わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

懐石道具 (向付1、志野)

2010-06-09 22:45:02 | お茶と「茶の湯」と茶道具(茶陶)
茶の湯の懐石道具について、お話いたします。

 茶会で出される料理を、懐石(又は、会席)料理と言い、料理と共に、供せられる食器類を、

 懐石道具と言います。

 懐石と会席の文字が有りますが、歴史的には、会席が古く、室町時代末には、使われていました。

 懐石は、江戸時代末期に、流布される様に成ります。

 語源は、禅宗の「ひもじさを、凌ぐため、懐に温石(おんじゃく)を、忍ばせておく」事に、由来します。

 ほんの少量の料理を、意味します。

 現在では、両方とも、同じ意味で、使用されていますが、懐石の文字の方が、優勢ですので、

 ここでは、懐石の文字を使います。

1) 向付(むこうずけ)

  一汁一菜、即ち、膳に飯碗と汁碗が置かれ、その向こう側に、皿や鉢を置き、お刺身などの、

  お造り又は、冷たい和え物などを、盛ります。

  それまで、単に皿と、呼ばれていた物が、江戸後期以降、向付と呼ぶ様に、成ります。

 ・ つぼつぼ(壷々):袋状の、小さな器で、膾(なます)を盛ります。

   初めての客を、迎える際に、一汁一菜と共に、供されます。

 ① 志野焼

   16世紀末に、美濃(岐阜県)に、黄瀬戸、瀬戸黒、織部、志野と言う、優れた茶陶が、登場します。

   志野は、我が国初の、白い焼き物と、言われています。

   百草土(もぐさつち)と言う、「ざんぐり」した白い粘土に、長石釉を掛けて、焼きます。

   白磁の白さが、透明性を、有しているのに対し、長石釉は、失透性の乳白色です。

   釉肌には、所々に、火色や貫入が、入ります。

  志野は、技法によって、無地志野、絵志野、鼠志野、練込志野などが、有ります。

  ) 絵志野

     鉄絵で模様を描き、長石釉(志野釉薬)を掛けます。

    ・ 志野鶯宿梅千鳥図向付(径:16.2、高さ:7.2) 桃山時代

      梅に宿る鶯と、川面を飛ぶ、千鳥の絵模様で、濃い黒色で、縁取りが、線で描かれています。

      器の形は、縁がやや広目の、丸い皿(浅鉢)で、四隅を変形し、やや四角に成っています。

      (志野の向付の、基本的な形です。)

      半月状の粘土紐を、3ヶ箇所に付け、脚としています。

  ) 鼠志野

     絵志野とは、明暗が反転しています。(即ち、ネガとポジの関係です)

     鉄絵の具(鬼板、酸化鉄)を、百草土の上面に塗り、各種模様を、箆(へら)で、堀込みます。

     志野釉を掛け、焼成すると、褐色から鼠色に発色し、白い模様が、浮き出てきます。

     絵志野より、はっきりしたした、模様が出ます。

    ・ 鼠志野向付(径:15.8、高さ:6.0)桃山時代

 尚、1953年荒川豊蔵によって、岐阜県可児市大萱牟田洞で、志野の窯跡と、陶片が発見され、

 志野が美濃産である事が、確認されました。

 ② 黄瀬戸の向付

      ◎ 参考資料 「茶の湯の懐石道具」矢部良明著 (東京美術)

以下次回に続きます。
 
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香炉 5 (香炉の名品)

2010-06-08 23:00:02 | お茶と「茶の湯」と茶道具(茶陶)
 桃山時代は、茶室において、香を聞く事が行われ、聞香(ききこう)と 茶の湯とは、密接な繋がりが、

