ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

就業規則を制定するのは“義務”ではなくて“権利”です

2024-11-23 07:54:24 | 労務情報

 会社は複数の人が集まって仕事をする場なのだから、当然、組織内でのルールを定めておく必要がある。そのルール作り、すなわち「就業規則」を定めることは、経営権の一環である。
 加えて、「就業規則」は、経営者が一方的に作成したものであるにもかかわらず、法令や労働協約に反せず、合理的な労働条件が定められており、かつ、労働者に周知されている場合には、その就業規則で定める労働条件が“労働契約”の内容となりうる(労働契約法第7条・第13条)ことも、覚えておきたい。

 労働基準法第89条は、常時10人以上の従業員がいる職場に、就業規則の作成および行政官庁への届け出を義務付けている。
 しかし、就業規則を制定する目的は、「労働条件を明確化し、職場秩序と服務規律を保持するため。そしてトラブルを予防し、ひいては安心感とロイヤリティを醸成するため。」であるはずだ。それを考えれば、届け出についてはともかく、就業規則の作成は、義務付けられるものではなく、むしろ経営者の“権利”と認識するべきだ…‥

※この続きは、『実務に即した人事トラブル防止の秘訣集』でお読みください。

  

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ストレスチェックの正しい理解と活用を

2024-11-13 09:59:11 | 労務情報

 常時50人以上の労働者を使用する事業場は、毎年1回以上、「ストレスチェック」(労働安全衛生法第66条の10にいう「心理的な負担の程度を把握するための検査」)を行い、結果を労働基準監督署に報告しなければならない(労働安全衛生規則第52条の21)。

 ところで、ストレスチェックは何のために行うのか、その目的は正しく理解されているだろうか。

 まず、労働者にとっては、自分のストレスの状態を知ることで、ストレスをためすぎないように対処したり、医師から助言を受けたり、場合によっては会社側に業務量の軽減などを求めたり、メンタル不調を未然に防ぐことが第一の目的だ。
 一方、会社にとっては、従業員のストレスの状況を知り、職場環境や業務量などがその原因と考えられる場合は、それへの対策を講じることで生産性向上や事故防止に、ひいては従業員の定着に寄与することが、ストレスチェックの目的と言える。

 ところが、ストレスチェックに関しては、「メンタル不調あるいはメンタル不調者を見つけ出すもの」と誤解される向きが多い。 そのため、「自分は健康だから受ける必要はない」「会社に知れたら昇進に影響しかねない」としてストレスチェックに非協力的な従業員も、雇う側の立場で「誰がメンタル不調者か教えてほしい」と要望する管理職も、少なくない。
 また、高ストレス者が多い集団の管理者の評価が低くなる傾向や、さらには、気に入らない上司を貶めるように部下(受検者)が回答するケースすら見聞きされる。 これでは、無意味どころか、逆効果にすらなりうる。

 経営者や労務担当者は、従業員(管理職を含む)に対して「ストレスチェックはストレスの度合いを測るものであって、結果が人事に直接影響するものでない」と明言したうえで、協力を求めるべきだ。
 そして、ストレスチェックの結果は、集団分析等の手法を用いて職場環境の改善に活かしたい。 ただし、個別に業務量の軽減などを求める従業員がいたら、それには丁寧に対応するべきであることは言うまでもない。
 もし自社内で対応するのが難しければ、EAP(従業員支援プログラム)機関等、外部に委託することを検討してもよいだろう。 無論それにはコストを要するが、ストレスチェックを実効性あるものにするための必要経費ととらえるべきではないだろうか。

 ストレスチェックは、もちろん法律上の義務であるので実施しなければならないのだが、義務感だけで実施しているのでは、もったいない。
 せっかくコストと時間を掛けて実施する以上は、意味あるものにするべきだろう。


※この記事はお役に立ちましたでしょうか。
 よろしかったら「人気ブログランキング」への投票をお願いいたします。
 (クリックしていただくと、当ブログにポイントが入り、ランキングページが開きます。)
  ↓

 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

給与のデジタル払いを会社は積極的に採用するべきか

2024-11-03 15:49:18 | 労務情報

 給与は、原則として通貨で支払わなければならない(労働基準法第24条)が、労働者の同意を得た場合には「銀行・証券会社等の本人口座への振り込み」・「退職手当に限り小切手等での支払い」が認められてきた(同法施行規則第7条の2)。
 これをデジタル通貨(「〇〇ペイ」等と称する“日本円”の電子マネーを指す;“外国通貨”や“仮想通貨”は対象外)での支払いも可能とすることについて、ここ4年ほど議論されてきたが、今年8月に「資金移動業者の口座への賃金支払いに関する厚生労働大臣の指定」第1号が出され、ようやく実現する運びとなった。
 ただ、現時点では、その指定業者のグループ会社10社に限る、言ってみれば“テスト運用”といった扱いだ。 その指定業者の発表によれば「年内にすべてのユーザー向けにサービスの提供を開始予定」としている。
※グループ外の会社向け(まだ限定的だが)へもサービス提供を開始した旨、指定業者が発表(11月5日)

 では、この仕組みが本格稼働したら、会社はそれを積極的に採用するべきなのだろうか。

 会社にとって給与をデジタル払いにすることの最大のメリットは、指定業者の法人口座を保有していれば(現時点では)振込手数料が掛からないことだろう。
 しかし、個人の1口座保有残高は(現時点では)20万円までとされているため、それを超える金額が振り込めないのはもちろん、それ以下であっても受け入れる余地が不足する(その場合は予め指定した「代替口座」に支払われる)可能性が生じる。 だとすると、給与の全額を資金移動業者の1口座のみに振り込むのは現実的でなく、給与を分割して支払うことになり、振込手数料が無料であることのメリットは薄れてしまう。
 現に複数口座での給与受け取りを認めている会社であれば、その選択肢を増やして従業員の利便性を高めることもメリットになりうるが、これから新たに給与の分割払いを始めるのは、担当者の労力やミス・トラブルのリスクまで考えると、慎重にならざるを得まい。

 また、給与のデジタル払いを導入するには、以下の手順を踏まなければならない。
  1.指定資金移動業者の確認、サービス内容の検討
  2.過半数労働組合または過半数代表者との労使協定の締結、就業規則等の改定
  3.従業員への説明と個別同意
 これらは、通常の銀行口座への給与振り込みにあたっても必要な手続きである(平成10年9月10日基発第530号;令和4年11月28日基発1128第4号)のでデジタル払い特有のものではないが、新たに採用するとなるとハードルが高いと感じる経営者も多いだろう。

 給与の支払い・受け取りに関する事項なのでその確実性・安全性を考慮すると仕方ないのかも知れないが、当初期待されていた「デジタル社会の到来」には(現時点では)程遠い印象だ。


※この記事はお役に立ちましたでしょうか。
 よろしかったら「人気ブログランキング」への投票をお願いいたします。
 (クリックしていただくと、当ブログにポイントが入り、ランキングページが開きます。)
  ↓

 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする