労働基準法の改正により、この4月から、企業規模にかかわらず、年5日の年次有給休暇(以下、本稿では「年休」と略す)を取得させる義務が生じた(ただし年10日以上の年休を有する従業員に限る)ことは、今さら説明するまでもないだろう。
さて、今回は、その年休取得義務づけ対策としてユニークな「9連休義務づけ」にスポットを当てて考察してみたい。
これは、全従業員に「土日を2回含めた9連休を1年のうちに1回は必ず取らせる」というもの。数年前にIT企業が福利厚生制度として導入して話題となったが、今般の労働基準法改正に関連して、俄然、脚光を浴びてきた。
この制度のポイントは、「連休」であること、そして、「休んでいる間、会社とは一切の連絡を絶つ(会社からも連絡を入れない)」ことだ。
これによって、心身をリフレッシュさせ、あるいは海外旅行など見識を深めることができ、その後の業務に良い影響を与えることが期待できるのはその通りとして、それ以上に、会社にとっての大きなメリットがある。
それは、「休暇中の業務を代行する者」が必要になることだ。休んでいる間、別の者が業務を代行することにより、次のような各種の効果が期待できる。
1.不正の防止
別の者が業務を担当する期間を設けることで、公金横領や取引業者からの饗応などの不正を発見し、もしくは未然に防ぐことが可能となる。
2.“業務の属人化”の防止
「その人がいないとできない」という業務を作らないことで、突発的な事故にも対応できる体制にしておける。
また、他者からの視点により業務改善のきっかけともなる。
3.協働意識の醸成
他の者の業務を担当することで、担当者の人知れぬ苦労を実感することができる。
また、「お互いさま」の意識が芽生え、職場の一体感醸成にも寄与する。
4.後継者の育成
部下へ権限移譲することが、後継者育成の一環となり、本人や周囲の意識も変える。
一般に、年休を取得しないのは“思い込み”と“思いやり”に問題がある、と言われる。
すなわち、「俺がいないと業務が回らない」という“思い込み”、「休んだ同僚の業務をカバーするなんて御免だ」という“思いやりの無さ”が、年休取得の心理的な障壁となっているというのだ。「9連休義務づけ」は、これらを解消するのにも効果がありそうだ。
会社には「年休を取らせない」という選択肢が無い以上、どうせなら、効果の上がる年休付与方法を考えたい。
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