気持ちの良い晴れ。秋の空気。
男女逆転大奥も11巻目の刊行。
男子だけにしか発症せず、致死率80%の恐怖の赤面疱瘡の蔓延で、男女比が、極端に傾いた江戸時代・三代将軍家光公から、将軍職も女子の継承となり、時代は、8代ぶりに、男子の将軍の誕生をみた十一代家斉の御代へ。
老中・田沼意次の失脚とともに、政を影で操る徳川治斉の邪悪な権謀により、赤面疱瘡の治療法も葬り去られ、混沌とした幕末へと物語は進んでいく。
邪悪な影を他人感じさせることなく、ヒトを操り、自分の手は、汚さずに、権力を手中に収めた治斉。
穏やかで優しげな外見とは、まったくちがう徳川治斉は、従姉妹の老中・松平定信曰く。
『あの女は、馬鹿か・・・。あの女には、何の志もない。あるのは、より強大な権力を求める肥大した欲望だけだ。徹頭徹尾己のことしか考えていない。あの女が、徳川を滅ぼす。』
その怪物である治斉を母に持ち、11代将軍に就任した家斉の苦悩が始まる。
怪物とは、ひとの心をもたぬものである。
その怪物に、幕府は、支配された。
これまでの11巻で、既成の大奥とは、全く違う『男女逆転大奥』を構築したよしながふみ氏。
男女が逆なら、善悪も逆のようである。
大奥の生みの親、春日局、徳川綱吉、柳沢吉保、間部詮房・・・既存の人物像とは、まるで異なっているように思える。
史実とは、真逆。
田沼意次は、幕府の財政を立て直し、赤面疱瘡の根治を奨励し、蘭学を普及し、差別のない人材登用と、かつての収賄の田沼意次像を覆す設定である。
この物語の根幹である赤面疱瘡。
この風土病のために、日本は、男子が減少し、女子が、その労働を担うようになったというこの物語最大のモティーフとなっている。
江戸期の天才・平賀源内もまた、この病を根絶させようと助力したひとりとして描かれている。
もちろん、女性という設定だ。
幕末まで、あと4代。
物語の展開が、楽しみである。