 ありました。 又香炉は、飾りとして、用いられてもいました。

 それ故、桃山時代の作に、香炉の優れた作品があります。

 ・ 聞香とは、香のかおりを識別し、味わうことを「香を聞く」といいます。

  聞香に用いられる香炉を、聞香炉と言い、香が聞き易い様に、小型で煙返し(縁を内側に曲げる)を

  付けない、一重口の香炉です。

1) 黄瀬戸や織部に、獅子鈕蓋の香炉があります。獅子は唐物の古銅を、模しているが、

   これを日本化し、桃山文化の優雅(きらびやか)を、表現しています。

  楽焼も、獅子香炉を得意とし、初代宗慶の作に、優れた造形の、獅子香炉が有り(後述)、

  二代目常慶は、阿吽(あうん)一対の、香炉を得意とし、数点作成しています。

2) 江戸時代に入ると、侘び茶は、千家茶として定着し、聞香を取り入れた、七事式にまで進展します。、

  ・ 七事式(しちじしき)とは、徳川中期に、表千家と裏千家両家元が、合議の上で作られた物で、

    茶道修練(稽古)のための技(方法) の事です。

   七つの式作法からなっています。その構成は、花月(かげつ)、且座(さざ)、廻(まわ)り炭(ずみ)、

   廻り花、茶かぶき、一二三(ひふみ)、員茶(かずちゃ)の七つですが、このうちの廻り炭は

   炉の季節で用い、風炉(ふろ)は、廻り炭の替りに、花寄せがあります。

   茶道の事ですので、詳細は省きます。(興味の有る方は、調べて下さい。)

 ・ この内で、香と関係する式は、且座式(さざしき)で、五人で行います。

   客が三人で、亭主を「東(とう)」といい、亭主の補助役を、「半東(はんとう)」と言います。

   正客が花を生け、次客が炭を継ぎ、三客が香を焚き、東が濃茶を点て、半東が薄茶を点てます。

   (又は、正客が香を焚き、次客は花を入れ、三客は炭を置きます。)

   花を生け、炭を継ぎ、香を焚き、濃茶薄茶を点てる且座は、お茶の全てが含まれている方法です。

3) 香炉の名品 

 ① 青磁千鳥香炉(高6.4㎝,口径9.1㎝ 徳川美術館) (中国明代の製作)

   円筒形の三つ足で、底部中央に、高台があり、畳付きと成り、足が宙に浮いています。

   元宗祇が珍蔵し、今川氏を経て、信長に渡りました。

   また利休所持で、三つ足が不揃いであったのを、妻の宗恩が一分だけ、切らせたところから、

   千鳥の香炉の名が、生まれたという伝説もあります。(洗心録)

 ② 宗慶、黒楽向獅子香炉(高18.0㎝ 滴翠美術館)

   宗慶は秀吉から楽の金印、銀印を賜った、楽焼の陶工です。

   他に、三彩獅子香炉や、黒茶碗天狗(共に梅沢記念館蔵)などが現存します。

   この獅子の原型は、「紫銅向獅子香炉」(徳川美術館蔵)です。

 ③ 赤絵狗鈕香炉(高10.0㎝ 根津美術館)

   名物呉須赤絵香炉です。蓋は三方に、穴のあいた蓮弁紋透蓋で、甲に狗が後を振り向いた姿で

   表されています。狗の一部に、金彩が残り、嘉靖頃の金襴手で、景徳鎮窯の物とされていますが、

   身の方は、呉須赤絵、赤玉紋の手で、石碼窯の物と考えられます。

   小堀遠州から、土井家に伝わりました。

 ④ 仁清作、色絵雉子香炉(国宝 高18.0㎝,長47.6㎝,胴幅12.0㎝ 石川県美術館)

   野々村清右衛門(仁清)の、陶芸を代表する、装飾的な飾り用の、色絵香炉です。

   雉子(きじ)香炉には、この他に、銀彩の物が知られています。

   この香炉は、仁清の細工物を、代表する優作で,頭部の力強い表現を,胴部のゆったり

   とした膨らみが支え、尾先を低くして、優美な感覚を巧みに表しています。

   黒の上に緑を掛け、細い金の線描で、括った羽毛の表現は見事です。

   前田家の注文によって、作ったものと思われ、後に城下、山川家に伝来しました。

 ⑤ 仁清作、菊紋共蓋香炉(高8.0㎝,胴径8.0㎝ 香雪美術館)

