友人みっきぃの一人娘琴ちゃんが、こんなすてきなモビールを作ってくれた。
作者曰く、キモ可愛い惑星モビールだそうだ。
気持ちがうつうつとしてくると、椅子をぐるりと回して、ぼーっとモビールを見る。
そうするとなんだか気持ちが落ち着いてきて、またちょっくら続けるかと、中断している作業に取りかかれたりする。
ありがとう、琴ちゃん。
気持ちが大きく揺さぶられて、なかなか平常心に戻れない日が続いていた。
気持ちと一緒に、体の芯も揺さぶられたのか、微熱がずっと続いたりした。
村上春樹風に言うと、深くて薄暗い森の中だったり、深くて暗い井戸の中だったり、そういう空間で抱え込んだ膝小僧におでこを乗せたまま、息の音が聞こえるぐらいの静けさの中に身を置いて、
悲しいのやら悔しいのやら、恐ろしいのやら苦しいのやら、どう表したらいいのかわからない暗い気持ちから抜けられないまま、どんよりとした重い体を引きずりながら、毎日を過ごしていた。
そういう母親を知ってか知らずか、長男くんが急に、
「なあ、なんか日本の有名なピアニストが、カーネギーで演奏するらしいで」と、ポツリと話してくれた。
「え?誰?」
「名前は知らんけど、目が見えへん人らしい」
もしかして、もしかして、それは辻井伸行さんのことではないだろうか?
モヤがかかってた頭に、いきなりスイッチが入った。
ずっと休止中だったパソコンで一気に調べた。
やっぱり辻井伸行さんだった。
体調を考えると、出かけて行くことはもちろん、最後まで持つかどうか自信が無かったけど、とにかく行こうと決めた。
急いで親友ののりこさんに電話をかけて、一緒に行かないかと誘った。
席は3階の一番前。
もちろん遠く離れているけれど、カーネギーのホールはどこに座ってても音が良いので心配しなかった。
プログラムをもらって席に座り舞台を観ると、あれれ?なんでピアノが無いんだろう…。
フェイスブックのタイムラインに、この舞台の写真を撮って載っけたら、幸雄さんに「あれ?ピアノは?」って早速聞かれたし…。
まさか、辻井さんだけの特別仕様で、ピアノと一緒に舞台に出てくるんだろうか…などと、後から考えたらすごくアホなことを想像しながらプログラムを開いた。
あれ?1曲目は室内管弦楽団だけで演奏するみたいだ。
しかも今夜の演奏会は、どうやらこのオルフェウス室内管弦楽団が主体っぽい。
カーネギーホールのウェブサイトには、辻井さんだけの写真がデカデカと載っていたので、てっきり彼のソロ演奏の中にピアノコンチェルトが混じっているのだろうと思い込んでいた。
だからちょっとがっかりもして、けれども初めて聴く室内管弦楽団の演奏にも興味があった。
曲は、ARVO PARTのFratres。
聴いたことがないオーケストラによる聴いたことがない曲。
Arvo Pärt - Fratres
始まりから1分半ぐらいのところからのピアニッシモに、心の根っこを温められたような気がした。
そして涙があふれてきた。
この室内管弦楽団には指揮者がいない。
『1972年に、チェリストのジュリアン・ファイファーが中心となって、ニューヨークで結成された。
彼らの最大の特徴は、各セクション内の配置を曲ごとに換えて、リーダーシップ的な役割を順番に分担し、指揮者が行なう解釈上の決定を合議制で行なっている。
その結果、一人ひとりの力量は高いレベルで均一がとれ、演奏は高度に緻密でありながら自発性に富む』
https://tower.jp/artist/1338917/オルフェウス室内管弦楽団より
室内オーケストラに革命をもたらした、1972年にニューヨークで結成されたオルフェウス室内管弦楽団。
そのオーケストラと一緒に、辻井さんは練習を重ねた。
Orpheus 18-19: Nobuyuki Tsujii at Carnegie Hall
やっとピアノが舞台に運ばれてきた。
辻井さんが演奏したのは、ショパンのピアノコンチェルトの2番へ短調。
写真撮影は厳しく禁止されているのだけど、なんと10席離れたところに座っていたのりこさんが撮ってくれていた!?
辻井さんは、テレビ画面の中と同じように体を揺らし、オーケストラが織り込む音の色彩を感じながら、彼の音楽を全身で演奏していた。
月並みの言葉しか出てこなくて歯がゆいけれど、本当に素晴らしかった。
そしてやっぱり涙が出た。
コンチェルトが終わり、3度目のカーテンコールの後、突然椅子に座ったと思ったら、いきなりジャズ風の曲を演奏し始めた。
それはもう超絶技巧の演奏で、目を丸くして聴いてると、勢いよく弾き終わった彼がまた、客席の方にお辞儀をして、それを見ながら拍手をしていると、楽しくなって笑った。
でも、なんで今頃アンコール曲を弾くんだろう…。
そして再びプログラムを確認する。
二部はオルフェウス室内管弦楽団のみで演奏する、チャイコフスキーのチェンバー・シンフォニー第1番なのだった。
休憩時間にこんなものを見つけた。大量の咳止めののど飴。ご自由にどうぞ!
