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松平記p16
翻刻
(岡崎を何とそ責落し支配有)へしと被仰付加勢有、近日責らるべしと談合有、爰に此
事岡崎に聞えしかハ、廣忠ひそかに筧三郎を呼て、上和田
へたはかり行て、三左衛門を切て参り候へ、是然共頼むと
被仰、筧承り御請申上和田へ参、降参申度と申、三左衛門殿
岡崎衆をあまた引付、最早何とそ筧兄弟の中を引付候ハ
んと常に被仰候時分、平三郎参候間、大小悦なされ近く召
し、近日岡崎を責候ワんまま筧案内を頼由被仰付、御懇情
有て御近所へ寄せ給ふ、誠に運のきハめ也、其夜筧御近辺
の座鋪に〇り候へハ、案内ハくハしく見置けれは廣忠よ
り被下候脇指にて三左衛門殿わきつぼを二脇差指突てに(け出る)
現代語
(岡崎をなにとぞ攻め落とし、支配する)べきであると、織田殿より言われて、加勢をうけ、近日中に岡崎を攻めようと話し合っていた。このことが岡崎に聞こえてきたので、松平廣忠は、ひそかに筧三郎を呼び、「上和田(松平三左衛門忠倫の居城)へ嘘を言って近づき、松平三左衛門忠倫を切ってしまえ、このこと頼むと仰せられ、筧はそれを承諾した。上和田には「降参したいのだが」と近づいた。松平三左衛門忠倫は、岡崎衆(廣忠の家臣たち)をたくさん上和田に引き入れ、とくに筧兄弟を引き入れたいと言っていたちょうどその時に、筧平三郎が降参したいと言ってきたので、大変喜んだ。そして近日中に岡崎を攻めようと思う、筧には案内を頼むつもりであると言い、大変丁寧にもてなした。その夜筧は近くの座敷にいて、屋敷の様子を詳しく観察し、廣忠よりもらった脇差で、松平三左衛門忠倫のわきを二カ所突いて(逃げ出た)
コメント
暗殺の応酬です。先には松平廣忠が暗殺されかけました。刺客である片目八弥は、誰のさしがねで暗殺を企てたか、記載がありません。NHK大河ドラマ「麒麟がくる」では、織田信長が廣忠を暗殺しようと刺客を送り込み、廣忠が暗殺されてしまいます。今回は、廣忠が敵対者である松平三左衛門忠倫を暗殺したという話です。刺客は筧平三郎(三郎)重忠です。この武将、ネットで調べたところ桶狭間の戦いで丸根城を攻めたうちの一人でした。
だまし打ちというのは、この時代いつでも、どこででも起こり得た事なので、この場合は松平三左衛門忠倫が油断したということになるのでしょうか。さすがは戦国時代です。殺し殺される世界で、油断も隙もありません。大変怖い世界だと思います。