   色絵聞香炉で、全面に赤の菊を表し、余白に葉などを補った緻密な作品です。
  
   仁清の同型香炉には、松竹梅絵香炉、剣酢醤(かたばみ)草紋香炉などが、知られています。

 近頃は、茶道でも、香炉を使う機会が、少ないとの事です。

以上で香炉の話を、終わります。
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香炉 4 (茶香炉を造る)

2010-06-07 22:37:41 | お茶と「茶の湯」と茶道具(茶陶)
話が、横道にそれ、茶道具とは、直接関係無いのですが、茶香炉に付いて、お話致します。

近頃、茶香炉と言う言葉を、良く耳にし、私の教室でも、茶香炉を、ご自分で作る人が、増えています。

1) 茶香炉とは、茶の葉を、加熱する事で、発生する芳香により、心をリフレッシュさせる、

  アロマ、リラクゼーション、グッズです。又、部屋の消臭にも、最適との事です。

 ① 茶を焙(ほう)じた時の、香ばしい芳香は、ピラジン系の香気成分(ピラジン、フラン、ピロール系)

   ですが、青葉アルコールや、リナロールという名の、花香芳香成分と、作用して、これら成分は、

   リラックス効果を、発揮します。

 ②  茶の種類は、普通の煎茶、又は、茎(くき)茶が良いそうです。(新茶なら更に、良い様です。)

   勿論、茶香炉用の、お茶も販売されています。(茶香炉用は、飲用に適さない、お茶も有ります。)

  ) 茎茶を、少々湿らせ、アルミ箔をのせた受け皿に、置くと、青々とした新芽の香します。

     茶の香りを、楽しみたい場合には、煎茶(新茶)を、 青々とした、芳醇な香りなら茎茶を 、

     高い消臭効果を、得たい場合には、焙茶 (ほうじちゃ)を使うと、効果的です。  

  ) 紅茶、挽いたコーヒー豆、ハーブ、ヒノキのチップや、柿の葉、ドクダミなど、代用茶として

     用いられる葉は、どれも、それぞれ独特な、芳香があります。

  ) 焙じたお茶は、焙じ茶として、飲む事ができます。胃に優しいお茶です。
   
2) 茶香炉の構造

 ① 形は筒型、太鼓型、ドーム型、四角、その他、動物の形など、色々有り、各地の陶器の産地などで、

    作られ、販売さています。
 
 ② 上部に、茶葉を入れる、小さな、浅い皿が有ります。

   皿の大きさは、茶さじ1杯の茶葉を、薄く拡げる程度の、大きさです。

  ・ 取り外し可能な物と、本体と一体に成っている物が、あります。
 
 ③ 本体は、キャンドルを入れる、やや大きな孔と、炎が良く燃える用に、空気の対流を考え、数箇所に、

   孔(透かし彫り)を開けます。自作で茶香炉を、作る際には、装飾の役目も有りますので、

   好みの孔にします。又夜など、他の明かりを消すと、この孔から、光が漏れて来ますから、

   その効果も考えて、孔を開けます。

  ・ 尚 火を使わずに、電熱で暖める、茶香炉も市販されています。安全面に優れていますので、

    電熱式を、使われる方も、います。

3) 茶香炉を造る

  ① 全体の形を、決めます。

   ) 底はベタ、又は、脚付きにします。(ベタが多いです)

   ) 上部の皿は、本体と一体にするか、別にするかを、決めます。

   ) 香炉の側面に、透かしの孔を、開けますので、その模様を決めておきます。

  ② 香炉の大きさを、決める。

    一般に市販されている、茶香炉の高さは、上皿まで、11~12cmの物が、多いです。

   ) 大切な事は、熱源(キャンドルなど)と、上皿との距離です。

      遠いと、お茶が十分、熱せられず、香りが出ません。逆に、近過ぎると、お茶が焦げて

      しまい、更に、皿の底に、煤(すす)が残り、火事の恐れもあります。

   ) キャンドルは、ホームセンターや、100円ショップで、茶香炉用として、市販されています。

      (大きさは、径が4、高さ2cm程度で、アルミのッカプに、入っています。

       10個で200円位です。)

