3) 古九谷の技法。
古九谷色絵の伝世品の名品は、ほとんどが平鉢や大皿類です。
江戸初期以来、中国から輸入された呉須手大皿や平鉢、赤絵の芙蓉手大皿などの大物が
もて囃されていた影響で、古九谷でもこの様な平鉢や大皿に色付けした作品が作られたと
思われています。但し、中皿、小皿も存在し、これらは、大皿から取分けて食事する際に使われ
たと言われています。
② 呉須赤絵や南京赤絵の意匠の模倣から始まる。
1736年(享保21年)の書物に、古九谷は「南京焼と同じ」と記載されており、古九谷を入れた
箱にも「南京大皿」の記載があるとの事です。
古九谷は、肥前有田が量産体制を引き、大量生産方式であったのに対し、九谷では、
一品製作が主体ですので、丁寧に仕上げています。
③ 肥前有田の色絵と古九谷の色絵の違い。
) 使っている色の違い。
a) 有田では、赤と青を主体に緑、黄、紫を補助的に使用しています。
古九谷では、緑、紫、黄色を主体にし、赤と青を補助的に使っています。
尚、絵の具は主に、長崎にて中国産を手に入れていた様です。
b) 赤色に彩度(あざやかさ)の差があります。
有田の赤は純白の磁肌に載り、真紅の赤を呈しています。
古九谷では、素地に鉄分みを含み砂混じりの為、薄黒く沈んだ感じで、磁肌がやや
荒れた感じになっています。更に、赤色の原料(酸化鉄=朱石)が完全に精錬されず、
不純物を含み、鉄の粒子を非常に細かくする技術が未熟の為、真紅に成らず、やや濁りの
ある黒ずんだ赤になっています。
c) 古九谷様式の豪放で渋みのある趣は、上記のくすんだ磁肌と、赤色などの絵の具類の
色彩が大きく関係しています。
④ 古九谷と有田の色絵の描き方(賦彩方法)にも差があります。
) 有田では色絵を描く前に、濃(だみ)筆を使い、呉須で細い輪郭線を描きます。
その輪郭線の内側を、筆を用いて彩色して行きます。(ベタ塗り)
) 古九谷では、呉須を用いて骨描(ほねがき)し、厚く色絵の具を盛り上げます。
これを塗り埋め技法と言います。この絵の具を盛る上げる方法は、中国や有田では見受け
られません。この技法は、初期の京焼の筆法を参考にした物と言われています。
⑤ 古九谷の色絵装飾の分類。
) 鉢や皿の見込部の全体に絵が描かれ、縁には文様が無い様式です。
呉須による骨描の線内に、自由な表現がなされ、最も古九谷らしい作品です。
・ 色絵孔雀図平鉢: 「寛永十八年 後藤才次郎定次」の銘があります。 本善寺蔵。
高 7.5cm、口径 32.7cm、高台径 17.1cm。
・ 色絵竹虎図平鉢: 高 9.9cm、口径 33.5cm、高台径 14.9cm。
・ 色絵海老図平鉢: 石川県美術館蔵。
高 9.2cm、口径 33.6cm、高台径 14.8cm。
) 狩野派などの絵画を器の中心に据え、周囲を緑色の唐草文様を巡らせた構図のものです。
・ 色絵桃樹双鳥図平鉢: 重要美術品。 古九谷最盛期、寛文(1661~1672)年間。
高 7.4cm、口径 37.4cm、高台径 19.3cm。
・ 色絵酒宴図平鉢: 重要美術品。 箱根美術館蔵。古九谷最盛期。
高 8.7cm、口径 40.9cm、高台径 20.0cm。
) 器の見込み部に山水、花鳥風月、人物などを配し、縁を複数に分割し幾何学文様や小紋を
描いたものです。
・ 色絵鶉草花図平鉢: 石川県指定文化財。石川県美術館蔵。
高 6.9cm、口径 30.8cm、高台径 18.6cm。
) 「青手九谷」と呼ばれるものです。
赤色を使わず、紫、緑、黄、紺青の中の二~三色を使い、器全面を塗り埋める
「塗埋手」の技法で、現代絵画を思わせる作品です。
・ 青手樹木図平鉢: 加賀藩前田家が、長崎で購入したオランド・デルフト陶の意匠を
意識した、西洋絵画風の作品です。高 11.7cm、口径 45.6cm、高台径 17.3cm。
・ 青手瓜文平鉢: 初期京焼にある瓜図を古九谷風にアレンジした図柄です。
高 10.5cm、口径 45.0cm、高台径 18.5cm。
) 全面を幾何学文様で描いたもので、古九谷独自の文様です。
・ 色絵幾何学文平鉢: 高 7.1cm、口径 34.3cm、高台径 21.0cm。
・ 色絵石畳双鳳文平鉢: 石川県美術館蔵。
高 7.0cm、口径 34.5cm、高台径 20.2cm。
・ 色絵亀甲文壺: 高 27.8cm、口径 12.3cm、胴径 19.4cm、高台径 12.5cm。
) 全面又は縁の一部を、菊花などの小紋で埋め尽し、その中に黄色で各種の窓枠を設け、
文様を描き込む古九谷独特の文様です。裏模様に八宝文又や牡丹唐草文が描かれてい
ます。古九谷中期(最盛期)色絵の代表的な文様です。
・ 色絵割文色紙山水図平鉢:高 8.9cm、口径 38.8cm、高台径 18.9cm。
・ 色絵色紙瓢箪散花鳥図平鉢:高 7.4cm、口径 37.1cm、高台径 19.4cm。
・ 色絵百花双鳥図深鉢: 石川美術館蔵。
高 11.2cm、口径 41.8cm、高台径 31.3cm。
以下次回に続きます。
古九谷色絵の伝世品の名品は、ほとんどが平鉢や大皿類です。
