【いくつになってもアン気分】

 大好きなアンのように瑞々しい感性を持ち、心豊かな毎日を送れたら・・。
そんな願いを込めて日々の暮らしを綴ります。

格調高い美の矜持

2011-04-17 16:15:56 | A・クリスティーの館


「この部屋をすっかり模様変えされたんですね」
とリチャードが部屋の中を見廻して言った。
「素敵ですわね、奥様」
とドーリスが言った。
「こういう 摂政時代風 の装飾が
この節の流行でございましょう?
模様変えをなさる前はどんなでしたの?」
「昔風に 薔薇色 でまとめてありましたね?」
とリチャードはぼんやり言った。
炉の火 の柔らかい光を浴びて、
アンと2人古ぼけたソファに並んで座っていた日の
記憶が心をかすめたのであった。
今はそのソファも ナポレオン1世時代風
長椅子にとって代わられていた。
                 【A・クリスティー作 「娘は娘」】


   こちらは快晴の空が戻って来ました。
  それにしても昨夜から今朝の冷えたこと!
  
   そうそう心配していた桜、我家から見える限りでは、
  染井吉野はその色を失いつつありますが、山桜は健在。
  
   遅かれ早かれ、その花を散らす事になると思うのですが、
  今だけでもほっと安心です。



   さて、A・クリスティー作 「娘は娘」。
  読了したのはつい 【先日】 の桜の樹の下。
  
   この本、英国の中・上流社会のお茶シーンや格調高いインテリア等など・・
  詳細に記されているものですから、まだ読み終わってもいませんのに、
  こちらにも再三登場させたものです。
  今更の感もしますが、一応感想など書き留めて置く事に致しましょう。

   繰り返しになりますが、この本は彼女には珍しく、推理小説ではありません。
  従って謎解きがない分、私の大好きな(上記のような)描写が、
  ふんだんにあるのかも知れません。

   本の内容は、タイトルが示しますように美しい未亡人の母、アン
  一人娘の セアラ の、“アンの結婚話を契機に起こった、
  母娘の心の葛藤・・” とでも申しましょうか・・。

   仲の良い母娘に、良くある話・・と言えばそれまでですが、
  ここでもクリスティーの細やかな筆が冴え渡っています。

   ミス・マープル 物でも感じる事ですが、女性に対する洞察力はさすがです。
  又、アンの忠実なる女中、(この言葉は、今では死語ですが、
  ここではそのまま使わせて頂きます) イーディス の存在も際立っています。

   それにしても摂政時代風、ナポレオン1世時代風、ビクトリア時代風、ジョージ朝風・・
  枚挙に暇(いとま)がありません。そして、ここでも炉の火と蕾の薔薇が・・。
  そして次も又々、ミス・マープル物です。表紙の編物の挿絵がそれを物語っていますね。