     ・ アロマポット、タイプのアロマテラピーや、ティーライト、キャンドルなどの名前で、

      市販されてもいます。

  ③ 電動轆轤でも、手捻りでも作る事が、出来ます。

    ) 本体を造り、更に、上皿を造り、キャンドルを載せる、柄の付いた容器を造ります。

       本体は、キャンドルが、楽々入り、安定して置ける様に、底を広く取ります。

    ) 本体の側面に、孔を開けます。

       火の付いた、キャンドルを入れるので、ドーム型の孔を、開けます。

       使用する、キャンドルの大きさにも、よりますが、最低でも横幅6、高さも6cm位は、

       必要です。

       更に、空気が良く循環して、火が燃える用に、数箇所孔を開けます。

       (熱が、本体内に、こもらない様にします。)

    ) 上皿は、底が平らで、立ち上げ部は、1~2cm程度で、別体で造る際には、

       皿が動かない様に、本体にスッポリ嵌る凸(又は凹み)部を、設ける必要が有ります。

    ) キャンドルを載せる台も、市販されていますが、ご自分で、簡単に造れます。(手ひねり)

       持ち易い様に、柄を付けます。

4) 茶香炉の使い方

  ① 茶匙1杯程度の、お茶を、上皿に置き、万遍無く、薄く拡げます。

  ② 台に載せた、キャンドルに、火を灯し、香炉の中に入れます。

    火が遠い様でしたら、台の下に、スペーサーを置き、高さを調節します。

  ③ 5~6分すると、香りが、発生します。茶の色が、茶色に変色すると、香りは、少なく成ります。

    新しい、お茶と交換して下さい。

  ④ 最後に、火を使いますので、ロウの蒸発で、異常燃焼が、起きない様に、十分注意して下さい。

以下次回に続きます。

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香炉 3 (使い方)

2010-06-06 22:41:00 | お茶と「茶の湯」と茶道具(茶陶)
香炉の話を、続けます。(本日は、「香炉の使い方」です。)

5) 香炉の使い方

 ① 三脚の付いた香炉は、手前側に脚が一つ来る様にし、奥に二つの脚が来る様に、置くのが、

   正式な置き方との事です。

 ② 蓋の付いた香炉は、使用時には、蓋を取り、使用しない時は、蓋をして置きます。

  (蓋をしたまま、香を焚かない事です。)

