鼎子堂(Teishi-Do)

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『饗宴:吉田健一・著』~コットレット・ダニヨオ・オォゾマアル・トリュツフェ・マロンシャンティとは?

2012-10-06 19:21:39 | Weblog
曇りがちの三連休初日。

今年の夏は、厳しい暑さと何時までも、暑さが衰退しない残暑で、いきなり気管支に宿した風邪に似た症状を引き起こすヴァイラス(若い頃、医学書原稿のデータ入力なんてやっていたから、独逸語風で、英語読みのウイルスより、ヴァイラスの語感の方が好きなので、記述させてもらった)に悩まされ、しかも、夜中に眠れないというまさに、暑さ・風邪・不眠、ついでに食欲不振の四重苦にやられてしまった・・・。
水と(気休めの)栄養ドリンクでなんとか凌いだ感があったなか、この名著を思い出して、読んでいた(食欲は、相変らず、サッパリだったけど・・・ね)。

今日のお題。
コットレット・ダニヨオ・オォゾマアル・トリュツフェ・オォズイトル・フリト・マロンシャンティ(正式名称)・・とは、何ぞや・・・?

水もなるたけ飲まないように・・・などという病気にかかったときの対策用・・・。

フォークランド諸島の更に果ての群島で遭難したシャックルトンの一行に、どこからも救援のあても食糧もなく数日過ごした人のなかに、毎晩、物凄いご馳走の夢を見続けて、その御蔭で、発狂から免れた・・・つまり、想像力を働かせて辛い思いをしているのを紛らわせるのが、食事もままならい胃潰瘍だとかチフスの場合でも有効らしい。

『饗宴』では、吉田健一氏の『食』に対する想像と実際に存在したレストランのメニューが、コレでもか・・・というくらいに、てんこ盛り。読んでいて、楽しいし、美味しい。

前述のコットレット・ダニヨオ・オォゾマアル・トリュツフェ・オォズイトル・フリト・マロンシャンティ(こういう名前だけでは、想像もつかない料理の方が、想像力は、増すらしいので、好都合だそうです)は、仔牛のカツレツに胡桃・南京豆を混ぜてすり潰し、本体のカツをオリーブ油で、もう一度、練り直し、雲丹焼きとカレー粉を加え、品川のお台場の形に盛り、海老蟹(伊勢海老っぽい蝦だそうです)を茹でて、皮を取り、マリネ液に2,3日浸けておいてから内臓ごとすり潰し、ミソ状にして、先ほどのお台場に盛りつけ、更に牡蠣のそぼろとレモン、トリュフを、その上に、そして栗をモンブラン状にしたものをお台場の波に見立てる・・・といった高級フランス料理だそうで、この記述だけよんでいても、もう、どんな味がするのか・・・想像もできずにいる(・・・なんだか、胸ヤケしそうだけどね・・・)。

そのあと、新橋茶漬けだのやお汁粉たべたり、支那饅頭を食べたりして、空腹をしのぐのだけれど、実際には、何も食べていない病身なのだ・・・。

・・・とにかく、辛い事を紛らわすのは、食欲に限らず、空想力だってことですかね?

滞(英)欧の長い吉田健一氏なればこその名文。

一読あれ(・・・イヤ、ご賞味あれ)・・・何もなくても、お腹がいっぱいになる名著でございます。