している。
その中には「企画業務型裁量労働制適用労働者の週平均労働日数(4.92日)は非適用労働者(4.97日)よりも少ない」という興味深いデータはあるものの、安倍首相(当時)の「裁量労働の方が一般労働者よりも労働時間が短いというデータもある」という国会答弁を裏付けることはできず、「実労働時間は専門業務型・企画業務型いずれの適用労働者も非適用労働者よりも長い」という(予想通りの)数字となった。
【参照】厚生労働省「裁量労働制実態調査の結果について(概要)」P.10
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https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/000809289.pdf
一方で、労働基準法第41条の2(平成30年7月改正、平成31年4月施行)に定める「高度プロフェッショナル制度」は、当時“鳴り物入り”で登場したが、導入企業はわずか20社(注)しかない。
事実、高プロは使いづらいので、より簡易に導入できる裁量労働制が整備されるのを待ち望んでいる経営者も多いことだろう。
【注】厚生労働省「高度プロフェッショナル制度に関する報告の状況(令和3年3月末時点)」
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https://www.mhlw.go.jp/content/000621159.pdf
今後、この検討会では、労働時間が長くなる労働者に対する健康管理についてが議論の中心になり、結論として、かつての法案が復活することになりそうだ。
また、「法令で規定した業務に限定するべきでない」といった類いの意見も、労使双方に一定数ある(同資料P.47-56)ので、これを踏まえた議論も注視していきたい。
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