 ③ 香炉灰を香炉に入れて、使用します。

  ) 香炉灰は、専用に市販されていますが(藁灰など)、普通に有る灰で十分です。
   
     但し、良く乾燥した灰を、使います。
 
  ) 灰は香炉に、七~八分目程入れます。

 ④ 香木の焚き方

  )灰の中の、中央に窪みを作ります。

  )炭(香炭、炭団など)に、火を付け、窪みに入れ、上から灰をか被せます。

     直(じか)に炭の上に、香木を載せると、香が焦げてしまう為です。

  )被せた灰の上から、火窓を開けます。これは酸欠によって、炭が消えない様にする為です。

    火箸で灰の上から、炭にぶつかる様に、刺し込み、空気穴を、開けてます。

  )炭から暖かい熱が、出ますので、好きな香木を、焚きます。

    灰の上に、銀葉鋏みで、火窓の上に銀葉を載せ、その上に香木を置く、やり方も、有ります。

   ・ 銀葉: 雲母板の四隅を切り落として、真鍮(しんちゅう)の縁を、付けた物で、

     香炉の火の上に置き、香木が直接火にふれ、早く燃焼するのを、防ぐ為に使用します。

    尚、香木の形には、刻み、分割、笹などありますが、焚く目的によって割り方も、様々あります。

  ) 沈香は歩割の場合、1枚を十条位に割り、2~3本の載せます。

    白檀は歩割の場合、1枚を3等分位に割り、その二つ分くらいが良いです。

 ⑤ 練り香の場合

    この場合も、手順は香木と同じです。1~3粒を載せます。

   以下の場合には、灰の上に直接置き、お香に直接点火します。

   ・ コーン型のお香の場合は、立てて、火をつけます。

   ・ 渦巻きのお香の場合は、火を付けてから、灰の上に置きます。

   ・ スティックの、お香の場合も、火を付けてから、灰の上に、寝かせます。

 ⑥ 注意事項

   ・ 練り香に、しっとり感がなく、乾いてしまった時は、日本酒に付けてから使用します。

   ・銀葉 一度使った銀葉も、濃く煮だした茶の中に、しばらく浸けておき、柔らかな紙で

    拭いておけば、何度でも使えます。

   ・ 香の煙が、強く立つ様では、火気が強すぎで、空気穴を、小さくし、香を燃やさずに、

     ゆっくり、くゆらします。

   ・ 火が弱い時は、もう一つ斜に、穴を開けます。

以下次回に続きます。
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香炉 2 (お香に付いて)

2010-06-05 23:12:30 | お茶と「茶の湯」と茶道具(茶陶)
香炉の話を続けます。(本日は、お香の話です)

4) 香に付いて

   お香には、大きく分けて、香木(こうぼく)と、合香(あわせこう)が有ります。

  ・ 香木は、沈水香木(=沈香)の伽羅(きゃら)や、白檀(びゃくだん)が、代表的なものです。

  ・ 合香は、練り香、印香(いんこう)、抹香(まっこう)の他、コーン(円錐)型、ステック型、

    渦巻き型など、一般家庭で使用される物も、含まれます。

 ① 香木

   香木(こうぼく)とは、芳香を持つ木材のことで、沈香(沈水香木)と白檀が有名です。

   薄片に削った物を加熱して、芳香を楽しみます。香木の芳香のことを「香」と言います。

  ・ 白檀は熱することなく香るため、仏像などの彫刻や、扇子や数珠などの、材料として用いられます。

  )  沈水香木(=沈香)(ちんすいこうぼく)

   「沈水香木」とは、文字通り、「水に沈む」事から名付けられた物で、通常は略して

   沈香(ちんこう)と呼ばれます。伽羅(きゃら)が、有名です。

  a) 伽羅: 熱帯や亜熱帯の、東南アジア諸国(ベトナム、タイ、インドネシアなど)で、

   採取される、樹脂の沈着した樹木で、沈丁花(じんちょうげ)科、アキラリア属の、樹木から

   採取しますが、人為的に増産することが、 困難で自然に生成するものが、殆どです。

   小さく刻んだり、粉末にして香炉で焚いて、使用します。

   (尚、伽羅と言う名前の木は、ありません、原木となる植物が10種類以上、知られています)

  香りの元は、樹脂です。虫などが、樹皮に穴を開けると、一種の脂(ヤニ)を出します。

  長い年月をかけ、樹脂分は組織に沈着し、組織の性質までも変えていきます。

  樹脂分によって変質した部分は、朽ちる事なく、加熱しない限り、永遠の生命を得ます。

  そのような部分を「沈香(或いは伽羅)」と呼びます。樹脂化した部分は、化石に近い状態となり、

  比重は1を大きく超え、水に浮く事はありません。

 b) 白檀(=栴檀)

