年末が近づくとパートタイマーの“働き控え”に頭を痛めている会社もあるだろう。
「働き控え」は「就業調整」とも呼ばれ、配偶者の扶養の範囲内で働く者が勤務日などを調整するようになることだ。
これは、一定以上の年収を得ると社会保険や税制の仕組み上、適用対象外(もしくは適用対象)になるためで、具体的には高い方から「130万円の壁」「106万円の壁」「103万円の壁」があり、これらを総称して「年収の壁」とも呼ぶ。
A:130万円の壁
年収が130万円を超えると、社会保険の被扶養(保険料負担なし)から外れる。 すなわち、健康保険は国民健康保険に加入することになり、また、国民年金の第三号被保険者でなくなり第一号被保険者となり、いずれも保険料負担が生じることになる。また、配偶者の勤務する会社によっては(配偶者が公務員である場合も)、配偶者手当(家族手当・扶養手当)の支給対象でなくなるのも、この“壁”を高く感じさせる要因の一つだ。
B:106万円の壁?
従業員50人超(令和6年9月までは100人超であったのが適用拡大)の会社に勤務する所定労働時間が週20時間以上かつ賃金月額が8万8千円以上のパートタイマーは、その会社の健康保険・厚生年金保険の被保険者となる。月額8万8千円を年額換算すると105万6千円であることから「106万円の壁」と“厚生労働省では”呼んでいるが、一般には馴染みの無い用語だろう。 第一、時給1026円以上(ちなみに東京都の最低賃金は1163円)であれば週20時間で月額8万8千円を超える計算になるのだから、そもそも働き控え(就業調整)に結びつく話ではない。
C:103万円の壁
年収が103万円を超えると所得税を課されるようになる。 また、その配偶者の「配偶者特別控除」が段階的に引き下げられるようになる。103万円を超えた途端に税負担が急増するわけではないのだが、上にも挙げた配偶者手当(家族手当・扶養手当)の支給対象を「所得税非課税の配偶者を有する者」と定めている会社もあるのが「壁」と呼ばれる所以だ。
これら「年収の壁」は、働く者の心理として理解できないではないが、働けるのに働かないのは、雇っている会社も困るし、社会全体として労働力不足の中、こういう傾向は避けたいところだ。
国(厚生労働省)もこれを問題視しており、①社会保険適用促進手当の標準報酬算定除外、②キャリアアップ助成金のコース新設、③配偶者手当見直しに向けての提言、といった対策を講じている。
もっとも、これらは社会保険制度や税制の仕組みに起因するものであるので、将来的には、制度全体を見直さなければならないようになるだろう。
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