ACMA(Amateur Classical Musicians Association)が発足して早11年目。
発足人として、ずっと中心で頑張ってきたアルベルトが、おかあさんの介護と新しい仕事の動きが広範囲になったという事情で、プレジデントの役割を他の人に受け持ってもらいたいと言い出した。
会が始まった当初から5年近く、アルベルトのおかあさんは、月一でやっていた定例コンサートにいつも来てくれて、わたしたちの演奏を心から楽しんでくれていた。
スパニッシュ訛りの英語で褒めちぎられて、苦笑いすると、「わたしの言うことを信じなさい。あなたは本当にいい演奏をするんだから」と、手首をぎゅっと掴んで離さなかった。
10年ひと昔と言うけれど、ほんとにあっという間の10年で、そのうちの3年間は、指の関節の病気で演奏できなくなってかなり落ち込んでしまい、役員だというのにいろんなことをサボったりした。
誰からも文句を言われないのをいいことに、ぼんやりと月日を過ごしていたある日、アルベルトからEメールが送られてきた。
「別に辞めてもいいんだよ」
甘えていたことにハッと気がついた。
やっと、なんとかしないとって思えるようになった。
『へバーデン症候群』に詳しい医師を探し、訪ねて行って、カフェインと砂糖とアルコールを一切摂らないようにと言われた。
それから半年後、指の痛みがだんだんと減り、ピアノを弾く時の必需品だったテーピングと痛み止めクリームが用無しになった。
互いのグループの発展のためにと提携したOrchestra of St. Luke'sが建てた、DiMenna Center。
ここで、ACMAの定例コンサートやオディションや役員ミーティングなどを行なってきた。
今やニューヨークにおけるクラシック音楽の拠点、などと言われているのだけど、ACMAのメンバーの中で、ここのホールを気に入っている人はほとんどいない。
多分ゼロだと思う。
生み出した音が瞬間に、輝きも勢いも骨抜きにされてしまうので、自分の演奏が耳に入ってくる頃には、ほとんど死にかけている。
けれども奇妙なことに、客席にいると、そこまで悲惨な響きではない。
いずれにせよ、演奏者側からすると非常にストレスがかかり、喜びや興奮を得るのが難しいホールなので、できたら他の場所と契約したいと、ずっと前から思っていたら、
今年から借料がぐんと上がり、堂々とサヨナラが言えることになった。
そこで役員が集まって、マンハッタン内にある小規模の演奏ホールのうち、どこがわたしたちに一番合うか、アルベルトの後任は誰がいいか、などを話し合った。
会議がそろそろ終わろうという時に、アルベルトが慌ててこう言った。
「もう一つ大事なことを忘れてた。ACMAオーケストラの第二指揮者を決めたかったんだ」
え?指揮者?
やりたいやりたいやりたい!!
突如、お腹の底からフツフツと湧き上がってきた気持ちを抑えきれず、手を挙げてしまった。
「え?まうみ、どうしたの?」
「あの、わたし、指揮やりたいんですけど…」
「え?まうみ、指揮できるの?やったことあるの?」
「はい!」
思いっきりのハッタリなんである…。
なぜかちっちゃい頃から、いつか指揮者になりたいと思ってただけで、経験といえば、ブラスバンドの小規模編成のパート別練習とかでやったのと、当時のボーイフレンドが指揮をやってたぐらい。
でも、言い出しちゃったからにはもう後には引けない。
「じゃあ、来月の練習から出てきてくれる?モーツァルトとベートーベンのシンフォニーの総譜を、まず家に送るから、それをしっかり読み込んどいてね」
「はい、わかりました!」
って…おいおい、3月は自分の演奏の仕上げの月だっちゅうの?!
意外な展開に大興奮して外に出た。
夫と待ち合わせした場所までテクテク歩いていると…いつかここで、中古のピアノが買えたらいいなあ…。
リンクの調整中。
ごちそうさま!