   白檀は、熱帯・亜熱帯を中心にして、幅広い国々に産出します。

   主な産地は、インドで、インドネシア・ミャンマー・台湾・オーストラリア・アフリカ・ハワイ

  などでも、産出しますが、インド産より、香りは遥かに劣ります。

  樹皮と白太(辺材)を、取り除いて、赤銅色の心材を、乾燥させると、清涼感のある柔らかな

  芳香を放ちます。5%程度の、白檀オイルが含まれており、その主成分は、サンタロールで、

  殺菌・血行促進作用に優れています。

 ② 合香(あわせこう): 純粋な香木に対し、複数の種類の香料を調合して、作るお香の総称です。

   調合する者の、意図が反映され、多くの種類が、作られています。

 )練り香: 漢方香料を調合し、ベースの木炭粉、蜂蜜、梅肉などを入れて、練り合わせて、造ります。

   直系8~10ミリの、柔らかく湿った丸薬状のお香です。

   香炉に炭団(たえどん)を埋めて、遠火で熱すると、ゆるやかに香りが出ます。

   茶道では炉の中の、熱灰に置いてゆっくりと、加熱します。

 ) 印香(いんこう): 練り香と同様の香を、型で様々な形に成形し、乾燥させた物です。

   保存が容易で、使い易い香として作られています。

   使い方は、練り香と同じで、香炉に炭団を埋めて、遠火で加熱します。

 ) 抹香(まっこう): 粉末のお香で、香炉や常香盤の、平たくならした灰の上に、筋状に敷き、

   端から着火して、長時間焚きます。常香盤では、決められた模様に、型を使って抹香を敷きます。

 ) 匂い袋: 香りの良い、漢方香料を刻み、粉末にして調合し、布や紙の袋に詰めた物です。

   手軽に香りが楽しめ、携帯することが多く、調合によっては、防虫の効果が、認められ、

   タンスや手箱、掛け軸の箱などに入れて使います。

5) 香炉の使い方

以下次回に続きます。
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香炉 1

2010-06-04 22:51:50 | お茶と「茶の湯」と茶道具(茶陶)
茶道具の一つである、香炉に付いて、お話致します。

1) 香炉の分類

  香炉には、その使い方によって、幾つかかに、分類されます。

 ① 仏事に使う香炉

 ② 香道即ち、聞き香の為の香炉

   香合(こうあわせ)と言い、 種々の香を焚いて、その香の名を、嗅ぎ当てたり、匂いの優劣を

   競ったりする遊戯(ゲーム)。

 ③ 茶道などに使われる香炉

 2) 香炉の歴史

  ① 香はインドが発祥と、言われています。

    古くから、臭気を除く事と、清めの意味で、香が焚かれ、それが、仏を供養する為の仏具にも、

    使われる様に、成ります。

  ② 我が国では、平安時代に、貴族達が、衣服(着物)に、香を焚き込み、香りを付ける、

    薫炉が、優美な嗜好として、流行します。

  ③ 鎌倉時代に、中国の、禅宗が我が国に伝わり、その影響で、仏事の香と共に、香炉なども、

    輸入される様になり、国焼(和物)も、作られる様に、なります。

  ④ 室町時代に、茶の湯が起こると、唐物茶入が、茶道具として活用される共に、香炉もまた、

    書院付の御座敷で、床の間に飾られたり、書院や違棚に、配されたりする様に、なります。

