鼎子堂(Teishi-Do)

三毛猫堂 改め 『鼎子堂(ていしどう)』に屋号を変更しました。

『忌日:車谷長吉・著』

2012-09-15 22:50:10 | Weblog
暑さ・・・一向に衰退せず。


・・・どんなコトにも、必ずや終わりはある。

天上を舞う天人さえも、その寿命が、つきるときは来る・・・。
必ず、迎えるその終焉・・・。
終わりたくないひともいるだろう。
終わらせたいひともいるだろう。

どうせ、終わりがくるのなら、一番幸福なときに、終わりにしてしまえれば、これ程、有意義だった人生はないだろう。

本日のお題。

六編の短編からなる一冊。

私は、この六編の中で、『三笠山』という作品が好きだ。
事業に行き詰まり一家心中をはかった夫婦の物語だ。
高校生の頃から、お互いが好きでたまらない二人。
やがて、家族の起こした事故により、進学の道を断たれて、別離。
しかし、運命は、二人を見捨てたりはしない。
二人は、一緒に暮らすことができるようになる。
・・・幸福な日々。

それも長く続かず、事業の失敗により、一家心中を図る。

車谷長吉氏の作品にしては、幸せな二人である。

三笠山のホテルで、ふたりの子供を殺し、山中で、排気ガスを車の中に引き込み、今、まさにふたりは、死のうとしている・・・そこで、物語は、終わる。

たぶん、二人は、死ぬだろう。

このふたりには、たぶん、幸福しかない。
このふたりには、お互いしかいない。

もし、生まれ変わっても、また、一緒に死ぬんだろうな・・・。

羨ましいふたり・・・でも、ある。