従業員に無断欠勤されると、まず業務に支障が出るし、他の従業員へも悪影響を及ぼすので、会社は何らかの対処を講じなければならない。
しかし、短絡的に結論を出すのは危険だ。
では、どのように対処したらよいか、以下、無断欠勤のケース別に、その注意点を挙げておく。
A 事故や急病
日ごろ出退勤に乱れの無い従業員が突然無断欠勤した場合は、まず事故や急病が疑われる。 早急に本人に連絡し、連絡が取れないようなら家族に連絡を入れるべきだ。
このケースでは、ただの「欠勤」(原則ノーワークノーペイ)として扱うのが適切だろう。
B 逮捕・勾留
逮捕されると、多くの場合は22日間(48時間+勾留10日間+勾留延長10日間)、外部に連絡できなくなり、自ずと無断欠勤になる。 通常は警察等から自宅へは連絡が行くものの、本人や家族が会社に知られたくないと思って会社に連絡してこないことも考えられる。
このケースでは、会社は本人から(釈放後または接見時に)事情を訊き、逮捕理由や公判の状況によっては厳しい処分も考えなければならないが、そうなると「無断欠勤」など、もはや“判断材料の一つ”に過ぎなくなってしまう。
そして、もし当人に何ら非の無い逮捕・勾留であったなら、当然、Aと同じ扱いとなる。
C 会社への反発心
上司に叱責された等の理由で無断欠勤する者がいるかも知れない。
それが「職場放棄」であるなら懲戒事由になりうるが、このケースでは、精神疾患を発症している可能性や職場にハラスメントが存在する可能性(いずれも会社に責任あり)も想定しておく必要があろう。
長期無断欠勤したSEを諭旨解雇したところ「精神科医による健康診断を実施するなどした上で‥必要な場合は治療を勧めた上で休職等の処分を検討し、その後の経過を見るなどの対応を採るべき」として解雇無効と断じた裁判例(最二判H.24.4.27)も参考にしたい。
D 失念
単に「連絡しわすれた」というもの。 会社が注意・指導しても繰り返すようであれば、組織内で仕事するには不適格であるので、解雇も視野に入れて対処を考えざるを得まい。
ただし、そのためには、無断欠勤の都度、「始末書」または「顛末書」を書かせておきたい。
いずれのケースにおいても、(1)事情を聴取する、(2)出勤を命じ、あるいは再発しないよう指導する、(3)必要ならば懲戒する、という手順を踏んで対処を考えなければならない。
そして、「解雇(懲戒解雇・諭旨解雇・普通解雇のいずれも)」は、裁判で無効とされるリスクがあることを承知のうえで、あくまで“万策尽きた後の最終手段”と認識しておくべきだろう。
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