遠い森 遠い聲 ........語り部・ストーリーテラー lucaのことのは
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縄文の神とは.......オニとはなにか......
古代史・近代史 知られざる日本
/
2008-09-13 10:35:53
縄文の神について、昔話にはつきものの鬼について、考えてみたいと思います。縄文時代は16500年前からはじまり2500年から3000年前に幕を閉じました。はるか昔、日本は大陸とつながっていましたから、そのころ日本に住んでいたひとびとはシベリアや大陸から陸つたいにやってきたひとたちだったのでしょう。
世界で最古の土器は縄文の土器といいます。狩猟採集文化ではありましたが、遺跡からどんぐりなどを植林したあとが発見されたそうです。ひとびとは定住し豊かな暮らしをしていた....それゆえ同じ場所に2000年も住みつづけていたのでしょう。この間も大陸との交流は少ないながらあったようです。
縄文のひとびとは自然界の山、川、海、樹などに神が宿っていると信じ、信仰の対象としてきました。そして自然界のあらゆるものに精霊がやどると信じていました。ひとびとは精霊と交わり大樹の声を聞き、草や花や鳥や虫たちの声...響きを聴きました。それは森の文化でした。太陽崇拝がそのその根にあったのではと思います。全国各地に残っているストーンサークルやメンヒル、ドルメンといった巨石あるいは巨木の立柱は夏至や冬至を示すものが多く祭祀のあとと考えられます。そこにケルトの遺跡や考え方との共通点を見出したひとは多いようです。
日本で特徴的なのは条件のあう自然の山あるいは人工の山を神降りる場所、そのままご神体としていたことです。日本のピラミッドともいわれます。中腹には磐境(イワサカ)山頂付近には磐座(イワクラ)という巨岩があって、イワサカは神域をあらわしイワクラに神が降りるのです。日本でもっとも古い神社大神(オオミワ)神社は拝殿はありますが本殿はありません。。鳥居の向こうの三輪山がご神体です。
大神(オオミワ)神社 向こうに見えるのは三輪山、三輪山は先住民族にとって神宿る聖なる山でした。ヤマトとアヤカスの戦いはこの周辺で起きました。
大湯のストーンサークル
さて、大陸から渡ってきた渡来人はおもに九州に上陸しました。中国、朝鮮から集団で渡ってきたのです。一説には呉王朝の裔が天候の激変から新天地を求めてきたといわれます。また滅亡した秦の末裔として秦氏(西アジアの民族の流れでユダヤ教、景教...中国に伝わったキリスト教の信者であったと思われる)が、多数の集団で、日本に移住したようです。渡来者がもたらしたのは、稲作ばかりではありませんでした。土木・建築技術、神社の建築様式を持ってきたのです。 弥生時代のはじまりです。弥生時代には渡来した部族同志の激しい戦闘が起こりました。
渡来人が縄文人と混交し農耕技術などを教え食糧が増産されたのでしょう。飛躍的に人口が増えました。渡来人のなかでのちにヤマト朝廷をひらいた一族を天孫族といいます。そのひとりニニギ(天孫降臨の)の兄ニギハヤヒ(物部の始祖)が義兄に当たるトミビコ(ナガスネヒコ...蝦夷の豪族と思われる)を裏切り、イワレヒコ(神武天皇)は宿敵トミビコを倒し、天孫族はしだいに覇権を確立してゆきます。ヤマトの敵は同族の豪族たちと先住民である縄文人でした。朝廷の手になる記紀には、”野蛮な”原住民である熊襲、隼人、土ぐも、蝦夷の懐柔と制圧の歴史、統一への道が書かれています。
熊、蝦、蜘蛛それらの名前は征服者の側からの蔑称でした。先住の民たちがゆたかな精神文化を持っていたことはたしかです。けれども勇猛ではあったが素朴でだまされやすいひとたちであったのかもしれません。記紀、その後歴史のなかでも、宴会で飲ませだまし打ちにする、なかまどうしで戦わせる例がいくつもでてきます。「夷によって夷を制す」それが、ヤマトのやり方でした。神武東征のウカシ・エウカシの話、蝦夷の残党である阿部一族の最後もまた....。ヤマトがほしかったのは土地と資源(金属)でした。天皇の三種の神器は鉄でできていますね。名草姫が神武天皇に殺されたのも水銀と赤土(鉄)のためだったようです。先日、ネイティブアメリカンの歴史を読んだのですが、白人からだまされ土地を奪われ追い詰められてゆくネイティブアメリカンの姿と重なって胸苦しくなります。
まず、熊襲や土ぐもが降伏し、つぎに隼人が首を垂れました。血の海となるような徹底的な殺戮のあと、残されたものは勇猛なことから、奴隷として献上されたり、朝廷の衛士となったり、二級の民として渡来人と混血していったり、あるいはサンカ...山の民となったりしたようです。蝦夷は戦いながらしだいに北に追い詰められいきました。そして英雄アテルイの最後の戦い....のちに蝦夷の血をひく奥州藤原氏の戦いまで朝廷そして幕府のだまし討ちはつづくのです。一方蝦夷のほうでも分断されずに、仲間同士結束して戦っていれば、もっといい戦いができたことでしょう。
