東京三多摩地域から東京都心部を直結するJR東日本の中央線快速電車では、2006年度よりE233系が初めて導入され全車両がロングシート・トイレ設備無しの10両固定編成(T編成)と6両+4両分割対応のH編成の2種類で運用されていました。2004年以降から首都圏の中距離路線である高崎線・宇都宮線・常磐線などにもグリーン車サービスを順次拡大し、国鉄時代から東海道線・横須賀線・総武線快速にはグリーン車が連結されていたため、今日の首都圏に於いて唯一中央線快速は主要幹線でモノクラスの通勤仕様車のみが運用される路線となっていました。しかし、2015年2月4日のニュースリリースでグリーン車サービスを東京〜大月間と直通運転を行う青梅線立川〜青梅間に導入することが発表され、同時に導入区間の駅ホームを始めとした地上設備を12両編成対応とすることが明らかになりました。2018年4月3日にはトイレ設備の新設と、2023年度末からのサービス開始とより具体的な発表がされますが2022年度には世界的な半導体不足により車両製造スケジュールに遅れが見込まれるため1年程度の延期とされてしまいます(車両自体は2022年7月にサロE233-1+サロE232-1が初めて落成)。その後は各線での試運転を経て実に2年後の2024年10月13日より、来年3月ダイヤ改正まで普通車扱いで営業運転を開始しました。
8両+4両の12両編成となったE233系0番台H57編成。2007年度に旧東急車輛で製造され、前述のサロE233+E232のトップナンバー2両はこの編成に組み込まれました。トイレ新設工事は長野総合車両センターで2021年度にモハE233-257に施工され、同時にモハE233-857へ改番されている他、モハE232-257にはSC86型補助電源装置が設置されました。サロ組み込み直後となる2022年7月22日には8両編成で豊田〜国府津間で本線試運転を初めて実施し、普段の入線は有り得ない山手貨物線・東海道貨物線を走行したことで大きな注目を浴びたのは特筆されます。
まだグリーン車が連結されず10両編成を示すボードを正面に掲出しているT1編成。段階的に増結を実施するため10両と12両の混在は避けられないことから、モノクラス10両編成にはこのようなボードが掲げられるようになりました。社員お手製らしく、デザインは複数種確認されています。ちなみに余談ですがT編成は固定編成のため、グリーン車が連結されることにより山手線、横須賀・総武線のE235系11両を上回り、単独の固定編成では最長の12両貫通編成となります。
営業運転を開始したグリーン車の(2階席)車内。基本的に内装は横須賀・総武線快速向けのE235系サロと類似した雰囲気に。普通車扱いでの営業入りなので枕カバーは省略された状態です。この中央線向けサロでの大きな特徴は、グリーン車ながら乗降時間短縮のため普通車同様に両開き扉を備え、それに伴い窓配置や車端部の座席配置が見直されている点です。2階建て車両で両開き扉といえば、かつて常磐線に1両だけ試作されたクハ415-1901が思い出されますが、車種は違うとはいえ久々に採用された格好ですね。
車椅子対応トイレ設備が新設された普通車車内。H編成ではモハに設置され改番が発生しましたが、10両固定編成のT編成では6号車に連結されていたサハE233-500に設置の上で4・5号車のモハユニットと位置を入れ替える工事が発生しました。初めて改造を受けたのはT37編成で、2019年5月13日に出場しています。比較的停車駅が少ない中央特快の運用や、列車本数が減少し駅間距離も長くなる高尾〜大月間への乗り入れが存在するので、ありがたい変化といえるでしょう。
2025年3月改正までは無料の普通車扱いということで連日大盛況のようですが、今後もグリーン車連結編成は更に増加し狙って乗るのも容易になるでしょうから、是非一度は乗り心地を体感してみてはいかがでしょうか?