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『この死を謳歌する』と書かれたサブタイトルに惹かれ、
読みたくなって図書館に予約したら、新刊本なのに待たされる事もなく順番がきた。
《万人のための哲学入門》佐々木中 著
さらっと読めるし、確かに万人向きではある。
3時間もあれば読み終える事ができる…
が、
私は…
この本を読むには歳をとりすぎてしまったようだ。
著者は『哲学とは死を学ぶ事である』と説いている。
なるほど…そう大いに共感できるのは、
『死について』は著者と同じように考えていた時期があったから…
特に32頁からの戦死に関係する箇所は、
以前靖国神社を訪れた際、頭に浮かんだことでもあった。
サブタイトルの
『この死を謳歌する』とは、何を意味するのだろうか?
哲学入門とあるから、
『死』について考える事を楽しもうと言っているのだろうか?
ちなみに70年代生まれの著書のお好みの音楽は、
80年代のファンクミュージックから最近のヒップホップまで幅広いようだ。
《死を謳歌》というのは理解に苦しむが、
人間であろうがペットであろうが、
死を軽く扱う事は私にはできない…
特に、死をエンターテイメントにするなど、もってのほかだと思っている。
かつて友達づきあいをしていた人達とも、それが原因で付き合いをやめた。
パートナーが亡くなった後で
葬儀後に焼香に訪れた際に、棺の中の死顔の写真を見せたり、
亡くなる時の様子をビデオに撮って友人知人に見せたりするような事をする人の心理が、
私には、どうしても理解できない。
見ず知らずの他人の死亡事故や不慮の事故のニュースに心が痛み、
行方不明者のニュースを流される度に、気分が落ち込む…
それが普通ではないのだろうか?
準備ができない状態で、
突然『死』を迎えるのは心残りに違いない。
準備ができるうちは、まだいい。
先だって、
YouTubeで限定公開されていた《ブラックバード》という映画を観たが、
とても重いテーマだと思ったし、
自分ならどうするか…と観終わった後で暫く考え込んだ。
家族の立場であれば、最終的に理解するのは難しいが、
病気を抱える本人の気持ちを考えると、
自らの幕引きを選択する気持ちも理解できなくはない。
観る者に問いかけている…そんな映画だった。