従業員に祝い事や不幸があったときにその日を休んでよいこととする「慶弔休暇」の制度を設けている会社は多いが、それを無給とするか有給とするかは、会社によって分かれているようだ。
そもそも慶弔休暇は法令で義務づけられたものではない。
労働基準法に定める年次有給休暇(第39条)、産前産後休業(第65条)、生理休暇(第68条)、公民権行使の時間(第7条)、育児介護休業法に定める育児休業(第5条)、介護休業(第11条)、子の看護休暇(第16条の2)、介護休暇(第16条の5)といった「法定休暇」とは異なり、慶弔休暇を設けなければならないわけではなく、また、その不就労の日数について「ノーワークノーペイの原則」に則り賃金を支払わないこととするのも、法令上まったく問題ないのだ。
これに関しては、厚生労働省が示している「モデル就業規則」にも、
第43条(抄) 慶弔休暇の期間は、無給 / 通常の賃金を支払うこと とする。
と書いてあり、会社が任意で設定できる形になっている。
ところで、まれに「無給とするなら“欠勤”と変わらないのではないか」との疑問を抱く向きもあるが、その日は就労を免除するのだから、就労するべき日に就労しない欠勤とは性格が違う。 慶弔休暇を利用したことをもって評価してはならないし、年次有給休暇付与の際に用いる出勤率の算定においても分母(労働日)に含めない。
しかし、これらを踏まえても、一般的には、慶弔休暇は有給とするのが望ましいと言われる。
というのも、賃金を支払わないこととしては、会社が慶弔休暇の制度を設けた趣旨(おそらく会社からの祝福・弔慰等の意が込められていたであろう)に反してしまうからだ。
ただ、慶弔休暇を有給とした場合、それは、いわゆる正社員だけでなく、パートタイマーや短期雇用社員も適用対象となることには注意したい。
『同一労働同一賃金ガイドライン』(厚生労働省告示第430号)には、「短時間・有期雇用労働者にも、通常の労働者と同一の慶弔休暇の付与並びに健康診断に伴う勤務免除及び有給の保障を行わなければならない。」と明記されている。
だからと言って、そのこと(だけ)を理由に「正社員の慶弔休暇を廃止する」というのは、本末転倒であるし、明らかな不利益変更でもあるので、そのような短絡的な考えは慎みたい。
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