新型コロナワクチン接種はようやくゴールが見えてきた感を呈しているが、一部の会社では、依然として従業員のワクチン接種を快く思わない向きもあるようだ。
しかし、従業員が安全に就労できる環境を整えることは会社に課せられた義務であるので、全従業員にワクチン接種を“推奨”すればこそ、少なくとも“阻害”してはならないことは、大前提として押さえておきたい。
具体的には、可能ならば「職域接種」を実施するのが最善策には違いないが、自前で接種会場やスタッフ(医師・看護師・運営係員等)を用意するのが難しい多くの会社にとっては、ワクチン接種のための“時間”を確保できるようにすることが現実的な策になりそうだ。
また、ワクチン接種や接種後の(副反応等への)対応のために費やす時間については「ノーワーク・ノーペイ」の原則により賃金を支払う義務は負わないが、それ以上の不利益を課すのは、法令で禁じられてはいないものの、従業員からも社会からも理解を得られまい。
考え方としては、公民権行使のための時間(労働基準法第7条)や健康診断のために費やす時間(労働時間に参入する旨の労働協約や労使慣行を有する職場も見られる)に近い。
ちなみに、厚生労働省が推奨する「特別の休暇制度」に関しては、それを制度として導入するなら時給制の従業員へも適用しなければならないことも含めて、慎重に検討するべきだろう。
ところで、ワクチン接種を従業員に“強制”することはできるのだろうか。
答えとしては「不可」だ。
従業員の健康は、本質的に個人の自由と責任において管理するべき私的分野に属するものなので、労働安全衛生法等で義務づけられるケースを除いて、会社はこれに干渉する権利を有さない。
また、医学的見地からワクチンの副反応リスクも否定しきれず、事故が起きた場合に会社が責任を負いきれるかという観点からも、ワクチン接種の“強制”は避けるのが無難だろう。
これは、「職域接種」を実施する会社でも同様だ。
では、接種しない従業員を配置転換させるのはどうかというと、こちらは、基本的には「可」と考えられる。
前述のとおり会社には安全な就労環境を整える義務が課せられているところ、ワクチン接種していない従業員は、自らが感染し、また、他の従業員に伝染させるリスクが極めて高いと言え、そのリスクを軽減するために配置転換が有効であるならば、会社は、その策を講じるべきだからだ。
しかし、これも、職種や職場を限定した労働契約がある場合は、本人の同意なく配置転換できないので、その点には注意を要する。
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