ウード奏者 松尾 賢 のブログ(アラディーン主宰者)

ウード奏者、ダラブッカ奏者、サズ奏者、歌手、アラブ、トルコのオリエンタル音楽演奏家・作曲家である松尾賢のブログ。

7コース・ウード、入荷しました!

2020-06-07 23:54:46 | うんちく・小ネタ

私がお世話になっている新宿のトルコ文化センターですが、6月より通常営業を再開し、自粛していた私の伝統楽器クラスも通常通り再開いたしました。

勿論、新型コロナウイルス感染症対策である、手洗い、アルコール消毒、レッスン中の部屋の換気、マスク着用など、しっかり行っています。

さて、新宿トルコ文化センターに7コース・ウードが2台入荷しました。

メーカーは Ramazan Calay というトルコのメーカーです。
https://www.facebook.com/Ramazan-Calay-103866139677019/

到着した楽器を検品し、弦を調弦したり、弦巻の部分を調整してみましたが、とても良くできた楽器です。

弦高も低く、それでいて、しっかりと音が響き、ネックも7コース13弦の張力に負けないよう、しっかりと太く作られ、弦長も私がオーダーした通り60cmなので、トルコ・ウードですが、アラブ音楽もしっかり演奏できるようになっています。

トルコ・ウードは、弦長が58cm位で、通常、調弦をコンサートD、つまり実音より1音上げで調弦しますので、アラブ調弦(コンサートC)にすると、何となく音の張りが無くなる気がするので60cmにお願いいたしました。

これからウードを演奏してみたい、と思う方、この7コース・ウードはお薦めですよ!

興味のある方はこちらへ↓
https://turkeycenter.shop-pro.jp/?pid=151098347

さて、日本では、今のところ7コース・ウードをメインで演奏しているのは私だけで、ウード自体がマイナーな存在な上に、そのウードの中でも、まだまだマイナーな7コース・ウードについて、少し紹介いたします。

7コース・ウードは、伝統的な6コースのウード(例:トルコ調弦:1弦C、2弦G、3弦D,4弦A、5弦G(1オクターブ下)、6弦D(1オクターブ下))に対して、更に4度高いF弦を加えたウードです。

このF弦を加えた事により、伝統的なウードの一般的な演奏可能音域である2オクターブ半をはるかに上回る3オクターブ半の音まで演奏できるようになりました。

7コース・ウードは20世紀初頭から制作されていたらしいのですが、普及する事はありませんでした。

以下のYouTube のリンクでは、その7コース・ウードを弾いているパレスチナ人マエストロの、ローヒー・アル・ハンマーシュ氏(Rawhi Khammash (1923-1998) روحي الخماش)の貴重な映像が見られます。

روحي الخماش وسماعي حجاز كار كرد

الموسيقي الفلسطيني روحي الخماش يعزف سماعي حجاز كار كرد من تأليفه في ال...

youtube#video

 

ローヒー・アル・ハンマーシュ氏は、1948年にイラクに移住して1998年にイラクで没したそうですが、この映像で演奏している曲は「サマーイ・ヒジャーズカール・クルド」という難易度の高い器楽曲です。

8分の10拍子で始まり、後半、3拍子、16分の10拍子のジュルジュンナというリズムで盛り上がり、8分の10拍子に戻るという形式ですが、

ウードで「ヒジャーズカール・クルド」という音階(C、D♭、E♭、F、G、A♭、B♭、C)を正しい音程で弾くのはとても難しく、更に高音域を使うので、挑戦し甲斐のある曲ですが、

7コース・ウードで弾くと、その高音域の部分は、割と簡単に演奏できますw。

ともあれ、

20世紀後半から、イラク人演奏家のナスィール・シャンマ氏のアクロバティックな演奏がアラブ世界だけでなくヨーロッパでも注目されるようになると、

イラク・スタイルの調弦(イラク調弦:1弦F、2弦C、3弦G、4弦D、5弦A、6弦F(1オクターブ下)方法と、繊細で高音弦を多用するテクニカルな演奏スタイルがアラブ世界で流行するようになります。

この辺りはジャズ・ギターやロック・ギターの影響があるように思えるのですが、ともあれ、

ウードは伝統的に低音弦を多用した演奏方法が魅力の一つであり、イラク調弦ではその魅力を失う事は否定出来ません。

そこで、注目され直したのが7コース・ウードです。

イラク・スタイルの高音弦を多用する演奏スタイルも、伝統的な低音弦を交えた演奏スタイルも、どちらも演奏出来る上、

更に演奏音域が広がった事で、ウードの演奏技術を大きく開く可能性も秘めています。

中東では楽器の王様であるウード。7コース・ウードは、伝統的なオスマン・トルコ時代の器楽曲も、ムニール・バシールに代表される現代イラク・スタイルにも、どちらにも対応できる「ウードの王様」と形容しても過言ではないでしょう。

7コース・ウードの調弦は、1弦F、2弦C、3弦G、4弦D、5弦A、6弦F(1オクターブ下)、7弦C(1オクターブ下)となります。

7コース・ウードに挑戦したい!試奏してみたい、等のお問い合わせはトルコ文化センターへ。

その場合は、必ず私をご指名ください。よろしくお願いいたします。

トルコ文化教室各種体験・入会お申し込み | トルコ文化センター

 



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