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リスキリングとアンラーニングは相容れないものではない

2024-07-03 07:59:38 | 労務情報

 これまで日本企業における従業員の人材育成は、OJTに代表される「アップスキリング」(up-skilling)に重点が置かれていた。 しかし、近年の急激なデジタル化の進行等により、これでは不充分(場合によっては不適切)になりつつある。
 そこで提唱されているのが、「リスキリング」(re-skilling;「リ・スキリング」とも表記されるが本稿では「リスキリング」で統一する)や「アンラーニング」(un-learning)といった“学び直し”の機会だ。

 まず、リスキリングは、「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応して価値を創造し続けるために、必要なスキルを獲得する/させること」(厚生労働省労働政策審議会労働政策基本部会資料「リスキリングをめぐる内外の状況について」より)と定義される。 つまり、「リスキリング=DX教育」ととらえる向きも多いが、そう決めつけることはなく、例えば、GX(グリーントランスフォーメーション)への対応もリスキリングの方向性の一つと言える。
 そして、企業がこれを進めることで、現下の社会変容にも自社の新規事業展開や将来的な業態変更にも適応できるようになることが期待される。経済産業省や厚生労働省も、これへの支援策を打ち出している。
  【参考1】経済産業省「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」
  【参考2】厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)」

 一方のアンラーニングは、直訳して「学習棄却」、または意訳して「学びほぐし」とも呼ばれ、これまで学んできた知識や身につけた技術を一旦捨てることをいう。 もっとも、そこには当然、取捨選択(その過程が業務の見直しにもつながる)が必要であり、また、リラーニング(re-learning)ともセットで考えなければならない概念だ。
 アンラーニングは、従業員に自己否定感をもたらしディモチベーションともなりかねないリスクを伴うものの、(やり方次第ではあるが)従業員の意識変革を促し、組織の若返りも図れるという大きなメリットがある。

 誤解されがちだが、リスキリングとアンラーニングは対立概念ではない。
 リスキリングは新たな分野における知識や技能を身に付けるのに対し、アンラーニングは同じ分野における新しい価値観や枠組みを身に付けるものであって、相容れないものではないし、リスキリングの前提としてアンラーニングが必要になるケースもあるだろう。

 これからは、リスキリングとアンラーニングと、さらにはリカレント教育(職場を離れて大学院等で学び直す)や従来型のアップスキリングや自己啓発推進制度等も上手に組み合わせて、新しい時代に対応できる従業員を育成することが企業に求められよう。


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