三世紀になって、神道は大きく変わります。縄文人が信仰していた神とヤマト朝廷がつくった神社神道、そののちの国家神道はおなじ神道といえど相当に違うものです。神社を建立したのはおもに、渡来人の子孫であり神となった天孫族、古代の天皇でした。神社の建築技術は前述の秦氏が伝えました。祭祀は新嘗祭のように稲作を中心にしておこなわれるようになりました。禊ミソギと祓ハラヒの概念が入りました。
祭祀をつかどっていた物部氏が追われたあと、中臣鎌足が修正をほどこした”大祓詞”には・・・・・荒振る神等をば 神問はしに問はし賜ひ 神掃ひに掃ひ賜ひて 語問ひし磐根 樹根立草の片葉をも語止めて・・・・「荒ぶる神を追い詰め 祓ったところ(昔はしゃべった)岩も樹も草もしゃべらなくなってしまった」....とあります。縄文の神、精霊たちは封印されてしまったのでしょうか....キリスト教に追われ、しだいにちいさな卑小なものに代わっていったケルトの精霊たちのように。
ヤマト朝廷は平定した豪族やはじめから住んでいたひとびとを手なづけるために古代の神の名を変え神社に祀り、非業の死に追いやったひとが祟らないように国津神として祀りました。.....出雲大社ではオオクニヌシはなぜか横を向いている...すなわちわたしたちは拝殿で拝むことはできないのです。諏訪神社に伝わる御柱祭は諏訪に逃げたオオクニヌシの息子タケミナカタを封じ込めるためのものだという説があります。起源はユダヤに遡るようです。菅原道真もそうでしたね。神もまた”鬼”であったのです。古代の神々については資料が消え次第にその出自がわからなくなっていきました。
けれども縄文人は負けてばかりではなかった....渡来人と混交しながら歴史のなかで輝く末裔がいます。西行や役の行者もそうです...武士の起こりは貴族から「夷(えびす)」といわれていたといいます。梅原猛は「武士は、もともと狩猟採集を業としていた縄文の遺民とみてまちがいないであろう。」といっています。.....たとえば織田氏や伊達氏はトミビコ(ナガスネヒコ)の血を引いているといわれます。武士たちは次第に市民権を得ていきました。武士道の死生観にはケルトにつながるものがあると思います。
一方体制に組み込まれず、山の民として残ったひとびとがいます。それはサンカと呼ばれるひとたちです。サンカは自分たちの文字を持っていて、それは神代文字に似ていたそうです。人里から離れ棲んでいたサンカは明治時代の弾圧で人里に降りやがてちりぢりになってゆきました。蝦夷の裔アイヌのひとびとは北海道開拓のもと、公民としてとりこまれてゆきます。そして神道は国家神道として、海の外へ土地や資源を求める侵略戦争の後ろ盾となりました。
さて、弥生顔はのっぺりして眉薄く弧を描き、一重まぶた、薄い唇...といわれています。平安時代の特権階級、貴族の顔立ちです。縄文顔とは髪豊か、眉濃く、二重まぶた...小鼻が張り、厚い唇、彫の深い顔立ち、性格は勇猛で、おひとよし...そして宝物を持っている!!。....それは昔話に出てくる鬼そのものです。鬼は退治され宝物は奪われます。ものがたりの鬼こそ敗残の神々、まつろわぬひとびとの零落したすがたなのです。しかしながら、勝った神はどうであろう、縄文の素朴なアニムズムから渡来人の手によって整えられ、仏教の影響を受け、陰陽五行をとりこんできたこの国固有の神道は万人を天につなぐ宗教として磨かれたでしょうか。選民意識は不要なものです。わたしは他のひとびとを苦しめたり抑圧したり戦争を起こしたりするものたちこそ、オニの中のオニ悪鬼だと考えます。
だいだらぼっち、手長、足長には蝦夷や縄文の匂いがします。宮崎駿監督がアニメ...モノノケ姫やセンとちひろで描いたのは森の文明...縄文とあたらしい文明の相克でありました。そして縄文の八百万の神々の復権でした。世界的に高い評価を得たのは単なるエキゾシティズムやうつくしさからだけでしょうか。ものがたりや登場する神々、もののけが共感を呼んだのではないでしょうか。語り手としてどうでしょう。鬼...精霊といったような存在に心惹かれませんか?....わたしは....惹かれます。まつろわぬひとびと....闘って去っていったひとびとに...踏み躙られたものたちに。太陽と月....真の闇に....生命が響きあう縄文の森に.....。
こうして縄文を考えてきて、わたしは感慨にとらわれます。わたしのなかに縄文の血とそれから渡来人・海人族と騎馬民族の血が受け継がれていることに...。そして、本来ひとがひとらしく生きる、天地とつながって生きる、しあわせに生きるための宗教がひとの道具に堕したとき起こることに思いを馳せます。....人間は果たして進化しているでしょうか...現実の象をみるかぎり強いものが弱いものを支配する、資源をもとめて奪いとるという構造は変わりません。けれども、すべてに神がやどるという世界観はわたしたちの血のなかにいまも息づいています。あなたのなかに神はいる、わたしのなかに神はいる...森や樹や花や草、動物たちの声に森羅万象の響きに大いなる声を聴きたいと思います。未来を信じたいと思います。
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