「勤務間インターバル」とは、終業時刻から次の始業時刻までの間に一定の休息時間を設けるもので、労働時間等設定改善法第2条第1項が「事業主は、その雇用する労働者の労働時間等の設定の改善を図るため、‥講ずるように努めなければならない」と定める措置の一つだ。
また、「時間外・休日労働に関する労使協定」(いわゆる「三六協定」)において、特別条項により限度時間を超えて労働させる場合に講じるべき「健康福祉確保措置」としても選択肢に含まれている。
具体的な終業から始業までのインターバル時間は、法令やガイドラインに明記されてはいないが、後述する助成金の関係から「9時間以上」または「11時間以上」としている会社が多い印象だ。
ちなみに、EU(ヨーロッパ連合)労働時間指令(1993年制定、2000年改正)は、「24時間につき最低連続11時間の休息期間を付与」としている。
さて、勤務間インターバルを導入すると、次のようなメリットがあるとされる。
1,休息時間(=睡眠時間)が確保できることで、生産性が向上し事故が減る
2.従業員のワークライフバランスを実現できる
3.多様な働き方に対応でき、従業員の定着やリクルート面での訴求に効果がある
4.「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」の対象となりうる
※「中小事業主」・「月45時間を超える時間外労働の実態がある」等の要件あり
一方で、次のような懸念から勤務間インターバルの導入に二の足を踏む会社も多い。
1.始業を遅らせることで事業に支障が出る可能性がある(カバー体制確立の必要性)
2.朝礼や定時ミーティングの実施が難しくなる(働き方の固定観念払拭の必要性)
3.不就労時間に対して賃金を支払うこととするとコストアップと不公平感を生む
※始業が遅くなっても定時出社したものとして取り扱う場合(そうする例が多い)
もちろん、これは“努力義務”であって“義務”ではないので、導入するか否かは会社ごとの事情によるが、勤務間インターバルは、長時間労働対策として、労働時間をただ減らすものとは異なり、会社にとって取り組みやすい方策の一つと言える。 実際、厚生労働省が今年1月23日に公表した「労働時間制度等に関するアンケート調査結果について(速報値)」(P.10)によれば、半数近くの会社が何らかの形で勤務間インターバルを導入しているようだ。
未導入の会社は、労働環境改善の一策として検討してみてはどうだろうか。
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ネット上に「2025年に65歳定年が義務化される」と書いている記事を見掛けることがあるが、これは誤り(もしくはミスリーディング)であることを、まず指摘しておきたい。
高年齢者雇用安定法は、その第8条で「定年の定めをする場合には当該定年は60歳を下回ることができない」と定めており、これは来年になっても変わらない。ただ、同法第9条第1項第2号の「65歳までの継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度)」については、平成25年4月1日時点において継続雇用制度の適用基準に関する労使協定が締結されていた場合はその基準に則って対象者を選定することが可能であるところ、その経過措置が令和7年3月31日で終了するということなのだ。(同法附則(平成24年9月5日法律第78号)第3項)
ちなみに、令和3年4月1日に改正施行された同法第10条の2では、70歳までの就業を確保することを事業主の努力義務としている。
さて、こうした情勢を踏まえて、定年延長を検討している会社も多いと思われるが、中には、定年制そのものを廃止すること(文字通りの「終身雇用」)も選択肢に入れている会社もあるだろう。 経済協力開発機構(OECD)が1月11日に公表した『対日経済審査2024』でも、日本企業における定年制の廃止について言及している。
では、定年制を廃止することにはどのようなメリット・デメリットがあるのだろうか。 以下に整理してみる。
【定年制廃止のメリット】
1.雇用が確保できる(OECDはこれを提言している)
2.従業員の知識・ノウハウを活用できる
3.採用や教育に係るコストを削減できる
4.従業員が安心して働き続けられる
【定年制廃止のデメリット】
1.能力の衰えた者でも雇い続けなければならない
(状況次第では解雇や退職勧奨も可能だが「事業主都合での離職」として扱われる)
2.人件費(賃金・退職金等)が増大する
(これを解決しようとすると「労働条件の不利益変更」になる可能性がある)
3.人事が硬直化し、若手従業員のモチベーションが低下する
(一方で高年齢従業員のモチベーション維持も考えなければならない)
何事にもメリットとデメリットはあるものだが、こと「定年制」は、日本の雇用慣行として根付いてきたものなので、廃止するにしても熟考を重ねたうえで判断するべきだろう。
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