邦題は「ベルリンフィルと子どもたち」というドキュメンタリー映画をDVDで見ました。
http://www.cetera.co.jp/library/bp.html
一言で言うと「熱い」映画でしたね。
この映画のあらすじを書くと、250人もの、国籍も、年齢も、境遇も全く違う、どちらかというと問題児である子どもたちを6週間、ダンスの訓練をさせ、最終日にベルリン・フィルの演奏するバレエ曲に合わせてダンスの演技を行わせる「教育プロジェクト(2003年)」の記録映画です。
このドキュメンタリー、物を作る側、指導する側、教育に携わる側の視点から見ると、物凄く刺激になります。
この教育プログラムの発起人であるベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の指揮者、そして芸術監督である「サー・サイモン・ラトル」といい、振付師の「ロイストン・マルドゥーム」といい、画面の向こうから気迫がビンビンと伝わってきます。
印象的だったのは2点。
ひとつは、40年間もの長い間、ダンサー&振付師として活躍してきた「ロイストン・マルドゥーム」の、子供たちに対する指導へのゆるぎない確信と自信。
彼も自分の過去を振り返りつつ、世話をする子供たちを理解し、高めようと、様々な角度から接していき、最終的に、子どもたち自身、想像もしなかった演技を引き出すのです。
その指導の仕方が非常に素晴らしく、レッスンの中盤に子供達との質疑応答が冴えていて、
「楽しくやりたい」という甘えた子供達に、
「楽しく何故やる必要があるのか?それよりも大事なのは真剣さなんだ。」
「真剣である事を楽しむべきだ。」
と言い切る所とか、それを見ていて「もっと子供の主張を聞くべき!」という担任の教師と、「甘やかすのは出来るが、教えたいのは真剣になる事なんだ!」と言い切っていきます。
最終的に真剣に指導に徹するロイストンと、そのチームによって変化していく子供達が増え、彼がレッスンで予言した
「ただダンスをするだけじゃない。このダンスで、君達の人生を変えることができるんだ」
と主張したとおり、子どもたちは変化していくのです。
人間を動かすのは、「真剣」さと「熱意」なんですね、やっぱり。
そして2つ目は、サー・サイモン・ラトルの言った、
「人生には師が必要である」
と言ったところ。
「私には数人の師がいて、そのうちの一人は少なくとも5年間、私を正しい道に導いてくれた。」
「人生には色々な危機に遭遇するが、その時に聞きたくもない自分の非を指摘してくれる人が必要だ。」
「師がいない人は不運だ。師がいないことで、自分の可能性を引き出すチャンスが得られないからだ。」
と、彼の人生経験から得た答えを述べるのです。
やっぱり良い人生を送るには「師匠」は必要なんですね。
この二人に共通するのは、プロとして、そして第一人者として活躍してきた豊富な経験から得られている「確信」と、未来に対する責任感、そして「常に挑戦し続けていく姿勢」
そして、共同振付師のスザンナ・ブロウトンの
「自分の限界に甘えるのは非常に簡単」
と言い切るところ、「ものづくり」に携わる人間は肝に銘じなければならないですね。
いずれにしろ、このドキュメンタリー映画は、芸術に携わる人々にとって「心の栄養」になる素晴らしい映画だと思いました。
皆さんも機会があったら是非見てください。