雪が積もった先週土曜日、
夕方、空を見上げると
まだ明るい時間だというのに、
ぽっかりと大きな白い月が浮かんでいた…
まるで手を伸ばせば掴めそうな、銀紙で作ったような作り物のような月だ。
思えば、長い時が流れた…
“その人”の楽屋を訪ねたのは、
まだ私が駆け出しの局アナで、
先輩の男性アナに誘われてインタビューに同行した時だった。
にこやかに迎えてくれたのは推しの強そうな、やや高圧的で強面の大柄な女性マネージャーだったが、
ガードの硬そうな周囲の雰囲気をよそに、
“その人”は、にこやかに私たちを迎え入れてくれた。
本番前とは思えない和んだ雰囲気の
だだっ広い畳敷きの楽屋の奥に居たのは、
小さな女の子だった。
スッピンだったせいもあるが、第一印象はどこにでもいる普通の女の子。
実年齢よりずっと幼く見えた。
それ以上に印象的だったのが、
彼女の周りの《お菓子の山》だった。
半径2mにポッキーやお煎餅などの袋菓子が無造作に散らばっていて、
彼女は、その中央でペタンと座っていた。
“ちゃん”付けて呼ぶ男性アナにも、イヤな顔一つせず当然のようにぶりっ子で受け答えする少女は、
それから数年後に《時の人》となり、
女の子を産んだ。
押しも押されもせぬ大スターとなった“その人”は、
あの、お菓子の山に埋もれた普通の女の子ではなく、
いつの間にか、遥か高いところにいる遠い存在になっていたが、
ほぼ同じ時期に結婚し長男を出産した私は、
TVで生まれたばかりの赤ん坊を披露する母となった“その人”に、
勝手に親近感を抱き続けた。
次に噂を聞いたのが、
我が家から数キロ先の隣町にある今の旦那Kさんの実家で、Kさんの実父の葬儀が営まれた際だ。
その“できる嫁”ぶりに
「それまでのイメージが変わった」という…
そんな噂話を耳にした。
三度目の結婚生活は順調のようだった…
が、
このコロナ禍で、芸能生活40周年の節目に当たる大事なコンサート活動は、厳しい状況であったことが想像できる。
その中での今回の訃報…
同い歳の子どもを持つ親として、その悲しみは想像を絶する。
時間が巻き戻せるなら、
どんなにいいだろう…
今はただ、
亡き娘さんの魂が安らかでありますよう…
祈っています。