ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

外国人を雇い入れる際に注意すべきいくつかの事

2015-05-23 22:46:58 | 労務情報

 ここ1~2年、政府主導で外国人の活用を勧める動きが相次いでいるなか、現に、外国人を雇用した、あるいは雇用する予定がある、という会社も増えてきている。そこで今回は、外国人を雇用する際の一般的な注意点を整理しておく。

 まず、外国人を雇おうとする際に、就労ビザを有しているかどうかを確認するのは、今や常識と言えるだろう。『在留カード』の提示を求め、原則として就労できない在留資格(例えば「留学」)であった場合は、『資格外活動許可書』の内容も確認しておく必要がある。
 また、外国人を雇い入れた会社は、管轄ハローワークへ届け出ることが義務づけられている。雇用保険の被保険者になる外国人については『資格取得届』の該当欄に記入することで届出義務を果たしたことになるが、被保険者にならない外国人については翌月末日までに『外国人雇用状況届出書』を提出しなければならないので、失念しないよう注意を要する。
 さらに、外国人労働者も「労働者」であることは忘れてはならない。労働基準法・最低賃金法・労働契約法・労働組合法・パートタイム労働法・雇用機会均等法・労災保険法といった労働関係法も、当然、適用されるのだ。ただし、「社会保障協定」の締結相手国から派遣されている者については、社会保険制度(厚生年金保険制度が主だが出身国によっては健康保険制度や労災保険制度まで含む場合も)の適用が一部免除されることがある点は、例外として覚えておきたい。

 6月は「外国人労働者問題啓発月間」として、厚労省は例年、外国人雇用管理改善のためハローワークによる事業所巡回指導を実施している。その対象となるかどうかはともかく、これを機に、自社の外国人雇用手続きをチェックしておくと良いだろう。


※この記事はお役に立ちましたでしょうか。
 よろしかったら「人気ブログランキング」への投票をお願いいたします。
 (クリックしていただくと、当ブログにポイントが入り、ランキングページが開きます。)
  ↓

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

団体交渉拒否とみなされるケースとその防止策

2015-05-13 16:48:08 | 労務情報

 近年は、企業内での労働組合組織率が低下している一方で、合同労組(※)が労使紛争に関与するケースが増えている。そのため、企業規模の大小にも企業内組合の有無にもかかわらず、すべての企業において、合同労組から団体交渉を申し入れられる可能性があることは承知しておかなければならない。
 (※)「合同労組」とは、企業の枠を超えて地域単位で労働者を組織する労働組合を言う。具体的には「合同労組」・「一般労組」・「地域ユニオン」等と呼称され、主に中小企業の労働者が個人加盟しているのが特徴。

 さて、労働組合(企業内労組であるか合同労組であるかを問わず)から団体交渉を求められた場合、最もいけない対応が、その団体交渉を拒否することだ。
 団体交渉の申し入れ自体を無視するのは論外としても、例えば団体交渉の開催場所を労働者の勤務地とは離れた本社所在地に指定する、開催時間を「昼休みの1時間に限る」と制限する、といった会社側の都合を押し付けるのも、「団体交渉拒否」とみなされる可能性が高い。一般的に団体交渉は、労働者側に過度の負担を強いないよう、労働者の勤務地の近くで開催し、費用支出(社外開催における会場費等)が発生する場合は会社側が負担すべきであろう。これは法律上の義務ではないが、組合から「団体交渉拒否」とのそしりを受けないための防衛策と考えるべきだ。
 また、形式的には交渉に応じても、何ら裁量権を与えられていない人事部長や弁護士等が経営者側の回答を伝えるだけに終始するケースもありがちだ。しかし、これも、誠実な交渉とは認められないので、要注意だ。

 「団体交渉拒否」(「不誠実団交」を含む)は、労働組合法第7条に掲げる不当労働行為であり、労働委員会に提訴された場合には、その事実だけをもって会社は圧倒的に不利となる。団体交渉の申し入れがあったら、きちんと交渉の場を用意して、まず労働者側の言い分に耳を傾けるべきだろう。その後で、会社側にも言い分があるはずなのだから、具体的な資料と根拠を明示して堂々と反論すれば良いのだ。
 「団体交渉に誠実に応じること」と「労働組合の要求を受け容れること」とは、まったく別物であることを、しっかり認識しておきたい。


※この記事はお役に立ちましたでしょうか。
 よろしかったら「人気ブログランキング」への投票をお願いいたします。
 (クリックしていただくと、当ブログにポイントが入り、ランキングページが開きます。)
  ↓

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

業務上災害における会社の民事責任

2015-05-03 15:58:00 | 労務情報

 労働基準法は、業務上災害が発生した場合、それが労働者の重過失による場合を除き、会社に、被災労働者(またはその遺族)に対する一定の補償義務を課している。ただし、労災保険による給付が行われる場合は、その部分について会社は補償義務を免れることになっている(労働基準法第84条第1項)ため、通常は、会社は労災保険から給付されない待期3日間の休業分だけを補償すれば、労働基準法による補償義務は果たしたことになる。

 ところが、民事上の補償責任は、労災給付が受けられたことをもって免れるわけではないので、その点は誤解の無いようにしておきたい。
 その事故の原因が、業務命令自体に違法性が有ったためであるなら「不法行為」として、また、会社が安全配慮義務(労働者が安全に仕事できるよう配慮すべき会社の義務=労働契約法第5条)を果たさなかったためであるなら「債務不履行」として、民事訴訟が提起される可能性もあるのだ。特に後者に関しては、「事故が起きることが予見できたにもかかわらず、回避手段を講じなかった」という“不作為”について会社の責任が問われるため、すべての業務上災害が訴訟の対象となりうると言っても過言ではない。
 そして、裁判所は往々にして弱者(=労働者)に有利な判決を出しがちであり、特に死亡事故においては会社の存亡に関わるほど多額の補償を命じられる可能性もあることは承知しておかなければならないだろう。
 そういう事態に備えて、労災保険とは別に「使用者賠償責任保険」(民間保険会社の商品)を掛けておくことを検討する余地がありそうだ。

 もっとも、業務上災害が発生すると、被災労働者やその家族(または遺族)はもとより、会社にとっても大事な労働力を失ったうえに損害賠償までしなければならないわけで、誰も得をしない。訴訟対策以前に、事故を予見して回避手段を講じておくことこそ、健全な経営のために必要であることを、経営者は認識しておくべきだろう。


※この記事はお役に立ちましたでしょうか。
 よろしかったら「人気ブログランキング」への投票をお願いいたします。
 (クリックしていただくと、当ブログにポイントが入り、ランキングページが開きます。)
  ↓

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする