ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

長期雇用契約のメリット・デメリット

2022-05-23 14:59:24 | 労務情報

 雇用期間をあらかじめ定めて雇用する場合は、一部の職種・年齢層を除き「3年間」を超える契約は無効となるが、最長の3年間とすることが必ずしも望ましいとは限らないので注意を要する。

 長期の雇用を約束することは、「労働者の技能習熟」、「帰属意識の醸成」、「職場内の人間関係構築」等、さまざまな面でメリットは多い。
 また、1年ずつの契約を更新して3年を経過した場合には次の契約を締結しない(いわゆる「雇止め」)のに「解雇」と同等の事由が必要となるのに対し、初めから3年契約であれば、その年限が近づいた時に次の契約をどうするかを考えれば良いので、「労働力の調整弁」としては中長期的には融通性が高いと言える…‥

※この続きは、『実務に即した人事トラブル防止の秘訣集』でお読みください。

  

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役員が労働者としての身分も有する場合

2022-05-13 15:59:05 | 労務情報

 役員(取締役、執行役、監査役、会計参与、理事、監事等)として登記されている一方で、労働者としての身分も有する者を、「使用人兼務役員」と呼ぶ。
 具体例を挙げると「取締役営業部長」・「取締役工場長」等がこれに該当するが、労働基準法第9条は「労働者」を「事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」と定義しているので、必ずしも「部長」等の役職に就いていることを要しない。 極論を言えば、仮にパートタイマーであったとしても、また、会社法や税法では使用人を兼ねることができないとされる「監査役」「委員会設置会社の取締役」「同族会社のみなし役員」等であったとしても、指揮命令を受ける立場にあり、その対価としての賃金が支払われている場合は、その範囲において「労働者」とされ、労働基準法をはじめ、最低賃金法・労災保険法・男女雇用機会均等法等の各種労働法令の適用を受けることになる。
 ただし、代表権・業務執行権を有する役員(代表取締役、専務・常務等のいわゆる役付き役員等)は、基本的には労働者性を有しないものとして取り扱われる。

 一方、雇用保険においては、雇用関係があると認められ、賃金額が役員報酬額を上回る場合に、管轄ハローワークに『兼務役員雇用実態証明書』を提出して被保険者資格を取得する。 つまり、労働基準法や労災保険法では労働者とされていても、雇用保険の被保険者になるとは限らないのだ(このことは役員を兼務しない一般のパートタイマー等であっても同じ)。
 ちなみに、一部ウェブサイトには「要件に当てはまれば雇用保険に加入することが“できる”」との表現も見られるが、「要件に当てはまる者は雇用保険の被保険者と“なる”」(強制適用)のが正しく、被保険者資格取得手続きをするかしないかを会社や本人が任意的に選択できるわけではない。 その点は誤解のないようにしておきたい。
 そして、労災保険・雇用保険の対象となる以上、労働保険料の算定基礎には、無論、使用人兼務役員の賃金部分も含めなければならない。

 ところで、使用人兼務役員が就業中に負傷した場合の手続きに関しては、特に注意を要する。
 例えば、取締役営業部長である者が取引先との商談中(労働者としての業務遂行中)に事故に遭った場合は労災保険から補償給付を受けられるが、株主総会への出席中(取締役としての業務遂行中)に事故に遭った場合は労災保険の対象とならないばかりか、健康保険の給付も受けられない。
 使用人兼務役員を置いている会社では、こういったことを踏まえたうえで、必要に応じて民間保険を活用する等の策を講じておかなければならないだろう。


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裁量労働制の対象拡大へ向けて検討中

2022-05-03 16:59:08 | 労務情報

 厚生労働省では、裁量労働制の対象拡大に向けての検討を進めている。
 具体的には、裁量労働制には「専門業務型」(労働基準法第38条の3)と「企画業務型」(同法第38条の4)があるところ、後者に関し、その適用対象職種を、
  ①課題解決型提案営業(例えば「顧客ニーズに応じた新商品の開発・販売」等)、
  ②事業運営に関する事項の実施管理とその実施状況の検証結果に基づく企画立案等を一体的に行う業務(例えば「全社レベルの品質管理計画の立案」等)
にも拡大しようとするものだ。

 この案は、実は、平成30年の働き方改革関連法案に含まれていたのだが、検討に用いた調査データが不適切なものであったことから、この部分のみ法案から削除されたという経緯がある。
 厚生労働省は、これを“真摯に反省”し、改めて適切な手法で実施した統計調査のデータを今般の検討会の資料として提示している。
 その中には「企画業務型裁量労働制適用労働者の週平均労働日数(4.92日)は非適用労働者(4.97日)よりも少ない」という興味深いデータはあるものの、安倍首相(当時)の「裁量労働の方が一般労働者よりも労働時間が短いというデータもある」という国会答弁を裏付けることはできず、「実労働時間は専門業務型・企画業務型いずれの適用労働者も非適用労働者よりも長い」という(予想通りの)数字となった。
【参照】厚生労働省「裁量労働制実態調査の結果について(概要)」P.10
 → https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/000809289.pdf

 一方で、労働基準法第41条の2(平成30年7月改正、平成31年4月施行)に定める「高度プロフェッショナル制度」は、当時“鳴り物入り”で登場したが、導入企業はわずか20社(注)しかない。
 事実、高プロは使いづらいので、より簡易に導入できる裁量労働制が整備されるのを待ち望んでいる経営者も多いことだろう。
【注】厚生労働省「高度プロフェッショナル制度に関する報告の状況(令和3年3月末時点)」
 → https://www.mhlw.go.jp/content/000621159.pdf

 今後、この検討会では、労働時間が長くなる労働者に対する健康管理についてが議論の中心になり、結論として、かつての法案が復活することになりそうだ。
 また、「法令で規定した業務に限定するべきでない」といった類いの意見も、労使双方に一定数ある(同資料P.47-56)ので、これを踏まえた議論も注視していきたい。


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