従業員に休日出勤させた場合(無論、三六協定の範囲内で)、それが法定休日だったら35%増し、法定外の休日だったら週40時間を超える部分は25%増し(月60時間を超えるものは50%増し(令和5年3月まで中小企業を除く))の割増賃金を支払わなければならない。
休日出勤に見合う代休を与えたとしても、割増し分については支払い義務が残るが、それが「休日振替(出勤日と休日とを入れ替える;当然、事前に通知することになる)」であったなら基本的に割増賃金は発生しない。
この休日振替は、1か月単位の変形労働時間制(労働基準法第32条の2;以下「1か月変形」と略す)や1年単位の変形労働時間制(同法第32条の4;以下「1年変形」と略す)を採用している会社においても、就業規則に休日を振り替えることがある旨の規定を設けておけば一応可能とされるものの、安易に運用するのは危険だ。
そもそも、変形労働時間制は、期間中の労働日を予め特定しておくものであるので、休日振替が日常的に行われるのであれば、その趣旨に反することになり、変形労働時間制を採用すること自体が認められない(昭63.1.1基発1号、平9.3.25基発195号、平11.3.31基発168号、平6.5.31基発330号、平9.3.28基発210号)。
裁判例では、「就業規則に労働者が予測可能な程度に具体性のある変更事由を定めた変更条項が必要」(仙台高判平13.8.29等)としている。
また、振り替えて出勤させた日の労働時間が8時間を超える場合または週(特約の無い限り日曜から土曜までとする)の労働時間が40時間を超える場合には、その超えた時間については時間外労働となる(昭63.3.14基発150号、平6.3.31基発181号、平6.5.31基発330号、平9.3.28基発210号、平11.3.31基発168号)。
もっとも、変形期間中の労働時間がトータルで増えていなければ割増し分のみの支払いで足りると解される。
さらに、1年変形における休日振替は、特定期間(労使協定で定める特に繁忙な期間)は週1回の休日を確保できる範囲内、特定期間以外は連続勤務6日以内に限られる(平6.5.31基発330号、平9.3.28基発210号、平11.3.31基発168号)ことにも気を付けたい。
なお、休日に半日出勤させる代わりに労働日に半日で早退させるようなものは、“休日”を振り替えることにはならないが、労使協定を締結して変形労働時間制を採用したのであれば(1年変形はもとより1か月変形においても)、その協定を締結しなおして新たに労働日ごとの労働時間を設定するのは差し支えない。 ただし、変形期間中に労使の合意をもって随時に変更するのは許されない(昭63.3.14基発150号、平6.3.31基発181号)。
休日振替は、使用者にとっては使い勝手の良いものだが、特に変形労働時間制を採用している会社では、その運用に慎重を期したい。
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