遠い森 遠い聲 ........語り部・ストーリーテラー lucaのことのは
語り部は いにしえを語り継ぎ いまを読み解き あしたを予言する。騙りかも!?内容はご自身の手で検証してください。
 



   とうとうカーブメソッドの講習がはじまりました。講師の日原先生はうつくしい銀髪、静かで威厳があってそれでいてとても若々しく年齢はさっぱりわかりません。直接トマティス博士の教えを受けられたそうです。

   日原先生の講義と指導は想像以上のものでした。いままで幾人かの師から学んだことがパズルのようにつながってゆきます。内観と同時に外に向かってひらいている....昴の演出家、永実子さんから学んだことです....客観的にすべてが見えている...高見の見、世阿弥のことばです。....わたしは内観はできますし、ひらくこともできますが、ときとして...辛いときなど自分のうちに沈んでしまう...聴き手を置いていってしまうことがあります。カーブの個別の実習のとき、日原先生から「一生懸命になると周囲が見えなくなるでしょう」と指摘されギクリとしました。”声は人格である”トマティスのことばのひとつです。

   川瀬先生..(天音さん)から学んだのは歌うとき、自分のうちがわをすみずみまでよく見る...内観....と宇宙とつながることでした。日原先生はこういいました。まず自分を愛すること、愛して愛して あふれる愛でまわりのひとをつつみなさい....それから宇宙とつながるのです。」カーブメソッドはヒーリングではなくとても科学的なメソッドなのですが、自分の声によって自分を元気にする、めぐりのひとを元気にする....その途すがら傷ついた自分を癒してもゆくのです。それは長い年月をかければ語りをつづけることでできることでもありますが、カーブは最短でそこまで連れていってくれるでしょう。

   「聴くことのできない音は発声できない」これがトマティスの基本の考え方です。だから自分の声をよく聴く....よい耳を持つことは必須です。よい耳とはどういう耳でしょうか、巷にあふれる情報...耳から入る情報を取捨選択する、必要な情報をしっかりつかみ不要なものは取り込まない耳なのだそうです。たとえば工事の騒音のなかからも高周波をとりだします。耳は音によってエナジーの90%を得ている残りの10%を食物から得ているといいます。ですから自分の声をよく聴くことがとても重要になる。カーブメソッドとは自分のほんとうの声とであう場所なのです。

   ご自分のほんとうの声との出会いでわたしたちのグループのおふたりが泣いてしまわれました。こころをひらくことなしに身体はひらけない....それは身も心もふるわせることばでした。身体と心と声....そして宇宙とのつながりを取り戻してゆく最初の日 わたしたちはトマティス体操を含めさまざまなたいせつなことを学びました。あとの三日がこよなくたのしみです。


   メンバーは11名、英語コース、リラクゼーションコース、音楽コースを受けた方です。英語コースを受けられたビジネスマンで朗読ワークショップの一期、先日の発表会で幸福の王子をなさった方がいました。休み時間、そのKさんという方が「おじいさんの声を聴いて僕は泣いてしまいました。もう一度あの声が聴きたいです。」と真顔でおっしゃるのです。....ネロの祖父の声が聴きたい......聴く人の心に響いた....それは語り手としてとてもうれしいことばでした。わたしはものがたりのなかでネロのおじいさんを生きたのです。カーブを学んだあともっとさまざまなことができるようになるでしょう、ひとりで、またさまざまな仲間たちと...。出会いが出会いを呼んで、閉じる関係ではなくてどんどんひろがってゆく。それはとてもしあわせなことです。

   地下の”葡萄の木”であたらしい友人とディナーをいただきながら語りあい、帰り書店で手にとったのはゴールズワージーの”林檎の木”でした。みずみずしい10代の頃のように、きんぽうげの咲き乱れる野が、金茶色の樫の新緑が、幹に苔むした林檎の古樹にたわわな真白な花が咲いているさまが脳裏にまざまざと浮かび、絶望するミーガンとともにわたしは街をさすらいました。胸が引き裂かれそうに痛くて.....カーブは長年のあいだに感受性に染み付いた汚れを洗い流してくれたのかもしれません。....見慣れたはずの駅構内はいつもより空間がひろく視野は遠くひろがって見えました。



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