社会保険料の『算定基礎届』を提出する時期となった。
この『算定基礎届』は、原則として郵送で提出することになっているが、一部の事業主には、郵送ではなく、出勤簿・賃金台帳・源泉税納付書等とともに持参提出するよう、通知が届いている。日本年金機構によれば、「簡易調査を兼ねる」との趣旨で、概ね4分の1に相当する事業所に対してこの通知を発しているそうだ。今回これに該当した事業所も少なくないだろう。
ところで、この通知を受け取った事業主から、「そもそも日本年金機構にはこういう調査をする権限が有るのか?」と質問を受けることが多い。「あの日本年金機構が調査とは、どの面下げて?」と、昨今の不祥事を受けて半ば感情的になっているのも否定できないが。
その気持ちは分からないではないが、質問への回答としては、「法律で調査権限を与えています。残念ながら。」ということになる。
厚生労働大臣は、被保険者の資格・標準報酬・保険料等に関し、必要があると認めるときは事業主に対して文書その他の物件の提出又は提示を命じることができる(健康保険法第198条・厚生年金保険法第100条)とされている。これは「厚生労働大臣」が有する権限なのだが、この権限を日本年金機構に委任した(健康保険法第204条第19号・厚生年金保険法第100条の4第36号)形になっているのだ。
つまり、今回の通知文に書かれている文言は柔らかいが、これは、「厚生労働大臣に代って命じている」ものと読まなければならない。この指示に従わなければ、「六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する」(健康保険法第208条第5号・厚生年金保険法第102条第5号)とされているので、甘く見てはいけない。
もっとも、社会保険に加入すべき労働者をすべて加入させ、『算定基礎届』・『月額変更届』その他の書類を正しく提出しているなら、何ら臆することなく調査に応じれば良いだけのことだ。資料を揃えるのが面倒ではあるが。
ちなみに、健康保険の保険給付に関しても、全国健康保険協会(協会けんぽ)に厚生労働大臣の調査権限を委任できることになっている。併せて承知しておかれたい。
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