ウード奏者 松尾 賢 のブログ(アラディーン主宰者)

ウード奏者、ダラブッカ奏者、サズ奏者、歌手、アラブ、トルコのオリエンタル音楽演奏家・作曲家である松尾賢のブログ。

ウードの指板の修理(その3:エポキシ樹脂コーティング)

2019-09-15 13:13:15 | 音楽

さて、透明粘土の失敗後、エポキシ樹脂によって指板コーティングを決意。使用したのは日清クリスタルレジン。理由は少量の購入ができる事と、透明度の高さ、黄変がないこと、などをリサーチして、これに決定。

また、数々の「フレットレス・ベースの作成」を行った先輩方のブログを読みこなし、挑戦することに。

まず、必要なものを買い揃えないといけないのですが、渋谷の東急ハンズを利用したところ、必要なものがここで全て揃いました。

1.日清クリスタルレジン・セット(少量で十分)
2.デジタル計量器(0.1mgまで測れるもの)(必須)
3.ポリプロピレン板(型用)
4.マスキングテープ
5.マスカー
6.ノギス
7.水平器
8.万力
9.紙やすりセット(100番から~600番)
10.コンパウンド・セット

エレキベースだと、最大で1mm位「盛る」必要があるようですが、ウードだと0.3mm位で十分。

が、これが一度で成功することなく、何度が失敗を繰り返して、漸く成功したものの、結局はウレタン樹脂コーティングを行うことになりました。

1.エポキシ樹脂がくっつかないポリプロピレン板で型を作ります。この時、マスカー持ってたんだから全部覆えばよかったのですが…。後の祭りとなり、レジンが漏れて大変な事に。更には、レジンに絵の塗料が溶け出し、結局、指板の絵は辛うじて残ったものの、ぼんやり透けて見えることになしました。

 
 
 2.胴体が落ち込んでるので、型板がこんな風に浮き上がってしまっています。この辺りまでは予想通り。
 
 
3.レジンの漏れを予想してしっかりマスキング。これは成功しました。
 
 
4.透明粘土の型w。「失敗は成功の基」の言葉通り、これは必要とする胴体のレジンのパーツの寸法を測る事が出来、役立つことに


5.サウンドホール部分の型。
 
 
6.今回の修理で、一番必要とされる部分の型。これはも例外は最終的に成功しました。今思えば、マスカーでウード本体を完全に覆っておけば良かったのですが…。甘かった。
 
 
7.型の出来上がったところ。これはこれで良かったのだが。
 
8.残念ながら、この絵はこの鮮明さが失われることになるので、見納めとなりました。
 
 
9.弦巻の部分の型。これも結局はレジンが漏れ出し、大変な事に。何度も書きますが、マスカーで先に覆っておくべきでした。
 
 
10.レジンをデジタル測りで慎重に0.1mgまで測って、完璧な比率で作ったところ。プラスチック・カップが使えるので、これはお薦めです。結局、都合4回も、この作業を行うことになりましたw
 
 
11.水平器で、完璧に水平を保ちます。
 
 
12.ウードはボディが丸いので、縦、横の水平を保つのが難しいので、しっかり、縦横の水平を作ります。私はタオルをウードのボディ下に使って水平を作りました。
 
 
13.ポリプロピレン板の型を万力でしっかり締め付け、レジンを型に流し込みました。日清クリスタルレジンは気泡ができにくいとはいえ、やはり出来てしまうので、絵の長いライターをつかい、気泡の上からライターの火で熱すると、気泡は簡単に取れます。もちろん、レジンに直に火をつけないこと。(液体なので、引火はしませんが)
 
 
14.さて、硬化時間は24時間という事ですが、半日経って、ある程度硬化した所で、レジン漏れを確認したところ、やっぱり漏れてた!この段階では、柔らかいので、手ではがせるので、硬化前に漏れをはがします。早目に気付いてよかった!
 
