松平記p68
翻刻
本多三弥、大久保七郎右衛門をねらふ。七郎右衛門ハ三弥
をねらひ、互に鉄砲にて、あいためにしけるが、七郎右衛門
はなしかちて三弥を打落す。然共うすてにて死なず。針崎
の敵共二手に成、一手ハ大久保衆をあひしらいてくひと
め、一手ハ妙国寺畷乗出る間を取切、大久保衆上和田へか
へすまじ。両方よりせりかけ、土居の方へ押懸、水田に押は
め、討べしと評定し、已に二手にわくる処に蜂屋半之亟ハ
大久保五郎右衛門が妹婿なりしかば、其由大久保衆にし
らせんと思ひ、只一騎馬を原へ乗あげければ、大久保衆見
て、あれハ半之亟也、いか様敵共和田妙国寺前を取切、味方
現代語
本多三弥は大久保七郎右衛門をねらった。七郎右衛門は、本多三弥をねらい、互いに鉄砲で相打ちになったが、七郎右衛門が勝ち、本多三弥を打ち落とした。しかしながら、傷は浅く死ななかった。針崎に籠る敵は、二手に分かれ、一手は大久保衆に応対し、一手は(大久保衆が)妙国寺畷を出る間を取り、大久保衆が上和田に戻られないようにし、両方より攻め、土井に押し掛け、水田に追い落とし、討ってしまおうと作戦を立てて、既に二手に分けて攻めようとしている時、蜂屋半之亟は大久保五郎右衛門の妹婿だったので、針崎勢の作戦を知らせようと、ただ一騎原に乗り出した。大久保衆はそれを見て、「あれは半之亟だ。敵どもは和田妙国寺を取り切り、味方を返さないようにしている」と見た。
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