松平記p48
翻刻
が父也
井谷之間疑〇
伊
一 永禄五壬戌年三月遠州井伊の谷城主井伊肥前守氏真へ逆
心致し、元康信長と和談の由井伊谷の同心小野但馬守讒言
いたす、依之氏真発向して肥前守退治ときこえける間、新野
佐馬助ハ氏真の一門の肥前守と懇切なれば大きに驚き
我等儀肥前守かたき日比〇〇更に逆心有べきものに無
之様子尋候て其後御出馬有べしと、即肥前守方へ此段被
申、肥前守驚き、我等父信濃義元の御供に討死申候へハ信
長ハ我等親の敵にて御座候間、更に信長と一味無之候、其
上先年御勘気を御免被成、本領安堵仕候事更に難申尽候
現代語
(左馬之助)の父である。
井谷之間疑脱
伊
一 永禄5年壬戌の年三月、遠州(遠江)井伊の城主井伊肥前守直親が今川氏真に逆心致し、松平元康は織田信長と和談(同盟)の由、井伊谷の同心小野但馬守政次讒言いたす。これによって今川氏真が兵を出して井伊肥前守直親を退治すると(新野佐馬助が)聞いた。新野佐馬助は今川一門の井伊肥前守直親と懇切だったので大変驚き、我等のことは「肥前守かたき○○」そのうえに反逆することがないという状況を確かめて、その後に(氏真は)兵を出すべきであると井伊肥前守直親に話された。井伊肥前守直親は驚き、我等の父井伊信濃守直盛は今川義元とともに討死なされた。織田信長は我等父の敵であるので、織田信長と仲間になることはあり得ない。そのうえ先年咎め(逆心の疑い?)を許され、本領安堵をしていただいたことは、なおさらに言葉につくせないほどである。
コメント
井伊谷の話です。NHK大河ドラマ「女城主直虎」で、この辺りは小野政次(高橋一生)や井伊直親(三浦春馬)、今川氏真(尾上松也)、新野佐馬助(苅谷俊介)らが好演し、複雑な井伊谷の状況に驚いたものです。
さて、またまた難解な字です。
6行目 12文字目
また、小さな字でこの段の上に字が書いてありますが、不明です。