   ・ 書院飾りに用いられる香炉は、金属と陶磁器が主で、いずれも唐物です。

     金属では火舎香炉・釣香炉・毬香炉・鼎形香炉、それに獅子・麒麟・鹿・象・驢馬など

     様々の動物の形の、香炉があります。

   ・ 陶磁器製は。種類は少なく、鼎形(袴腰)や千鳥、竹節、浮牡丹などが主で、動物の獅子や

    水鳥などの、香炉があります。

  ⑤ 安土桃山時代には、千利休の侘び茶が、しだいに発展すると、香炉類は、用いられなくなります。

  ⑥ 江戸時代に、大名茶が復興し、茶家では、香炉がまた鑑賞の対象となっていきます。

    更に、香炉鑑賞は、大名茶ばかりでなく、公家茶にも浸透しますが、その功労者が金森宗和です。

    名工、野々村仁清を育て、優れた香炉の数々を生み、香炉は茶の湯の世界ばかりではなく、

    京焼全般の花形となります。

   ・ 仁清作「雉香炉」雌雄一対は、国宝として、日本美の象徴と、されています。

3) 香炉の形と素材

  ① 基本的には、上又は側面に、大きく開口した筒、椀、箱、皿状の容器であり、

    脚を備えている物が、多いです。

  ② 穴の空いた蓋(火屋、ほや)を備えた物が普通ですが、香道で用いる、聞香炉(もんこうろ)は、

    蓋を持ちません。形態や色彩、寸法などは、比較的自由に、作られています。

  ③ 材質は、不燃性の、陶磁器、金属、石材などです。

4) 香炉の種類

   居(すえ)香炉、柄(え)香炉、釣香炉、象炉などがあります。

  ① 居香炉は、前机の上に置いて、用いる物で、博山(はくさん)炉、火舎(かしゃ)香炉、

    蓮華形香炉、哩字(きりく)香炉、蛸足香炉、鼎(かなえ)形香炉などの種類があります。

  ② 柄香炉は、朝顔形の炉に、座と柄をつけ、手に持って用いる物です。

  ③ 釣香炉は、環を付けて、釣り下げて用います。

  ④ 象炉は、象を型取るもので、密教で使われ、またいで、身を清めるのに用いました。

  ⑤ 薫炉は、室内や、衣服に香を、焚きしめるのに、用いられます。

  ⑥ 聞(もん)香炉は、香道に用いられています。

以下次回に続きます。
 
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茶道具 (建水2、蓋置き)

2010-06-03 22:06:14 | お茶と「茶の湯」と茶道具(茶陶)
前回に引き続き、建水の話をします。

建水は、水がこぼれない様に、下部が大きく、安定した、造りになっている物が、多いです。

 陶磁器製の、建水の大きさは、小型の物から、大きな物まで、千差万別ですが、一般的には、

   径: 約 13~約 15cm程度、 高さ: 約 6.5~9cm程度です。

 ・ 建水は、格が低い為、著名な作品は、あまり聞く事は、有りません。

 ・ 建水の使い方には、作法(決まり、約束事)が有る様ですが、ここでは、省略いたします。


2) 蓋置(ふたおき)に付いて

  蓋置とは、釜の湯をくむ時、釜の蓋や、柄杓を置く為の、茶道具の一つです。

  小さな物ですが、材質や形など、多くの種類が、あります。

  金属、陶磁器、竹の蓋置が、良く使われ、竹の蓋置(引切、ひききり)は、炉(11月~4月)