 
15.表面板は綺麗に盛れたよう。
 
 
16.漏れたところ。これはまだ硬化前なので、手で簡単に剥がれるので、どんどん剥がしていきます。
 
17.こんな感じで剥がれます。
 
18.心配したとおり、ロゼッタ部分にも漏れ出し、サウンドホールから内部に漏れが!!結局ロゼッタを壊して胴体内に侵入したレジンを剥がす羽目に。
 
 
19.結局、こんな感じに(泣)。型を作って流す方法だと、レジンが厚くなりすぎ、削る作業が大変になるので、ネック側に流したレジンは剥がし、再度別の方法でレジン・コーティングを行う事にしました。


20.必要な部分は上手く残せたものの、型を使うと、表面張力で端っこの処が盛り上がってしまうので、成形が大変。
 
 
21.で、結局は、第1陣のレジンが完全に硬化した後、ネックをマスキングテープで再度マスキングし、刷毛でレジンを塗りましたが、これも結局、表面張力と指板の木が吸い込むためにムラが出来ます。
 
 
22.第2陣のレジンの硬化後。こんな風にムラが大きく残ります。


23.第3回のレジン塗布後。なぜかボディ近くの部分にムラができるので、硬化後、第4回のレジンを更に盛ります。
 
 
24.4回目のレジンで綺麗にコーティングが出来ました。つまり、ここまで5日を要しました(汗)
 
 
25.完全にコーディングしたと言っても、こんな風に表面は凸凹状態。
 
 
26.出っ張った処を、まずはヤスリで削ってならします。
 
 
27.その後は100番ぐらいの紙ヤスリで表面を均一にしていきますが・・・。
 
 
28.ある程度削っては、弦をはり、不具合がないか調整していきますが、ここが一番、根気の必要なところ。何度も行います。
 
 
29.結局、使えるところまで削ると、ネックの指板の部分のレジンがほぼ無くなってしまいました。残念!!


30.600番の紙ヤスリで綺麗にならしたところ。
紙ヤスリで指板を削る際には、右下に見えるようなサンディングブロックを必ず使ってください。個人的には、スティキット・サンディング・ブロックがおすすめ。
 
 
 

ウードの指板の修理(その2:失敗例)

2019-09-15 11:18:50 | 音楽

さて、エポキシ樹脂で盛り上げる工程の前に、もっと簡単な方法は無いか、調べてみて試した結果、失敗したことも書いてみたいと思います。

先に書いたように指板に絵を描いたが為に、
①、透明なモノで
②、指板を盛り上げなければならない、
という条件をクリアする為に、色々とリサーチした結果、透明粘土を使ってみようと思いつきました。

透明粘土ならば加工しやすいし、必要とあらば、上からゴルペ板(透明なプラスチックの板)を貼ればイイや、と気軽に考えていました。

結果は、先に書くと失敗。

まず、透明粘土は「シリコン」なので、指板に必要とされる木と同じ硬さにならない上、下の指板に接着しませんw

綺麗にペリペリと、剥がれましたw

更には、紙やすりなどで削れない、加工できない、という事で、全くの失敗。

が、この剥がれた指板が「型」となり、どの位の厚さまで盛れば良いのか、実感できたのは不幸中の幸いでした。

実際、その「型」は、最大で4mmも幅があり、どんだけ胴体側に指板が沈み込んでいたか判明したわけで、これはエポキシ樹脂でやるしかない、と決意させてくれた訳です。

その工程は、

1.先ずは先貼っていたゴルペ板はがし。
アイロンをゴルペ板(アリアの市販の物)の上にかけ、糊を熱すると簡単に剥がれます。アイロンかけないと、指板の木が剥がれますから、必ずアイロン、またはドライヤーで熱して糊を無力化しましょう。
熱した後のゴルペ板をはがす時はスクレーパーで指板を傷つけないように丁寧に慎重に行います。

2.綺麗にゴルペ板が剥がれました。

3.透明粘土。粘土板、コネ棒。そしてヘラを用意。

4.硬化剤を混ぜて大体の大きさになるまでコネ棒を使って貼り付け用の「指板」を作りました。

5.加工したい部分に貼り付けます。(結局は十分な接着力が無くて失敗しますが。)

6.コネ棒で必要な厚さになるまで伸ばします。(成功すれば、一番良かったのですが、残念ながら、これは結果的に失敗)

7.余分にはみ出た部分をヘラで切り取ります。

8.形も厚さも整ったところ。これがカチカチになって接着力あれば大成功だったのですが…。残念。

9.見てわかる通り、結構な厚さ。測ると4mm の厚さ。 

 10.これがカチカチのプラスチックになれば良かったのに。誰か発明してくれませんか?

