わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

焼き物の着物(色彩)93 鍋島3

2014-06-07 22:49:33 | 陶磁器と色彩
肥前鍋島焼は、以前述べた様に、一般人に売る為の作品ではなく、藩主が自費を投じて、将軍家

への献上品であり、他の諸大名への贈答品として製作されたものです。

その為、明治四年の廃藩置県により各藩は消滅して財政的に貧窮し、各々所持していた調度品

などは、市場に流出する事になります。

2)鍋島焼の発見。

 ① 一般人が目にする事のなかった鍋島は、当然その存在は一部の人のみが知ってた状態でした。

   色鍋島が立派な美術品として再認識されたのは、明治初期に政府の招聘に応じた、英国人の

   ブリンクリー氏の評価と言われ、鍋島の名前が知れる様になります。

 ② 我が国で最初の本格的な鍋島に対する書籍は、大河内正敏著「柿右衛門と色鍋島」(大正五年

   彩壺会)とされ、これを契機に一般に広く知られる様になります。

   注: 大河内正敏氏。 日本の古陶磁研究の先駆者であり、現理化学研究所(理研)の創立者

     でもある博士です。博士は古陶磁趣味の団体「彩壺会」を作り、古陶磁の蒐集とその

     歴史や作品を紹介します。その結果、彼の学説は後々大きな影響を与えています。

3) 鍋島の様式と変途。

  ① 鍋島は、柿右衛門様式と異なる為、一見してそれと判る焼き物と言われています。

   ) 渋い染付けで、上絵も上手に描かれています。

   ) 一定の形と規格化された大きさに統一され、高目の高台皿が多いです。

     高台には櫛歯(くしのは)文様を描き、裏文様も表文様と対応し一体感があります。

   ) 意匠は大まかで、大胆な文様が多いです。

   ) 規格化され、キッチリとした仕上げで、色彩、染付、青磁とも綺麗に焼き上げています

  ② 鍋島の文様や絵の描き方も時代の変化によって変化しています。

    鍋島様式は初期、盛期、後期と大きく分かれます。但し、基本的には、器形や文様、製作

    技法はほとんど変化はありません。

   ) 初期の鍋島は、文様を器全体に隙間無く、色絵で描き込んでいく「つぶし」の技法が

     特徴です。又、青磁や銹(さび)釉、黄釉、瑠璃釉などの各種の釉に、染付や色絵、

     銹絵などの絵付を加え、一つの作品の見込み全体に組み込むのも特徴です。

     初期の文様は以下の三種類に分類されるとの事です。

    a) 第一種は、絵画的な図案ですが、図案に未熟さがあり、描いた線も硬さが感じられる

     との事です。 作品として、

     ・ 青磁染付銹(さび)釉桜樹文皿: 初期鍋島の代表的な七寸皿です。

       (口径 19.7cm、高さ 4.5cm)

     ・ 色絵柏樹双鳥(はくじゅそうちう)文大皿: 東京国立博物館蔵。

       (口径 30.0cm、高さ 6.4cm)

    b) 第二種は、更紗や蜀江錦(しょっこうきん)などの、染織物や七宝繋文、紗綾形、

      小紋などの織物の柄を、転用した幾何学的な文様です。これらの文様が円形の皿の

      見込み一杯に描かれています。

     ・ 色絵蜀江錦文皿: 岡山美術館蔵。 口径 15.1cm、高さ 3.8cm(五寸皿)

     ・ 色絵更紗文皿: 口径 15.3cm、高さ 3.3cm(五寸皿)

     ・ 染付酢漿草(かたばみ)散文皿: 口径 15.5cm、高さ 3.4cm(五寸皿)

    c) 第三種は、染付や幾何学文様から離れ、大胆な構図で、文様を割って丸文や線条文を

      散らしたり、象形文様を当てはめる方法を採っています。

     ・ 青磁染付鶴文皿: 今右衛門古陶磁美術館蔵。

       口径 15.3cm、高さ 3.7cm(五寸皿)

     ・ 色絵丸文皿: 東京国立博物館蔵。5枚組 口径 16.98X 12.8cm、高さ 3.5cm、

       土型で四菱花形皿を作り、糸切細工で楕円形にした高台が付けられています。

     ・ 色絵蟹牡丹文皿: 初期の変形皿の代表的な作品です。口径 16.9 X 12.4cm、

  ) 盛期(元禄年間)の鍋島の文様

以下次回に続きます。
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