わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

乾燥のメカニズム 3

2010-04-07 21:52:44 | 失敗と対策
「乾燥のメカニズム」の話を続けます。

8) 乾燥と、収縮と、強度について

  ① 素地は、製作直後から、収縮が始まりますが、それに連れて、強度が増す訳では、ありません。

    乾燥で、収縮が完了するまでは、強度は、若干強く成りますが、あまり、変わりません。
  
  ② 素地に含まれる水分が、1%程度に成ると、急激に、強度が増してきます。

    特に1%以下に成ると、格段に、強度が増します。

    水分5%の、粘土の強度は12kg/平方cm程度、1%で、13Kg/平方cm程度です。

    尚、自然乾燥では、1%程度が限度です。

   ・ 乾燥器や、加熱により、更に乾燥すると、0.6%程度(約70℃)で、20kg、80℃で22kg

     110℃で、25kg、 200℃で、30Kg程度の、強度に成ります。

  ③ 素地の乾燥は、次の様に進みます。

   ) 粘土と粘土の粒子の、隙間にある水(気孔水=きこうすい)が、蒸発して、収縮が、始まります。

   ) 気孔水が、無くなると、収縮は終わります。気孔水は、容易に取り除く事が、できます。

   ) 更に乾燥すると、粒子の周りを、取り巻いている水(水幕)が、除かれます。

      最後に、粒子に強く、吸着している、吸着水が無くなります。

      (この合計の水分量は、1%以下です。)

      水幕と、吸着水は、中々、取り除き難い物です。(素焼によって、取り除きます。)

   ) 素地の収縮は、蒸発した水の容積と、同じに成ります。

      水分が、蒸発してしまうと、幾ら乾燥しても(素焼しても)、縮む事は、ほとんどありません。

   ) 水分が抜けると、粒子同士が接近し、やがて、粒子同士がくっ付き、収縮は止まり、

      気孔が出来て、空間が発生します。

 ④ 可塑性と収縮と強度について

   ) 素地の粒子が、細かい程、保水性も大きく、可塑性が増します。

      一般に、粘土の粒子の大きさは、10μ(ミクロン)以下~0.1μ以上で、この混合物です。

    a) 粒子の細かさと、乾燥収縮率(%)、乾燥強度(kg/平方cm)、可塑性について

      細かさ:8.5μで、収縮率:0、強度:0.33、可塑性:0(無し)

          2.2      :0、      :1.0      :0

          1.1      :0.6      :4.7      :4400

          0.55     :7.8      :7.2      :6300

          0.45     :10.0     :9.3      :7600

          0.28     :23.0     :32       :8200

      以上の様な、データが有ります。

     一般に、陶芸で使われる粘土は、縮み率が、12~13%ですので、粒子の平均細かさは、

     約0.3μ程度と、推定できます。

   ) 「ねかし」た粘土ほど、可塑性が増します。

      即ち、土を寝かすと、微生物が発生し、土中の有機物を分解し、腐食酸(フミン酸)を生じ、

      粘土粒子の表層に作用し、粒子と水分の分散がよくなり、潤滑性と、保水性が大きく成ります。

   ) 乾燥した時、微細な粒子ほど、縮みも大きく、強度も増します。

以上で「乾燥のメカニズム」の話を、終わります。

次回に続きます。
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