江戸初期以来、中国から輸入された呉須手大皿や平鉢、赤絵の芙蓉手大皿などの大物が
もて囃されていた影響で、古九谷でもこの様な平鉢や大皿に色付けした作品が作られたと
思われています。但し、中皿、小皿も存在し、これらは、大皿から取分けて食事する際に使われ
たと言われています。
② 呉須赤絵や南京赤絵の意匠の模倣から始まる。
1736年(享保21年)の書物に、古九谷は「南京焼と同じ」と記載されており、古九谷を入れた
箱にも「南京大皿」の記載があるとの事です。
古九谷は、肥前有田が量産体制を引き、大量生産方式であったのに対し、九谷では、
一品製作が主体ですので、丁寧に仕上げています。
③ 肥前有田の色絵と古九谷の色絵の違い。
) 使っている色の違い。
a) 有田では、赤と青を主体に緑、黄、紫を補助的に使用しています。
古九谷では、緑、紫、黄色を主体にし、赤と青を補助的に使っています。
尚、絵の具は主に、長崎にて中国産を手に入れていた様です。
b) 赤色に彩度(あざやかさ)の差があります。
有田の赤は純白の磁肌に載り、真紅の赤を呈しています。
古九谷では、素地に鉄分みを含み砂混じりの為、薄黒く沈んだ感じで、磁肌がやや
荒れた感じになっています。更に、赤色の原料(酸化鉄=朱石)が完全に精錬されず、
不純物を含み、鉄の粒子を非常に細かくする技術が未熟の為、真紅に成らず、やや濁りの
ある黒ずんだ赤になっています。
c) 古九谷様式の豪放で渋みのある趣は、上記のくすんだ磁肌と、赤色などの絵の具類の
色彩が大きく関係しています。
④ 古九谷と有田の色絵の描き方(賦彩方法)にも差があります。
) 有田では色絵を描く前に、濃(だみ)筆を使い、呉須で細い輪郭線を描きます。
その輪郭線の内側を、筆を用いて彩色して行きます。(ベタ塗り)
) 古九谷では、呉須を用いて骨描(ほねがき)し、厚く色絵の具を盛り上げます。
これを塗り埋め技法と言います。この絵の具を盛る上げる方法は、中国や有田では見受け
られません。この技法は、初期の京焼の筆法を参考にした物と言われています。
⑤ 古九谷の色絵装飾の分類。
) 鉢や皿の見込部の全体に絵が描かれ、縁には文様が無い様式です。
呉須による骨描の線内に、自由な表現がなされ、最も古九谷らしい作品です。
・ 色絵孔雀図平鉢: 「寛永十八年 後藤才次郎定次」の銘があります。 本善寺蔵。
高 7.5cm、口径 32.7cm、高台径 17.1cm。
・ 色絵竹虎図平鉢: 高 9.9cm、口径 33.5cm、高台径 14.9cm。
・ 色絵海老図平鉢: 石川県美術館蔵。
高 9.2cm、口径 33.6cm、高台径 14.8cm。
) 狩野派などの絵画を器の中心に据え、周囲を緑色の唐草文様を巡らせた構図のものです。
・ 色絵桃樹双鳥図平鉢: 重要美術品。 古九谷最盛期、寛文(1661~1672)年間。
高 7.4cm、口径 37.4cm、高台径 19.3cm。
・ 色絵酒宴図平鉢: 重要美術品。 箱根美術館蔵。古九谷最盛期。
高 8.7cm、口径 40.9cm、高台径 20.0cm。
) 器の見込み部に山水、花鳥風月、人物などを配し、縁を複数に分割し幾何学文様や小紋を
描いたものです。
・ 色絵鶉草花図平鉢: 石川県指定文化財。石川県美術館蔵。
高 6.9cm、口径 30.8cm、高台径 18.6cm。
) 「青手九谷」と呼ばれるものです。
赤色を使わず、紫、緑、黄、紺青の中の二~三色を使い、器全面を塗り埋める
「塗埋手」の技法で、現代絵画を思わせる作品です。
・ 青手樹木図平鉢: 加賀藩前田家が、長崎で購入したオランド・デルフト陶の意匠を
意識した、西洋絵画風の作品です。高 11.7cm、口径 45.6cm、高台径 17.3cm。
・ 青手瓜文平鉢: 初期京焼にある瓜図を古九谷風にアレンジした図柄です。
高 10.5cm、口径 45.0cm、高台径 18.5cm。
) 全面を幾何学文様で描いたもので、古九谷独自の文様です。
・ 色絵幾何学文平鉢: 高 7.1cm、口径 34.3cm、高台径 21.0cm。
・ 色絵石畳双鳳文平鉢: 石川県美術館蔵。
高 7.0cm、口径 34.5cm、高台径 20.2cm。
・ 色絵亀甲文壺: 高 27.8cm、口径 12.3cm、胴径 19.4cm、高台径 12.5cm。
) 全面又は縁の一部を、菊花などの小紋で埋め尽し、その中に黄色で各種の窓枠を設け、
文様を描き込む古九谷独特の文様です。裏模様に八宝文又や牡丹唐草文が描かれてい
ます。古九谷中期(最盛期)色絵の代表的な文様です。
・ 色絵割文色紙山水図平鉢:高 8.9cm、口径 38.8cm、高台径 18.9cm。
・ 色絵色紙瓢箪散花鳥図平鉢:高 7.4cm、口径 37.1cm、高台径 19.4cm。
・ 色絵百花双鳥図深鉢: 石川美術館蔵。
高 11.2cm、口径 41.8cm、高台径 31.3cm。
以下次回に続きます。
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