レストランの前の垣根のてっぺんに、ふっくら雀たちが休憩してた。
寝る前に読む本を買いに、超〜久しぶりにBOOK-0FFへ行く。
いつもは避けて通るタイムズスクエア付近だけど、なぜかこの日は空いていた。
家に戻り、猫たちに夕飯を与え、朝から浸け込んでおいた大豆の様子を見、寝支度のために洗面所の鏡を開いた。
急に、指揮なんかできるかな?と不安になって、鏡の前で真似事をしてみた。
相手はニューヨーカーのツワモノたち…。
英語の問題もある。
六十の手習いとしては、なかなか挑戦し甲斐があるってもんだ。
翌日の朝、たっぷりと水を吸い込んだ大豆を炊き始める。
いつものごとく、まるでメレンゲみたいな灰汁が、すくい取ってもすぐに出てきて、しばらくはコンロの前から離れられない。
灰汁取りが終わり、火を弱め、みんなが気持ちよく作業できるよう部屋の掃除をした。
今回は、のんちゃんとあっこちゃん、それから近所のさわみちゃんと一緒の味噌づくり。
さっそく麹と塩を混ぜ合わせる作業に入る。
のんちゃんと一緒に来た孫のフォックスくん、麹の塩切りをすると出てくるとても細かい粒が煙たいのか、台所に入るなり口を手でふさいで、とっとと居間の方に逃げてしまうのが可笑しかった。
あっこちゃんの大豆をもうちょっと柔らかくする必要があったので、仕上がるまでの時間に、みんなが持ってきてくれた美味いもんをいただくことにした。
のんちゃんはスクワッシュパンプキンのスープと農場からのサワークラウト。
あっこちゃんはキムチと納豆。
さわみちゃんはおはぎ(わたしが砂糖を摂らないからと、ココナッツシュガーを使ってくれた)
ぜ〜んぶ手作りの美味いもん!すご〜く感動した!
なのに写真を撮るのを忘れてしまって…み〜んなお腹の中…残念!!
今回はそれぞれの家で大豆の下準備をしてきてもらったので楽々。大豆潰しは粘土遊びみたいで楽しい!
よっしゃ〜、最後の仕上げ、大豆と塩切り麹を混ぜるぞ!
この作業をしているといつも、手がどんどんツルツルしっとりしてくる。
お味噌屋さんの手はきっと、すごくきれいなんだろうな。
あっこちゃんの電車待ちの間に、上手に一人遊びしていたフォックスくんと遊ぶ。
持ち物まで可愛い。
怪獣になったのんばあちゃんから逃げるフォックスくん。
彼女たちと入れ違いに、グラフトンから帰ってきた歩美ちゃんが来た。
彼女の車をうちのドライブウェイに停めていたからと、産みたてのアヒルさんの卵と新鮮な生の牛乳を、お土産に持って来てくれた。
で、でかい…。
ありがたく頂戴して、目玉焼きを作ろうと割ったら、双子ちゃんだった。
美味しゅうございました。ありがとう!
発足人として、ずっと中心で頑張ってきたアルベルトが、おかあさんの介護と新しい仕事の動きが広範囲になったという事情で、プレジデントの役割を他の人に受け持ってもらいたいと言い出した。
会が始まった当初から5年近く、アルベルトのおかあさんは、月一でやっていた定例コンサートにいつも来てくれて、わたしたちの演奏を心から楽しんでくれていた。
スパニッシュ訛りの英語で褒めちぎられて、苦笑いすると、「わたしの言うことを信じなさい。あなたは本当にいい演奏をするんだから」と、手首をぎゅっと掴んで離さなかった。
10年ひと昔と言うけれど、ほんとにあっという間の10年で、そのうちの3年間は、指の関節の病気で演奏できなくなってかなり落ち込んでしまい、役員だというのにいろんなことをサボったりした。
誰からも文句を言われないのをいいことに、ぼんやりと月日を過ごしていたある日、アルベルトからEメールが送られてきた。
「別に辞めてもいいんだよ」
甘えていたことにハッと気がついた。
やっと、なんとかしないとって思えるようになった。
『へバーデン症候群』に詳しい医師を探し、訪ねて行って、カフェインと砂糖とアルコールを一切摂らないようにと言われた。
それから半年後、指の痛みがだんだんと減り、ピアノを弾く時の必需品だったテーピングと痛み止めクリームが用無しになった。
互いのグループの発展のためにと提携したOrchestra of St. Luke'sが建てた、DiMenna Center。
ここで、ACMAの定例コンサートやオディションや役員ミーティングなどを行なってきた。
今やニューヨークにおけるクラシック音楽の拠点、などと言われているのだけど、ACMAのメンバーの中で、ここのホールを気に入っている人はほとんどいない。
多分ゼロだと思う。
生み出した音が瞬間に、輝きも勢いも骨抜きにされてしまうので、自分の演奏が耳に入ってくる頃には、ほとんど死にかけている。
けれども奇妙なことに、客席にいると、そこまで悲惨な響きではない。
いずれにせよ、演奏者側からすると非常にストレスがかかり、喜びや興奮を得るのが難しいホールなので、できたら他の場所と契約したいと、ずっと前から思っていたら、
今年から借料がぐんと上がり、堂々とサヨナラが言えることになった。
そこで役員が集まって、マンハッタン内にある小規模の演奏ホールのうち、どこがわたしたちに一番合うか、アルベルトの後任は誰がいいか、などを話し合った。
会議がそろそろ終わろうという時に、アルベルトが慌ててこう言った。
「もう一つ大事なことを忘れてた。ACMAオーケストラの第二指揮者を決めたかったんだ」
え?指揮者?
