厚生労働省に昨年12月から設置された「労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会」において、労働安全衛生規則第44条に定められている検査項目に「女性の健康に関する事項」(月経困難症・更年期に係る問診、その他女性の就業率向上に着目した検査項目)を追加することが検討されている。
これは、
「女性活躍・男女共同参画の重点方針2023(女性版骨太の方針2023)」(すべての女性が輝く社会づくり本部・男女共同参画推進本部;令和5年6月13日決定)で「事業主健診(労働安全衛生法に基づく一般定期健康診断)に係る問診に、月経困難症、更年期症状等の女性の健康に関連する項目を追加する」と、
「経済財政運営と改革の基本方針2023(骨太の方針2023)」(令和5年6月16日閣議決定)で「事業主健診の充実等により女性が尊厳と誇りを持って生きられる社会を実現する」と、それぞれ示されたことに基づき、健診項目を追加するにあたっての障害や配慮すべき事項を整理しているものだ。
検討会では、次のような意見が出されている。
・健康診断は原則無症状のものが対象になるが、その意味で効果があるか
・検査で判明した健康事象・危険因子が業務に起因もしくは業務によって増悪するか
・有所見とされた者に対して事業者が実施できる事後措置(就業上の措置)は何か
・有所見とされた者に対して過度に就業制限をかけることの不利益可能性はないか
・検査は巡回健診でも実施可能か、また、対象となる労働者全員に対して実施可能か
・検査に要する費用の増大を事業者が許容できるか
・検査結果は「事業者が把握するべき健康情報」として事業主に提供できるか
・要望する声の多い「がん検診」や「眼底検査」等の追加は考えないのか
その他にも否定的な意見も目立つが、上述のとおり女性向けの健診項目を追加することは既定路線であるので、その適切な実施を担保する方法やそのための政府指針を示す方向で意見が集約されるものと思われる。
ちなみに、日本経済団体連合会は「2024年版経営労働政策特別委員会報告」において、女性の一層の活躍促進に向けて「働き続けられる環境の整備」等に積極的に取り組むとしており、具体的には、①生理休暇を刷新・拡充した「L休」(「Life Style Support 休暇」の略)の創設、②女性の健康に関する管理監督者への意識啓発、③産業保健スタッフによる相談支援や専門医への受診勧奨等、女性の健康と仕事との両立支援に向けた実効性ある対応に着手することとしている。
これらも働く女性の健康保持に有効な施策であるので、健診項目の追加と併せて検討する価値はあるだろう。
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