(つづく)


ウードの指板の修理(その1)

2019-09-15 03:34:37 | 音楽

怒涛の日々が終わったので、ここらでウードの指板コーティングの苦闘の日々の記録を記事に残しておこうと思います。

事の起こりは、私がオーダーメイドで購入したトルコ製のウードの高音域の指板が、全く役立たずだった事が原因です。

トルコ・ウード、というより、ウードは元々、胴体上の指板ととネックの指板が同一の高さで製作されるのが一般的だったのですが、

20世紀後半あたりのアラブ世界で制作されるウードは、ネックと胴体の上に一枚の統一した指板を張るのが一般的になりました。

(写真は2007年に購入した伝統的なタイプのウード(トルコ製):見ての通り胴体からネックが出ているかのように制作されており、胴体部分には指板は無い。)

そのおかげで弦高もとても低くなり、弾きやすくなり、更に消耗品である指板の張替も容易になるという、画期的な進歩が起きた訳ですが、

(写真は私の初代7コース・ウード。21世紀型の進歩したウードと言ってもよいと思いますが、ご覧の通り、ネックと胴体部分の上に一枚の指板が張り付けてある形になっています。)

さて、私のオーダーしたウードは、胴体上に指板が貼ってあったものの、結局は、伝統的なトルコ・ウードのままで、購入した当時(2015年6月)から胴体部分が沈み込んでしまっていて高音域が弾けない状態でした。

なので、その部分にパテ埋めして指板の高さをネック部分と揃えた工事をして何とか高音域を弾きやすく仕上げた訳ですが、

結局、購入して4年経ち、胴体部分は更に沈み込んでいき、結局高音域が弾き辛くなっていきました。

この問題を解決するにはどうすれば良いか?

更にもう一つの問題は、前回パテ埋めした部分に絵を描いてしまった事。この上から木工パテで埋めしてしまうと、折角描いた絵が消えてしまいます。どうした物か?

実はこの問題は、装飾が凝っているウードについてもいえる事で、指板に凝った細工がしてあるウードだと、木工パテで盛り上げる、なんてことも、新たに指板を貼り付ける、という事もできません。

それらを全て解決する方法を、ずっと考え、様々リサーチしていましたが、結論として透明なエポキシ樹脂で指板を盛り上げる、という事を考え付いたわけです。

(つづく)


ライブ・オブ・アラディーン vol.1 後記

2019-08-05 23:04:06 | 音楽

そして、その7月28日(日)は「ライブ・オブ・アラディーン vol.1」でした。お越しになった皆さま、本当にありがとうございました!

結成以来、何度か営業系の仕事で演奏のみの仕事は勿論ありましたが、フルメンバーでの音楽のみのコンサートは初めてでした。

この企画を始めた時は、あれも、これも、と、色々な曲を演奏する予定でしたが、先にも書いたとおり、2019年7月は怒涛の忙しさで、結局、想像以上に時間は無いことが分かり、リリースしたファースト、セカンド・アルバムからピックアップした曲を中心としたライブとなりました。

ともあれ、そういった時間のない中で新曲の「天地吟遊(てんちぎんゆう)」を書き上げて、アラディーンの優秀なメンバーと共にアレンジして、この日に披露できて、とても嬉しかったです。

またセカンド・ステージは2枚目のアルバムを全曲通して演奏し、しかもペタシ君にドラムセットを叩いてもらい、こちらも大成功でした。

次回はいつかまだ決めていませんが、いずれこちらの企画もしっかりと続けていきたいと思います。

1部:
Magic Carpet
Lautari(ラウターリ)
The Night of Belly Dance and Music.
Essal Rohak
Gamil Gamal
Euroasia(ユーラシア)

2部:
不死鳥
悟空
月天子
天空の舞
水のほとりの物語
疾風
飛天
天地吟遊(新曲)
ステップロード

 

席に余裕あり!7月28日(日)は「ライブ・オブ・アラディーン」へ

2019-07-25 23:23:28 | 音楽

さて、今週末の日曜日、私の主催するオリエンタル音楽アンサンブル・アラディーンのライブ・コンサートがあります。

実はこのメンバーで音楽のみのコンサートを行うのは初めてかも(?)

更に、初の試みのアレンジも含め、新曲も披露します。

お時間のある方は是非ともお越しください。

まだまだ席があります~。

よろしくです!

●7月28日(日)
「ライブ・オブ・アラディーン」
@THUMBS UP(サムズ・アップ)
横浜市西区南幸2-1-22 相鉄ムービル3階
TEL : 045-314-8705
FAX : 045-323-2558
http://www.stovesyokohama.com/

※昼公演です。御間違いなく!!
Open/12:00~ 
Show/13:00~ 2stage
Charge/3,000yen(予約)/3,500yen(当日)
ご予約はお店に直接お願いいたします。

松尾賢/ウード
平井ペタシ陽一/ダラブッカ
安藤亮輔/ベース
佐々木絵実/アコーディオン
ハスィン・ジュベリ/ヴァイオリン