ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

『外国人雇用状況届出書』は出していますか?

2017-09-23 22:29:02 | 労務情報

 平成19年10月に雇用対策法が改正されて、まもなく丸10年が経過しようとしている。
 具体的には、外国人を雇用する際には国籍・在留資格等を確認することが事業主に義務付けられ、それを管轄ハローワークに届け出ることになったものだ。

 手続きとしては、新たに外国人を雇用した事業所は、その外国人が雇用保険被保険者となる場合には『資格取得届』によって、雇用保険被保険者とならない場合は『外国人雇用状況届出書』によって、外国人の雇用状況をすべて管轄ハローワークに届け出なければならない。届出期限は、『資格取得届』は翌月10日まで(一般の資格取得届と同じ)、『外国人雇用状況届出書』は翌月末日まで、となっている。
 これは、すべての事業者に義務付けられている(届け出を怠ると「30万円以下の罰金」が科されることとなっている)。特に、当該外国人が雇用保険の被保険者とならない場合に、『外国人雇用状況届出書』の提出を失念しているケースが多く見られる(「提出を失念」以前に「制度を知らない」というのも珍しくない)ようだ。

 なお、この届け出にあたっては、日本国籍を持つ「帰化した人」はもちろんのこと、「特別永住者」(在日韓国人等)も対象外であるので注意したい。併せて、この取扱が、国籍による差別につながらないよう、配慮が必要だ。

 10年前に外国人雇用のルールが変わった背景としては、外国人の不正入国・不正就労が後を絶たないことも挙げられるが、他面、不正就労であることを承知で雇い入れる事業主が少なくないという実態も存在したからだ。
 しかし、手続き厳格化についての賛否はさておき、もし外国人を雇用する動機が「安い賃金で使えるから」という理由によるものだとしたら、それでは外国人労働者にモラールもロイヤリティも期待するのは無理な話だろう。「外国人である」ことも“個性の一つ”と認識して、その人の持つ能力や適性を最大限に引き出すのが経営者の役割とは言えまいか。


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実は怖い最低賃金法違反。事業廃止に追い込まれる事態も。

2017-09-13 16:59:03 | 労務情報

 今年10月(大阪府のみ9月30日)から改定される最低賃金は、「生活保護水準との乖離解消」を目的の一つとして、すべての都道府県で従前よりも1時間あたり22円以上の大幅アップとなることが公表された。
 これを受けて、多くの(常識的な)会社は自社の賃金を見直し、必要があれば臨時昇給等の措置を考えているに違いない。

 ただ、賃金の見直しにより最低賃金をクリアしたようでも、よくよく見ると、依然として最低賃金を下回っている事例が散見されるので、要注意だ。
 例えば、清算期間を1か月とするフレックスタイム制を導入している場合に、すべての月において所定労働時間を「171時間25分(30日分)」と設定して賃金を計算していると、大の月(暦日数31日)で不足が生じてしまったり、あるいは、「定額残業代」(「固定残業代」とも呼ばれる)を支払っている場合に、その前提とした見込み残業時間(1か月あたり30時間としておく例が多い)を実際の残業時間が上回ってしまったりして、割り戻した単価が最低賃金未満になってしまうということが起こりうる。
 このように最低賃金額を下回る賃金は、たとえ労使双方がその賃金額に合意していたとしても無効となり、会社は最低賃金額以上の賃金を改めて支払わなければならない(最低賃金法第4条)。そして、最低賃金法に違反した会社には、一部の例外を除き、50万円以下の罰金が科せられることとされている(同法第40条)。

 3年ほど前には、「最低賃金との差額については既に退職した者には支払わない」と主張し(もちろんこれは認識違いであり、退職者であっても在職していた期間については最低賃金の適用を受ける)、労働基準監督署による不払賃金を支払うよう求める行政指導に従わなかった都内の企業経営者が逮捕されるという事件が発生した。この経営者が支払いを拒否していた金額は、わずか97,940円(1人の賃金17,250円、もう1人の賃金80,690円)だったという。
 通常、最低賃金法に違反したとしても、是正勧告を受けるか、悪質なケースでは在宅のまま書類送検されることがあるくらいで、経営者が逮捕されて身柄を拘束されるケースは非常に稀とはいえ(この事案では、当該経営者が労働基準監督署による再三の出頭要求に応じず、罪証隠滅の恐れがあったことから、逮捕に至ったという)、こんな例を見聞きすると、労働基準監督官が逮捕権を有し、それゆえ、その勧告や指導には強制力があることを改めて思い起こさせる。

 また、さらに経営に支障の出そうな問題として、最低賃金法に違反して罰金以上の刑を受けた場合には、助成金(例えば、特定求職者雇用開発助成金、キャリアアップ助成金、職場意識改善助成金、介護事業者の介護職員処遇改善加算など)を受給できなくなったり、事業に必要な免許(例えば、労働者派遣業の許可、有料職業紹介業の許可、在宅就業支援団体の登録など)が取り消されることもある。
 助成金が受給できないのは諦めるしかない(それでも痛い)としても、事業に必要な免許を取り消されたら、事業を継続していくこと自体、困難になるかも知れない。実際、「最低賃金法違反により罰金刑を受けた会社が労働者派遣事業の許可を取り消された」というニュースは、枚挙にいとまが無い。

 「最低賃金に満たない額は後から払えば良い」という話では終わらないのだ。
 最低賃金法違反は“刑法犯”であることを認識し、コンプライアンスの徹底に努めたい。


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提出忘れは無い? “夫”の「養育特例」

2017-09-03 11:59:43 | 労務情報


 育児短時間制度の利用等によって標準報酬月額が低下した場合に、それが将来の年金受給に際して当人の不利にならないよう、年金額の計算においては「低下する前の標準報酬月額」を用いることとする措置が設けられている。
 この措置は「養育期間標準報酬月額特例」と呼ばれ、「3歳未満の子供を養育し、かつ、標準報酬月額が養育前よりも低下した場合」に対象となるものだ。

 ここで注意しておきたいのは、この特例が適用されるのは「“標準報酬月額”が養育前よりも低下した場合」という点だ。
 つまり、ただ「残業が減って収入が少なくなった」というだけでは「標準報酬月額の低下」に該当しないため、次の定時決定(算定基礎届)または随時改訂(月額変更届)により標準報酬月額が変更されるまでは対象にならない。

 また、意外な盲点であるが、この特例は、妻が専業主婦である夫も(夫婦とも被保険者であれば夫婦揃って)適用対象となりうる。
 それともう一つ、これも盲点と言えそうだが、必ずしも育児短時間制度を利用した場合だけに限らず、例えば転居に伴い通勤手当の額が変更され、そのため標準報酬月額が低下したような場合も対象となることにも要注意だ。

 ところで、この特例措置を受けるためには、事業主経由で「特例申出書」を提出しておかなければならない。会社は、該当する従業員から申し出が有ったら、管轄年金事務所にこれを届け出る義務を負う。
 もし担当者がこの制度を知らなかったために当人が将来受け取れる年金の額が少なくなってしまったら、大問題となるだろう。訴訟沙汰に発展したトラブル事例はまだ無いようだが、会社としての責任を問われる事態になる話でもあるので、担当者の認識不足の無いようにしておきたい。


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