辻井さんの演奏を聴きに来たつもりが、聞かず知らずの室内管弦楽団が主だったものだったのだけど、もういっぺんにファンになってしまった。
心をわしづかみされた、という表現が一番合うと思う。
微熱とコントロール不可能な発汗が治ったわけではなかったけれど、心がとても慰められた。
久しぶりに会ったのりこさんとの時間も、わたしに元気をくれた。
音楽と友だち、やっぱりいいもんだなあ。
作者曰く、キモ可愛い惑星モビールだそうだ。
気持ちがうつうつとしてくると、椅子をぐるりと回して、ぼーっとモビールを見る。
そうするとなんだか気持ちが落ち着いてきて、またちょっくら続けるかと、中断している作業に取りかかれたりする。
ありがとう、琴ちゃん。
気持ちが大きく揺さぶられて、なかなか平常心に戻れない日が続いていた。
気持ちと一緒に、体の芯も揺さぶられたのか、微熱がずっと続いたりした。
村上春樹風に言うと、深くて薄暗い森の中だったり、深くて暗い井戸の中だったり、そういう空間で抱え込んだ膝小僧におでこを乗せたまま、息の音が聞こえるぐらいの静けさの中に身を置いて、
悲しいのやら悔しいのやら、恐ろしいのやら苦しいのやら、どう表したらいいのかわからない暗い気持ちから抜けられないまま、どんよりとした重い体を引きずりながら、毎日を過ごしていた。
そういう母親を知ってか知らずか、長男くんが急に、
「なあ、なんか日本の有名なピアニストが、カーネギーで演奏するらしいで」と、ポツリと話してくれた。
「え?誰?」
「名前は知らんけど、目が見えへん人らしい」
もしかして、もしかして、それは辻井伸行さんのことではないだろうか?
モヤがかかってた頭に、いきなりスイッチが入った。
ずっと休止中だったパソコンで一気に調べた。
やっぱり辻井伸行さんだった。
体調を考えると、出かけて行くことはもちろん、最後まで持つかどうか自信が無かったけど、とにかく行こうと決めた。
急いで親友ののりこさんに電話をかけて、一緒に行かないかと誘った。
席は3階の一番前。
もちろん遠く離れているけれど、カーネギーのホールはどこに座ってても音が良いので心配しなかった。
プログラムをもらって席に座り舞台を観ると、あれれ?なんでピアノが無いんだろう…。
フェイスブックのタイムラインに、この舞台の写真を撮って載っけたら、幸雄さんに「あれ?ピアノは?」って早速聞かれたし…。
まさか、辻井さんだけの特別仕様で、ピアノと一緒に舞台に出てくるんだろうか…などと、後から考えたらすごくアホなことを想像しながらプログラムを開いた。
あれ?1曲目は室内管弦楽団だけで演奏するみたいだ。
しかも今夜の演奏会は、どうやらこのオルフェウス室内管弦楽団が主体っぽい。
カーネギーホールのウェブサイトには、辻井さんだけの写真がデカデカと載っていたので、てっきり彼のソロ演奏の中にピアノコンチェルトが混じっているのだろうと思い込んでいた。
だからちょっとがっかりもして、けれども初めて聴く室内管弦楽団の演奏にも興味があった。
曲は、ARVO PARTのFratres。
聴いたことがないオーケストラによる聴いたことがない曲。
Arvo Pärt - Fratres
始まりから1分半ぐらいのところからのピアニッシモに、心の根っこを温められたような気がした。
そして涙があふれてきた。
この室内管弦楽団には指揮者がいない。
『1972年に、チェリストのジュリアン・ファイファーが中心となって、ニューヨークで結成された。
彼らの最大の特徴は、各セクション内の配置を曲ごとに換えて、リーダーシップ的な役割を順番に分担し、指揮者が行なう解釈上の決定を合議制で行なっている。
その結果、一人ひとりの力量は高いレベルで均一がとれ、演奏は高度に緻密でありながら自発性に富む』
https://tower.jp/artist/1338917/オルフェウス室内管弦楽団より
室内オーケストラに革命をもたらした、1972年にニューヨークで結成されたオルフェウス室内管弦楽団。
そのオーケストラと一緒に、辻井さんは練習を重ねた。
Orpheus 18-19: Nobuyuki Tsujii at Carnegie Hall
やっとピアノが舞台に運ばれてきた。
辻井さんが演奏したのは、ショパンのピアノコンチェルトの2番へ短調。
写真撮影は厳しく禁止されているのだけど、なんと10席離れたところに座っていたのりこさんが撮ってくれていた!?
辻井さんは、テレビ画面の中と同じように体を揺らし、オーケストラが織り込む音の色彩を感じながら、彼の音楽を全身で演奏していた。
月並みの言葉しか出てこなくて歯がゆいけれど、本当に素晴らしかった。
そしてやっぱり涙が出た。
コンチェルトが終わり、3度目のカーテンコールの後、突然椅子に座ったと思ったら、いきなりジャズ風の曲を演奏し始めた。
それはもう超絶技巧の演奏で、目を丸くして聴いてると、勢いよく弾き終わった彼がまた、客席の方にお辞儀をして、それを見ながら拍手をしていると、楽しくなって笑った。
でも、なんで今頃アンコール曲を弾くんだろう…。
そして再びプログラムを確認する。
二部はオルフェウス室内管弦楽団のみで演奏する、チャイコフスキーのチェンバー・シンフォニー第1番なのだった。
休憩時間にこんなものを見つけた。大量の咳止めののど飴。ご自由にどうぞ!
辻井さんの演奏を聴きに来たつもりが、聞かず知らずの室内管弦楽団が主だったものだったのだけど、もういっぺんにファンになってしまった。
心をわしづかみされた、という表現が一番合うと思う。
微熱とコントロール不可能な発汗が治ったわけではなかったけれど、心がとても慰められた。
久しぶりに会ったのりこさんとの時間も、わたしに元気をくれた。
音楽と友だち、やっぱりいいもんだなあ。