ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

資格取得届提出期限が厳格に適用される場合

2015-04-23 08:21:32 | 労務情報

 新たに従業員を雇い入れたら、厚生年金保険被保険者(本稿では船員被保険者を除く)資格取得届を、5日以内に管轄年金事務所に提出しなければならない(厚生年金保険法施行規則第15条)。ちなみに、この「5日以内」という提出期限は、5日目が年金事務所の休業日にあたる場合は翌営業日が提出期限となるが、5日の間に土日を挟んでいても変わらない。
 とは言うものの、この期限内に書類が整わないことも珍しくないし、年金事務所の側も、多少であれば期限を過ぎてからの提出であっても、何も言わずに受理しているのが(公表されてはいないが)実情だ。もっとも、社会保険適用事業所に雇用された従業員は、基本的には雇入れの日から被保険者資格を得ているのだから、年金事務所としても受理しないわけにもいかないのだろう。

 ところが、業種によっては、厳格に「5日以内」が求められるケースもある。それは、国民健康保険組合(以下、「国保組合」と略す)に加入する場合だ。
 「協会けんぽ(かつての政府管掌健保)」や「健康保険組合」に加入する場合と異なり、国保組合に加入する場合は、健康保険法の適用除外となる。本来なら「健康保険と厚生年金保険」のセットで加入するべきところ、健康保険についてだけ適用しないことを年金事務所が承認した後に国保組合に加入できる仕組みになっているため、提出期限が厳格に適用されるのだ。
 建設業や飲食業をはじめ業界団体により設立された国保組合は、多くの場合、協会けんぽよりも保険料が安いため、そちらに加入しよう(加入させよう)とするケースがほとんどだろう。その場合は特に、提出期限を厳守するべく、手続きを急ぎたい。やむを得ない理由で提出期限に遅れた場合は、事業主名での理由書を付けて承認を求めることは可能だが、できれば、そういう事態になるのは防ぎたいものだ。


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家族手当や通勤手当を残業単価に含めなければならないケース

2015-04-13 16:46:15 | 労務情報

 従業員に時間外労働をさせたときの割増賃金は、月給制の場合、「月の所定賃金額÷月あたり所定労働時間数」で1時間当たりの単価を算出する。
 この「所定賃金額」には、基本給以外の諸手当も含むのが原則だが、「家族手当」や「通勤手当」のような個人的事情に基づいて支給される手当は、労働とは直接的な関係が薄いことから、割増賃金を計算する際の基礎としては算入しないこととされている(労働基準法第37条第4項)。
 とは言うものの、このような名称の手当であれば必ず除外できるわけではなく、「家族手当」は「扶養家族の人数等を基準として算出した手当」であること、「通勤手当」は「通勤距離または通勤に要する実費に応じて算出した手当」であることが条件となっている。

 すなわち、例えば、家族手当で言えば、従業員全員に対し一律に一定額を支給したり、世帯主である従業員に(扶養家族の有無や人数に関係なく)支給したり、といったものは、割増賃金の計算基礎に含めなければならない。
 片や通勤手当については、問題となるケースはあまり多くないが、それでも、例えば、実際の通勤距離等にかかわらず「1日300円」を支給する、といったものは該当しないので、要注意だ。なお、税務上の課税・非課税は、この処理に際して、まったく関係ない。

 これらを整理してみれば、実質的に「第2基本給」的な意味合いを持つ手当は、「個人的事情に基づいて支給されている」とも「労働とは直接的な関係が薄い」とも言いがたいため、割増賃金の計算基礎に含めなければならない、と理解できそうだ。

 無論、それぞれの会社が従業員に支給する手当にどのような呼称を用いようと(公序良俗に反しない限り)自由ではある。しかし、労基法上、割増賃金の計算基礎から除外できるかどうかは、名称ではなく実態を見て判断されることは承知しておくべきだろう。


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デメリットも意外に多いフレックスタイム制

2015-04-03 20:48:57 | 労務情報

 フレックスタイム制は、業務の繁閑を労働者ごとに調整できるため、総じて労働時間の短縮が期待できると言われる。また、個々の労働者にとっては、家族との団らんの時間が増える、地域活動に参加できる、通勤ラッシュを避けられる等々、「ライフ・ワーク・バランス」に配慮した働き方ができるようになり、一方、会社にとっては「働きやすい職場」との印象から企業イメージ向上にも寄与できるといったメリットもある。

 しかし、フレックスタイム制には、メリットばかりでなく、デメリットも多数あることは忘れてはならない。

 第一に挙げられるデメリットは、労働時間管理が煩雑になることだ。
 所定労働時間が固定しているなら、そこから外れる時間(遅刻・早退や残業等)だけ把握しておけば良いところ、フレックスタイム制では始業時刻も終業時刻も労働者ごとに異なることになるのだから、それらをすべて記録し、管理する必要がある。管理ツールを導入するにしても、費用の掛かる話であるし、本人や上司や労務担当者の負担は間違いなく増すことは承知しておくべきだろう。

 また、労働者のパーソナリティに帰依する話ではあるが、生活がルーズになりがちであり、それに対応するべく、会社の管理体制を整える必要も生じてくる。

 社内コミュニケーションの点からは、各人の勤務予定を職場内で共有しにくくなり、職場の一体感も薄れてくる(特にコアタイムを設けない場合)という心配がある。加えて、他部門との連携が取りにくくなることもあって、会社全体として知識・情報・ノウハウの蓄積が図りにくくなるという一面もある。

 さらに細かいことを言えば、朝早くから夜遅くまで稼働しているため、光熱費がかさむという問題もある。

 フレックスタイム制の導入を検討している会社は、こういったメリット・デメリットをしっかり検証してから結論を出すようにしたいものだ。


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