遠い森 遠い聲 ........語り部・ストーリーテラー lucaのことのは
語り部は いにしえを語り継ぎ いまを読み解き あしたを予言する。騙りかも!?内容はご自身の手で検証してください。
 



    みなさま、おはようございます。こちらは雨が降っています。夫も長男も仕事に行きました。とても静かな時間です。きのう TELで友人ふたりと話しました。9/26に所沢で語りの会があるとか.....3年間研究セミナーで苦楽をともにした仲間たちの”今”が聴けるかもしれない。それはとてもたのしみです。

    きのう、中学校ではじめて”サイパンの青い灯、赤い灯”を語りました。このはなしは、17歳の時、戦時下のサイパンにわたった女性から実際に聴いたことを語りにしたものです。

    65年前の6月17日、アメリカ軍迎撃のため向かった、日本の機動部隊はマレーシア沖開戦で大敗を喫し、艦載機400器を失い、大本営はサイパン島を放棄しました。島のかたちがかわるほど米軍の爆撃を受け、補給路を立たれたサイパンの部隊は水、食糧、医薬品もなく最後まで戦いつづけ、負傷したものは自決。7月 9日 サイパン陥落。兵士30000人、現地の方多数、邦人民間人10000人が亡くなりました。そこで起こったことは筆舌に尽くしがたいことでした。引き上げ船に乗ることができたひとびとにも過酷な運命が待っていました。

    つらいおはなしですから、客観的に淡々と語りました。中学2年生の子どもたちはじっと聴いていました。.....憲法前文とまどみちおさんの詩でしめました。終わったあと、語れたという安堵感とこれでよかったのかなぁ....という気持ちがありました。その日は例会で、反省と打ち合わせのあと、司会の方が語ってほしい...とふってくださったので、語ってみました。聴いてくれたのは13名くらい、わたしよりも年若いおかあさんたちです。

    それはさっきの語りとはまったく違うものになっていました。聞き手にもよるのでしょうね......もともと一人称の語りなのですが、わたしは”そのひと”になって語っていました。.......7分にも満たない語りですが何人か泣いてくださった。.......これがわたしの語りかもしれない。投入する、没入する、それでいいかもしれない、とふと思いました。

    夕べのともだちとの会話で...「あなたの語りはものがたりというよりエネルギーだ」と聞いてそうなのかもしれないと思いました。「ものがたりは覚えてないのだが、強い印象がある」....というようなことはほかの方から聞いたことがあり、それは語り手として未熟なのだろうと思っていたのです。.....というのもわたしは、すきな語り手さんの語るものがたりは鮮明に覚えていて、すぐに語ることができるからです。

    たぶん、イタコやユタのような質があるのだろうな...と思います。それも語り手の本質のひとつでありましょう.....もうかっこつけないで、そろそろガードをとっぱらってできるかもしれません。客観性という内側のガード、なんと思われるだろうという外向きのガードがいままでありました.....すこしずつはずしていこうと思います。

    さて、太平洋戦争もまた、資源、権益、国益のためのたたかいでありました。太平洋戦争に負けたことで、日本は内実アメリカの支配のもとに65年あったわけです。.....実際にわたしがほんとうに気づいたのはごく最近のことなのですが......たしかに見かけの繁栄はあった.....アメリカ型のしあわせ.....車が一家に二台もあって、電化製品が溢れていて、明るいダイニングキッチン、冷蔵庫には冷凍食品がいっぱい、それは今の日本でそうめずらしい家ではありません。しかし家庭崩壊、子どもたちの無気力、多くの問題も生まれました。しあわせになったかどうかは別にしても、地球が支えられなくなったことはたしかです。

    わたしたちは98%リユースリサイクルの江戸という時代、文化を持っていました、日本の農業は山と一体化した循環型農業であったそうです。.....そろそろ日本のほんとうの資産、日本の文化と知恵にめざめてもいいころです。その文化は津波のように押し寄せてきた欧米文明の底に、まだ連綿と息づいています。

    さて、はなしをふたたび戻しましょう。まつたにみよこさんの著書のなかにも、戦争にまつわる”現代の民話”がありました。.....村中のカラスが南方に行った村の若いものたちの死をとむらうためにでかけていった話、息子が魂となって母のところに戻ってきた話、もうすこしたつと戦争の民話は直接の当事者のかたがたから聴けなくなってしまいます。(サイパンの青い灯、赤い灯のおばあちゃまは83歳でした)

    このブログを読んでくださる語り手のみなさま、あなたのまわりにきっとまだ、戦争の思い出を胸に抱いて生きている方々がおられます。.....どうか行ってはなしを聴いてあげてください。その方から受け取ってさしあげてください。そして保存してのちの方々につたえてつないでいってください、市井のあたりまえのひとびとのそれはほんとうの民話です。どこの国もひとも力でもって、他の国や他のひとびとを苦しめてはいけないのだ....とそんな心が自然にわいてくるものがたりです。

    

    



    

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )