労働者派遣法による「労働契約申し込みみなし制度」が始まって、4か月が経過した。
「労働契約申し込みみなし制度」とは、違法派遣を(それと承知しながら)受け入れた派遣先は、その派遣労働者に対して労働契約を申し込んだものとみなす、という制度のことで、その「違法派遣」としては、次の5類型が挙げられている。
(1) 派遣労働者を禁止業務(港湾運送・建設業・警備業等)に従事させること
(2) 無許可事業主からの労働者派遣の役務の提供を受けること
(3) 事業所単位の期間制限(原則3年以内)に違反して労働者派遣を受けること
(4) 個人単位の期間制限(同一部署に3年以内)に違反して労働者派遣を受けること
(5) いわゆる偽装請負等
これらに該当した派遣労働者は、労働契約を申し込まれたものとみなされるわけだから、「承諾する」と意思表示するだけで、同じ労働条件のまま派遣先(労務提供先)に直接雇用されることになる。
このことは、特に(3)に関して、長期ユーザーとして労働者派遣を活用してきた会社にとっては業績を左右しかねない大問題として、改正法が成立した時から再改正を求める声が(特に経営者側から)挙げられていた。
そして、この制度が施行される直前の9月30日、「過半数労組等の意見聴取手続きを経れば3年を超えて労働者派遣を受け続けることが可能」とする再改正法案が可決された。そのため、会社としては、その手続きさえ適正に行っていれば、期間制限違反によるみなし制度適用は心配しなくて良いことになり、ユーザーとしての派遣先企業は一安心したところだろう。
しかし、実は、会社にとっては、それよりも気を付けなければならないことがある。それは、(5)の「偽装請負」だ。
契約上は「請負」になっていたとしても、実態が「労働者派遣」であったなら、「違法派遣」ということになるため、みなし制度が適用されて直接雇用義務が生じてしまうからだ。
適正な請負であるか否かは、次のようなチェックポイントで確認できる。
(1) 受託側が行うべき人事管理(配置する担当者の人数、担当者が欠勤する場合の措置、担当者の考課等)について、委託した側が決めていないか
(2) 委託した業務が早く終わった場合には委託料が減り、逆に遅くまで時間が掛かった場合に加算されるという取り決めになっていないか
(3) 旅費等が必要な場合に、その都度、委託した側が支払う仕組になっていないか。
(4) 委託者が所有する設備・機器・材料等(高度な技術・専門性をもって使用している場合を除く)を無償で提供していないか。
他にも種々挙げられるが、“業務の委託”なのか、“労務の提供”なのか、ということが判断基準になる。
「請負」と称していても、実態が“労務の提供”であったなら「労働者派遣」になってしまう(しかも「違法派遣」になるケースが殆どである)ことを、正しく理解しておきたい。
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