  風炉(5~10月)の季節によって、違う切り方の物を、使います。

  竹節の位置が、上部にある物が、風炉用〔天節〕(てんぶし)で、真中にある物が、炉用〔中節〕

  (なかぶし)と呼びます。

 ① 焼き物の蓋置は炉、風炉とも使います。但し、絵柄がある物は、その季節に合った使い方をします。

   焼き物として、青磁、染付け、京焼、薩摩、楽などが、有ります。

 ② 蓋置きの種類:七種(しちしゅ)蓋置と言い、茶道具で、代表的蓋置の7種です。

  ・ 種類は数多く有りますが、有名なものとして、千利休が選んだとされる、7種類の

    火舎(ほや)、五徳、三葉(みつば)、一閑人、栄螺(さざえ)、三人形、蟹の蓋置があります。

    火舎とは、香炉、手焙、火入などの上に覆う、蓋の事で、火舎の付いた、小さな香炉を

    蓋置に見立てたものです。 七種蓋置のうち、最も格の高い物として扱われます。

    これらは、特別な扱いがあります。棚を使った場合、蓋置は点前の終わりに、柄杓と共に

    棚の上に、飾られますが、竹製のものは、特別の物以外は飾りません。

 ③ 蓋置の大きさと、形

   大きさは: 外径 5~6cm、高さ 5~7cm程度で、中空(ドーナツ形)に成っている物が、

   多いです。

 ④ 転用して、蓋置に使う物も多い。
   
   初めから、茶道具専用に、作られた物も、有りますが、他の用途の物を、転用した物も、有ります。 

   即ち、青磁の三つ人形や、染付の三宝、木瓜、千切、桔梗などは、文房具の一つに用いられていた

   物が、蓋置に転用されています。

  糸巻蓋置、雪洞(ぼんぼり)蓋置、青磁菱形 馬蓋置、モウル一葉蓋置 、チキリ蓋置 、千切蓋置など

   多種の形があります。

以上にて、建水と、蓋置きの話を終わります。

次回は、香炉と香合について、お話する予定です。

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茶道具 (建水1)

2010-06-02 22:24:49 | お茶と「茶の湯」と茶道具(茶陶)
茶道具の建水(けんすい)に付いて、お話致します。

建水は、茶碗を清めたり、温めたりした時に使った、湯や水を、捨てる為に使います。

通称「こぼし」と言い、水下(みずこぼし)とも書きます。

・ 建水は、最も格の低い、脇の道具として、点前の際は、勝手付に置かれ、客からは、見えにくい

  所で使われます。会記でも、最後尾の、一段下げた所に、記されます。

1) 建水の材質

   材質からの分類すると、金属、陶磁、木竹の3種類に、区別できます。

 ① 金属は、唐銅の他に、砂張(さはり)、毛織(モール)、七宝(しっぽう)、鍍金(ときん)、

   南鐐(なんりょう)、真鍮(しんちゅう)などが使われます。

 ② 陶磁には、南蛮焼、ハンネラ、染付、朝鮮系、備前焼のほか、瀬戸焼、信楽焼、伊賀焼、丹波焼、

   唐津、織部、京焼などがあり、その産地、形状とも多種多様で、一定の形は有りません。

  ・ 日本に渡来した南蛮陶の産地としては、ベトナムや、タイ、又は、中国南部の物や、朝鮮半島の

    焼き物が、南蛮物とされている例もあります。南蛮陶には、施釉物と無釉の物とが有ります。

 ③ 木竹は、「曲(まげ)」と言われる物で、最も素朴で、清浄感のある木地(きじ)曲のほか、

   塗曲、蒔絵、箔押しを施したもの、また竹や、桜皮を周囲に、張り巡らせた物もあります。

2) 建水の形

  形状は筒型や桶型、壺型など、湯を捨て易い様に、口は大きく、開いている物が、ほとんどです。

  建水の形 ‥形としては、昔より「七種建水」と、呼ばれる物があります。

 ① 大脇差(おおわきざし)… 利休愛用の形と言い、黄瀬戸が好まれました。

   いつも、腰の傍らに、置いたので、腰につける脇差に、連想して名付けられたと、思われます。
 
   胴が捻貫の様に、成っている円筒形で、やや背の高いものです。

 ② 差替(さしかえ)、… 大脇差の小形の物です。

 ③ 棒の先(ぼうのさき)… 駕篭等の、担ぎ棒の先端につける、金具の形からの命名です。

 ④ 槍の鞘(やりのさや)… 槍の穂先に、かぶせる鞘の形に、似ています。

 ⑤ 箪瓢(たんぴょう)… 瓢箪(ひょうたん)を逆さまにした形です。

 ⑥ 餌 畚(えふご)… 鷹匠(たかしょう)が持つ、鷹の餌入れの形。

 ⑦ 鉄 盥(てっぱつ)… 浅くて、低い平建水。

 その他の形として、

 ⑧ 合 子(ごうす)… 本来は、蓋物の容器のことですが、建水の場合は、蓋物の身の方を、指します。

 ⑨ 毛 織(もうる)… 袋形で、口縁の下に、「くびれ」があり、胴には、連弁の彫文、口に唐花、

   唐草の打出し文様が、施されています。

  (チベットでは、この形の容器のことをモールと呼んでおり、 建水の場合には、材質と形と

   両方の意味で、モール建水と呼んでいます。)

以下次回に続来ます。
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