やりたいやりたいやりたい!!
突如、お腹の底からフツフツと湧き上がってきた気持ちを抑えきれず、手を挙げてしまった。
「え?まうみ、どうしたの?」
「あの、わたし、指揮やりたいんですけど…」
「え?まうみ、指揮できるの?やったことあるの?」
「はい!」
思いっきりのハッタリなんである…。
なぜかちっちゃい頃から、いつか指揮者になりたいと思ってただけで、経験といえば、ブラスバンドの小規模編成のパート別練習とかでやったのと、当時のボーイフレンドが指揮をやってたぐらい。
でも、言い出しちゃったからにはもう後には引けない。
「じゃあ、来月の練習から出てきてくれる?モーツァルトとベートーベンのシンフォニーの総譜を、まず家に送るから、それをしっかり読み込んどいてね」
「はい、わかりました!」
って…おいおい、3月は自分の演奏の仕上げの月だっちゅうの?!
意外な展開に大興奮して外に出た。
夫と待ち合わせした場所までテクテク歩いていると…いつかここで、中古のピアノが買えたらいいなあ…。
リンクの調整中。
ごちそうさま!
レストランの前の垣根のてっぺんに、ふっくら雀たちが休憩してた。
寝る前に読む本を買いに、超〜久しぶりにBOOK-0FFへ行く。
いつもは避けて通るタイムズスクエア付近だけど、なぜかこの日は空いていた。
家に戻り、猫たちに夕飯を与え、朝から浸け込んでおいた大豆の様子を見、寝支度のために洗面所の鏡を開いた。
急に、指揮なんかできるかな?と不安になって、鏡の前で真似事をしてみた。
相手はニューヨーカーのツワモノたち…。
英語の問題もある。
六十の手習いとしては、なかなか挑戦し甲斐があるってもんだ。
翌日の朝、たっぷりと水を吸い込んだ大豆を炊き始める。
いつものごとく、まるでメレンゲみたいな灰汁が、すくい取ってもすぐに出てきて、しばらくはコンロの前から離れられない。
灰汁取りが終わり、火を弱め、みんなが気持ちよく作業できるよう部屋の掃除をした。
今回は、のんちゃんとあっこちゃん、それから近所のさわみちゃんと一緒の味噌づくり。
さっそく麹と塩を混ぜ合わせる作業に入る。
のんちゃんと一緒に来た孫のフォックスくん、麹の塩切りをすると出てくるとても細かい粒が煙たいのか、台所に入るなり口を手でふさいで、とっとと居間の方に逃げてしまうのが可笑しかった。
あっこちゃんの大豆をもうちょっと柔らかくする必要があったので、仕上がるまでの時間に、みんなが持ってきてくれた美味いもんをいただくことにした。
のんちゃんはスクワッシュパンプキンのスープと農場からのサワークラウト。
あっこちゃんはキムチと納豆。
さわみちゃんはおはぎ(わたしが砂糖を摂らないからと、ココナッツシュガーを使ってくれた)
ぜ〜んぶ手作りの美味いもん!すご〜く感動した!
なのに写真を撮るのを忘れてしまって…み〜んなお腹の中…残念!!
今回はそれぞれの家で大豆の下準備をしてきてもらったので楽々。大豆潰しは粘土遊びみたいで楽しい!
よっしゃ〜、最後の仕上げ、大豆と塩切り麹を混ぜるぞ!
この作業をしているといつも、手がどんどんツルツルしっとりしてくる。
お味噌屋さんの手はきっと、すごくきれいなんだろうな。
あっこちゃんの電車待ちの間に、上手に一人遊びしていたフォックスくんと遊ぶ。
持ち物まで可愛い。
怪獣になったのんばあちゃんから逃げるフォックスくん。
彼女たちと入れ違いに、グラフトンから帰ってきた歩美ちゃんが来た。
彼女の車をうちのドライブウェイに停めていたからと、産みたてのアヒルさんの卵と新鮮な生の牛乳を、お土産に持って来てくれた。
で、でかい…。
ありがたく頂戴して、目玉焼きを作ろうと割ったら、双子ちゃんだった。
美味しゅうございました。ありがとう!