鼎子堂(Teishi-Do)

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カタルシツ『地下室の手記』

2015-03-01 10:50:02 | Weblog

朝から、どんよりと暗い3月の始まり。


昨日、28日は、相方と赤坂RED/THEATERへ、『地下室の手記』を観劇に。

ロシアの文豪・ドストエフスキーの『地下室の手記』を下敷きに、40歳、独身、彼女なし、職無し・・・の・・・社会に適合できない男が、地下室に籠った理由を、ネットストリーミング放送する。
(社会に適合できないという点では、まるで自分を見ているようで、辛い。)

約2時間。
一人演じるのは、イキウメの安井順平さん。

かつての同級生達は、彼を無視し、侮辱する。
同級生たちを『社蓄』、スタバは、『悪の巣窟』、泥水珈琲と罵り、くだらない、下劣な世間の『楽しさ』から、目を背け、自分以外の全ての世界を遮断しつつも、結局は、自分を取り巻く世界から、離れることができない。
ひとり、孤高を貫くには、『死』ぬことだけれど、その勇気もなく、面倒くさいだけ。

一歩、外に踏み出す勇気があれば、今の世界を飛び出すことができたのに、そのきっかけをあたえてくれた20歳の娼婦に、何故、あんなことをしてしまったのだろう・・・と彼は、地下室の中で、もがきくるしむ。

地下室・・・それは、彼の防御壁。
地下室・・・それは、彼の牢獄。

傲慢で、臆病で、言動不一致で、矛盾で、弱虫のクズ・・・。
最低の男を、安井順平さんは、約1時間45分ひとりで演じ続ける。

役柄と役者を、同一視してしまうということは、よくあることで、それは、役柄と役者がぴったりと一致した場合に特に感じてしまうものだ。
安井順平さんには、確かに、この『地下室の手記』の主人公とクロスオーバーする。
でも、たったひとりで、この舞台を演じ切る精神力は、この『地下室の手記』の主人公には、ないものだろう。


脚本・演出は、前川知大さん。
異質な世界と空間を、描き出すことにおいては、今、旬の演劇人だと思う。