会社が従業員を退職させたい場合、一方的に解雇するよりも、まずは「退職勧奨」を検討したい。無論「状況が許すならば」という前提条件が付くが、労働者を説諭して会社からの提案に同意してもらっておけば、通常はトラブルに発展しにくいからだ。
さりとて、退職勧奨におけるトラブル事例も、皆無というわけではない。では、どういう点に注意すべきかを、以下に挙げてみたい。
まず第一に、退職勧奨は、あくまで“勧奨”なので、会社からの提案を本人が拒否することも許される。そこに会社側の強迫行為があったなら、その合意は事後に取り消すことができる(民法第96条)ので、退職勧奨する上司や人事担当者の言動には慎重を期さなければならない。
第二に、これは盲点なのか(あるいは知っていながらとぼけているのか)、誤解している向きが多いが、退職勧奨に応じて退職した場合であっても、離職事由は「会社都合」であることに違いない。併せて、雇用保険料を財源とする助成金の多くは、会社都合での離職者を出すと原則として向こう6ヶ月間は受給できなくなるので、そういったことも、会社は承知しておかなければならない。
また、退職金制度の有る会社では、退職金も会社都合での係数を用いて算出することになる。もっとも、退職金に関しては、むしろ、勧奨に同意しやすいよう金額の上乗せを用意することも考えなければならないくらいだ。
第三に、合意を得られたら、『退職合意書』を交わしておくのは鉄則だ。少なくとも、会社からの提案内容を予め文書化し、納得できたならそれに記名捺印してもらう準備はしておいて良いだろう。
なお、これらは、“普通解雇”に相当する事由における退職勧奨の話であって、“懲戒解雇”に相当する事由における退職勧奨(「諭旨解雇」または「諭旨退職」とも呼ばれるケース)では扱いが異なる部分もあることは承知しておかれたい。
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